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災害時に情報拡散するときの注意点


日経新聞から災害時のSNSにおける情報拡散について取材を受けて回答を送ったのですが,1200字程度書いたものが23文字に圧縮されたので,もとの回答を掲載します.
何かの参考になれば幸いです.

4つほど記者さんから質問があったので,それぞれについて回答する形を取っています.

・一般に自然災害発生時の偽情報・誤情報やその拡散にはどのような傾向があるか。

  • 日本においては,比較的偽誤情報の拡散は早い段階で訂正が入ることが多い.(https://cir.nii.ac.jp/crid/1520860177961424512)

  • 訂正が入らない(真偽不明)の情報は拡散するかもしれない.

  • 今のところAIを使った偽誤情報がすごく多いというわけではない.

  • 誤解から生じる偽誤情報も多いため,偽誤情報を流したアカウントを一方的に責めるべきではない.

    • 例)大阪地震の際には電車が脱線という噂が流れたが,誤報だった.出所を調べても混乱を招こうとして行った行為ではない.

  • 被災地とは異なる場所で偽誤情報が広まることが多い.

    • 広島災害の時の偽誤情報は主に関東圏で広まっていた.

    • 「誰かに届くかも」程度の薄い期待で拡散する必要はおそらくない.

・SNS上に真偽が分からない情報(やその訂正情報)が流れて来た場合、どのように対応するべきか。

  • 拡散しないことが一番(言われすぎていて改めて言うほどでもないかもしれないが)

  • 万が一間違っていた場合に責任が取れない情報を拡散することは避けるべき(責任を問われることもある)(参考)

  • 「こんな偽誤情報があるから注意しよう」という具体的な偽誤情報に関する注意喚起も,拡散する必要は基本的に無い.

    • その偽誤情報を見た人は積極的に拡散してもよい.それ以外の人はかえって混乱を招くことがあるので,不必要(参考

  • もちろん,一般的な「偽誤情報に注意」という話は重要ではある.

・災害有事において一般市民(被災していない)はSNSとどのような距離感で接するべきか。

  • 情報収集として使うのは良いが「何か役に立とう」とする必要はない.

  • 情報を拡散するなどの行動をして役に立った(社会貢献した)気分になることをスラックティビズム(怠け者の社会貢献)と言う.

  • 情報拡散の効果は小さいので,役に立ちたいのなら寄付などを考える.

  • 情報拡散する場合は自分の周りの人(フォロワーなど)に伝える必要があるかどうかで判断したほうが良い.

  • 本当に重要な情報であればそれを生かせる人に直接知らせた方が良い.

    • 例えば,被災した人が助けを求めているツイートを見たら,(誰かが届けてくれるだろう)と期待して拡散するのではなく必要な場所に連絡をする労力をかける.

    • 極端な話最初の一人が連絡をして拡散しなければ,同じ連絡が色々な人から何度もされることが無くなり,現場の負荷が下がると考えられる.

・ツイッターが災害有事において日本社会で果たしている役割や創出している価値は311時と今回で変化があるか。

  • 311当時に比べると災害時の使われ方はかなり洗練されてきている.

  • 一方で,API制限などによって様々なアプリが災害支援として使えるはずだったのに使えなくなっている点は憂慮すべき.

  • Xのような外資系の私企業が運営するツールに頼るべきではないという意見もあるが,災害時の情報支援ツールは普段から使っているツールであるからこそ意味があるものであり,新たにツールを作っても災害時に使うことはおそらくできない

  • 普段から使われるコミュニケーションツールを利用することが重要だが,そのようなものを国が作るというのも(言論の自由と言う観点から)また大きな問題をはらむことになる.


以上が回答です.なお,これを98%圧縮した編集の妙をご覧ください.

掲載されたコメント

「真偽が不確かな情報を拡散しないことが最も重要だ」




なお,コメント掲載までには記者さんと綿密にやり取りしながら最終的にこの形に収まっているので,文句があるわけではないです.
正月早々家族団欒を抜けて書いた結果がこれであるというのには,ちょっと笑ったけど.

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