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2020年人工知能学会全国大会の論文著者を分析をしてみた

2020年度 人工知能学会全国大会(第34回)はコロナ禍の影響で熊本開催からオンライン開催となり,日本中の人工知能研究者が馬肉と熊本ラーメンを食べられないことに落胆しまくったわけですが,それでも1000件近い発表があるようで,過去最大規模です.

そんなわけで,人工知能学会の人たちが一堂に会する会議なわけですから,ここで発表している人を分析すればきっと日本の人工知能の研究者の関係が明らかになるはずです.

というわけで,人工知能学会全国大会のプログラムをクローリングして著者情報を集めてきました.

ネットワーク分析

早速研究者同士の関係性を明らかにするために,ネットワーク分析を行います.今回はシンプルに,一緒に論文を書いている人は近い関係だろうという仮定を置いて,著者をノード,共著関係にある人をリンクでつなぐ,という作業を行います.

ネットワークには,ノード,つまり研究者が1972人,リンク数つまり関係性は4308個抽出されました.おお,2000人近い研究者が研究発表しているんですね.なかなかすごい.

で,作られたネットワークを可視化したものがこちら.

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うん,なんだかわからん.

ごちゃごちゃしているので,ネットワークをコンポーネントと呼ばれる部分ネットワークに分けて抽出してみました.

取り出したネットワークの一番大きかったものはこんな感じ.

cluster01-谷口 忠大

この中の中心的な人物は谷口先生,通称たにちゅー先生ですね.メンバーを見ると,小林一郎先生長井隆行先生など,知識処理とか知能情報とか人工知能のど真ん中のグループという感じです.

次に大きかったのが,こちらのグループ.

cluster02-松尾 豊

中心的な人物は松尾豊先生となっています.この人については特に説明は必要ないですね.かの有名なネルー値の提唱者です.それ以外にも,佐久間拓人先生上田修功先生など機械学習系のコミュニティのようです.

3つ目のコミュニティはこちら.

cluster03-鳥海 不二夫

ここの中心人物は鳥海不二夫とかいう人らしいですが,土下座とか根性マインイグばっかりしている人なのでどうでもいいです.それ以外には,人工知能学会副会長の野田五十樹先生世界的AI研究者2000人の一人榊剛史先生など,社会応用系の研究者が集まっているようです.

あと,全部説明していると大変なので,ベスト5コミュニティまで載せるだけ載せておくので,わかる人は分かってください.

第4位

cluster04-中村 哲

第5位

cluster05-松井 藤五郎

というわけで,人工知能学会を構成する研究者が所属するコミュニティがネットワーク構造から何となく見えてきたような気がします.次に,この中で特に注目すべき研究者を中心性という概念から見てみましょう.

次数中心性

ネットワークの特徴量として,各ノードつまり研究者がどのくらい重要なのかを表す中心性という指標を使って人工知能研究者を見ていきます.

中心性の分析として,まずは共著者の数を調べます.共著者の数が多い研究者はそれだけ多くの人とかかわっている中心的な人物ですからね.ちなみに,このような中心性を次数中心性といいます.

2020年人工知能学会全国大会で,共著者の多かった研究者ベスト10を算出してみた・・・んですが,[4C2-GS-13-03] シナリオ・視覚要素・音響効果を統合的に自動生成するゲームシステムの構築の著者が20名いたせいで,共著者20名という研究者が非常に多く出てしまいました.う~ん,これはちょっと例外的なデータな気もする・・・

というわけで,申し訳ないですが,この20名もの著者を抱える論文をちょっと例外として取り除いた残りの論文で共著者の多い研究者を取り出してみました.その結果は,

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(以上敬称略)という感じになりました.一位は僅差で23名の共著者がいた東大の山崎俊彦先生です.さすが,魅力工学の第一人者.自らの魅力で共著者もメロメロ.知らんけど.

媒介中心性

次に,媒介中心性についてみてみましょう.媒介中心性とは「この人がいなくなるとコミュニティがバラバラになってしまう」という人物です.いくつかの分野を結びつける役割をする研究者ですね.早速ベスト10を見てみます.

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(以上敬称略)というわけで,この辺の先生方はいくつかの分野を結びつける重要な役割を持った研究者です.一位は立命館大学のたにちゅー先生ですね.一番大きなコンポーネントの中心人物ですし,納得の結果です.

ページランク

さて,最後はページランクです.これはもう説明の必要もないとは思いますが,ネットワーク上の重要なノードを発見する手法です.簡単に言えば,重要なノードと接続されているノードは重要と判断されるわけです.つまり,重要な研究者と一緒に研究している研究者ほど重要だと判断されると考えてもらえればいいと思います.

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(以上敬称略)というわけで,一位は早稲田大学の後藤先生でした.後藤先生のコミュニティはこんな感じのネットワークでした.

cluster08-後藤 正幸

完全に後藤先生を中心としたコミュニティが完成しているのがわかります.後藤先生の論文一覧を見る限り,どうやら学生さんとの研究が中心のようです.これだけの発表を学生さんとやるというのはなかなか大変なので,この結果にも納得です.

データ共有

というわけで,2020年人工知能学会全国大会について共著関係から今の人工知能研究者の関係を分析してみました.ジャンルごとに研究者を分類できたり,注目すべき研究者がちゃんと取れたりしたし,それなりに納得の結果が得られたような気はします.

とはいえ,学会を聞きながらの片手間でやった分析なので(分析時間3時間:note執筆時間を含む)間違いがあったり解釈間違っていたりするかもしれませんが,ま,そこはご愛嬌ということで.

興味がある方のために,共著者ネットワークを置いておきますので,好きにダウンロードしてみてください.

なお,そもそも作るときにミスがあったりするかもしれない(例えば,アルファベット名と日本語名は名寄せしていないし,同姓同名問題については考慮していない)ですが,分析してみると面白いことがわかるかもしれません.知らんけど.


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