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「夜天一族」第七章

七章 「銀河宇宙はいつでも咲う」ギンガウチュウハイツデモワラウ


♫ここにない星座走るクェーサー

太陽系惑星の羅列の形成

過去に何億の星は出来 雪の恒星に

そんな星でも まだ生き抜く存命

果てしなくつづくよ 上昇人生

銀河の成り立ちどこで観よう?水の彗星に

時は巡り遠き日の 昨日今日明日

月も星も輝いてる すぐ近くのソラに

太陽の炎はクールダウン

水星は時短で回るグルグル

金星はどこか冷めている

地球の碧色は水の色

火星の月はフォボスダイモス

木星が奏でるのはセレナーデ

土星の輪の数だけ幸福が待っている


銀河の明日は星らのホップステップジャンプ

寒い寒いと季節は駆け抜ける

走った分だけのゴール進んで

夢を視ようかな

天の川銀河の果ての果てまでも

感じてた触覚も途切れた惑星

その星が萎える頃に遅く

ここで視ていようよ

そうそう月も地球も公転周期は

過去に決められ銀河で夢に視よう

そうだ さっさと跳びこめYour Road

星は巡るよ 僕らに届けたまえ

絶対に信じて きっと

天王星でラーンデブー

海王星の衛星の外

冥王星はーどーこ?


アンドロメダで遊覧飛行

マゼラン銀河宇宙論

曇天大地 それは凄くステキな

唄い手はオルゴオル

月齢 月見 月天心 魅惑の月の声

僕の願い宇宙旅行に遠泳飛行いこうよ

あの月蝕も夜の狭間にある

それは月と太陽の間に

地球は存在しているよ

オリオン座のベテルギウス リゲル

そう宇宙を飛ぶサンダーソウル

ケンタウルス座のサザンポインターズ

天上の淵まで君らを誘導可能


咲って唄おうラッキーアンタレス

スピカは麦の穂実り豊作

プレアデス星団じゃバンザイ

そして 君らはとってもステキ

咲って唄おうラッキーアンタレス

スピカは麦の穂実り豊作

プレアデス星団じゃバンザイ

そして 君らはとってもステキ


太陽の炎はクールダウン

水星は時短で回るグルグル

金星はどこか冷めている

地球の碧色は水の色

火星の月はフォボス ダイモス

木星が奏でるセレナーデ

土星の輪の数だけ幸福が待っている


星座は廻るよ星の導くその先まで♫


3Dホログラムに映し出されているのは、宇宙空間そのものだった。
まるで、宇宙に放り出されてしまった浮遊感をリアルに感じている。
「王子、ここって月の塔だったよね?僕達、いつの間にか宇宙飛行?宇宙遊泳?しちゃってるけど、ここってばどうなってんの?」
宇宙空間に宇宙服も着けず放り込まれて生きてゆける訳はない。
「月の塔ニョロね。ボクはセイチョンと同じものを視たいと思ってるから、同じヴィジョンを視られるニョロよ」
同じ宇宙空間でも眼下には、写真や画像で好く観る星団や銀河の星々が織りなす鮮やかな宇宙が広がっている。
「へぇ、でもここにいたら、いつまで経ってもキンギョとコザル王女達と合流なんて無理じゃね?」
月の塔へやって来た目的が果たせなくなるのも気掛かりである。
「そうニョロね。それじゃあ、キンちゃんと王女とどっちと合流するニョロ?」
宇宙を遊泳する王子の絵柄が、ドンピシャ!マッチし過ぎている。
「んー、どっちにしようか、二人はバラバラなんだっけか・・・それにしても、やっぱ王子は宇宙が似合うよねぇ。王子が初めて辿り着いた星は何処だったの?」
話題が脱線するのは星葉の悪いクセである。
「ボクがはじめて降り立ったのは地球ニョロよ」
星葉の気まぐれには慣れているのか、王子は特に気にすることもなく真面目に応えている。
「へぇ、そうだったの。でも、僕達と出逢ったのは月だよね」
物心ついた頃、月面ドームの「夜天家」の邸宅の庭で遭遇したと云う方が妥当である。
「そうニョロね。地球のドーナツ屋さんで修行してたニョロよ。そのあと、月に来たニョロね」
「ああ、それでドーナツ作りもサーターアンダギーも上手だったのか。今まで王子のこと訊く機会がなかったから不思議だったんだよね。宇宙人の王子がどうしてドーナツ作りが上手いのか謎が解けたよ」
双子は地球の生まれである。
生活の大半を地球でしているため、月面ドームへはバカンスを兼ねた旅行と云った形で降り立つのが常だった。
「そうニョロね。地球にはドーナツ作りの師匠がいるニョロ。とってもお世話になったニョロね」
「へぇ、それじゃ、その時にコザル王女も一緒に来たの?」
コザル王子とコザル王女とも同時期に出逢っているのである。
「王女はボクから分裂したニョロ。分身でもあるニョロね」
「えー!マジで?もしかして、コザル星人って何人も分裂出来るの?」
王子から分裂したのが王女とは初耳であり驚きだ。
「ボクから分裂したのはコザル王女だけニョロよ」
「ああ、だから、王子と王女以外には逢ったことないんだね。でも、他のコザル星人もいるんでしょ?」
星葉がコザル兄妹に出逢ったのもコザル王子とコザル王女の二人だけだった。
「ボクがコザル星から地球に来た時に王女と分裂したニョロね。コザル星にはボクの兄弟姉妹がいたニョロ。コザル星に残った者とコザル星から出発した者と色々いるニョロよ」
コザル星には王子王女が沢山いるのか。
「コザル星人がワンサカいるコザル星ってのも観てみたいような、怖いような、王子は里帰りはするの?」
想像するだけでユカイな星である。
「ボクはもうコザル星には帰らないニョロよ。コザル星人は一度星を出たら、ほとんど戻ることはしないニョロ」
「へぇ、そうなんだ。でも、王子は帰りたいと思わないの?」
本音を云えば、いつまでも王子にはいて欲しい。
しかし、いつまでも王子を引き留めていて好いものなのかとも考えてしまう。
「思わないニョロね。ボクは太陽系が気に入ってるニョロ。地球も月も大好きニョロ。セイチョンちは地球も月も火星でもイゴコチがいいニョロ。だから、ボクはずっとここにいるニョロ」
「ホント?ウレシイな。月もいいけど、たまには地球にも来てよ。火星の別宅でもいいね。一緒に往こうよね」
コザル王子は存在そのものが楽しくユカイな癒しだ。
「そうニョロね。セイチョンが地球に帰るときにいっしょするニョロ」
「えーマジでホントー!ヤッター‼そんじゃ、早いとこやることやって、とっとと地球に帰ろー!」
宇宙はいつでも、どこでも楽しい。
「それじゃあ、キンちゃんたちと合流するニョロね」
「そうだった。キンギョは何しに来たんだっけ?なんだか僕は目的を見失っている感じがするよ。キンギョに全部丸投げしちゃってもイイかなぁ。後で合流するつもりだけど」
アルクトゥルスの師匠とのチャネリングで、月へ往くようにと指示された。
しかし、今回の目的を受信したのは双子の弟の菫青の方だ。
「それでダイジョウブニョロよ。ボクはキンちゃんたちといっしょに面白いことしたいニョロ」
「うん、分かった。キンギョ達のとこ往こう。あれ、誰かいる?」
自分達がいる空間に他者の気配を感じる。
「んにょ?ボクのアンテナも反応してるニョロね」
視れば王子の触覚の尖端がピコピコ点滅している。
本当にアンテナであるのか、何かをキャッチしているようだ。
「君達は・・?やあ、コザル王子、久し振りだね。こんなところで出遭うなんて奇遇だね」
「あなたは・・・」
突如現れた人物に星葉は驚きを隠せない。
「あれ、ユーちゃんニョロ。ユーちゃんも月の塔に来てたニョロ?」
ユーちゃんとは月の貴公子こと「ユージン・ムーンシャイン」その人である。
「うん、金剛と一緒にね」
銀色の長い髪が宇宙空間の中にあっても目映く輝いている。
「コン兄も来ているのですか?」
実兄の名が出たことに反応する。
「君は?」
ユージンが星葉の存在に気付く。
「あっ、僕は夜天金剛の弟の夜天星葉です。うちの兄がいつもお世話になっております。はじめまして」
畏まってペコリとお辞儀をする。
「君は金剛の弟さんなのか。それは初めましてだね。私は金剛とは学生時代からの友人なんだ。ユージンです。よろしく」
簡単な自己紹介をお互いに済ます。
「あなたのことは知ってます。うちの弟があなたの大ファンなんです」
頭一つ分は上にあるユージンを視上げつつ、星葉が応える。
「それはありがとう。それで弟さんは何処に?」
月の塔は次元も空間も歪んでいるため、塔内に入り込めば自分の無意識が創り出す世界が現れたりする。
それと同様に、誰かの意識の世界へ遭遇したりもする。
シンクロを引き起こす、今がその状態と云えるのかも知れない。
どっちがどっちを引き寄せたのかは皆無だ。
「それが、塔内でバラバラになってしまったので、今は何処にいるのか分かりません」
「なるほど、それで君達は何処に向かう予定だったんだい?」
本当は知ってはいるが、ワザと知らない振りをする。
「なんでも、月の女神を救いに往くとのことです。女神が何処にいるのかは僕達には分かりません」
月の塔とは月の裏側にある「人魚の国」に存在している塔である。
それは地球に建てられているような建築物としての塔とは違っていた。
「そうか、では私が君達をお連れしようか」
「え?どーゆーことですか?」
予想外の言葉を吐いたユージンを、星葉がマジマジと視詰めた。
「ユーちゃんは月の女神のいばしょにいけるニョロ?」
既に顔馴染みであるコザル王子が物怖じせずに会話する。
「うん、往ける。どうする?それとも、まだこの場に留まるかい?」
この宇宙空間も楽しいのだが、いつまでもここにはいられない。
「いえ、往けるのであれば、月の女神のいる場処へ連れてって下さい」
月の女神がどこにいるのかも、どんな人なのかも星葉には皆目見当が尽かない。
自分達だけでは辿り着けそうにないので、ここは申し出通りに有り難く受け入れることにしようと決めた。
「では案内しよう」
『パンッ!』とユージンが手を叩く。
自分達はそのままに、辺りの空間が変化した。
そこは観たことがあるけど、観たこともない世界だった。
どこかの洞窟、それも一面が巨大な水晶群で被い尽くされている。
「うわぁ、思いっきり癒されるぅぅぅぅ」
クリスタルタワー全開である。
林立する水晶の一つに抱き着いた。
素材が石であることと、洞窟内であることがリアルに感じ取れるせいもあって、どちらもヒンヤリとしている。
「ここはヒーリング空間ニョロね。水晶の森は気持ちイイニョロ」
宙を浮くと云うより空間を漂うコザル王子が目を細める。
「有り得ない。なぜ、このような場処に飛んでしまったのだ?」
星葉とコザル王子を伴って、月の女神がいる場所へ向かうはずだったのだが、どうした訳か巨大水晶群の洞窟の真っ只中に現れてしまったようだ。
「別に好いですよ。僕はここでまったりヒーリングしていても」
「ボクもイイニョロね」
水晶はパワーストーンとして最もポピュラーな鉱石だ。
全てのことに清めや浄化の効果が期待され、心身の浄化力も高くネガティブなエネルギーを強い力で跳ね返し保護する。
持つだけで安心、精神的にも安定した状態を保て人間関係も良好になるパワーで前進し、目標達成も期待出来て成長へと繋がる。
そんなパワーを秘めているのが水晶だ。
それがどう云う理由か、ユージンが目を疑うような空間が現れてしまった。
「君達はこれで好いのかね?ここには月の女神はいないのだが・・・」
巨大水晶のベッドでくつろぐ星葉を複雑な心境で眺める。
「はい、別にイイかもです。ここは気持ちイイー!このままここでひとやすみ、ふたやすみ~~~」
星葉は寝そべった巨大水晶のベッドの上で、もう起き上がる気力はないようだ。
そして、信じられない現象がユージンの目の前で起こり始めた。
星葉が巨大水晶に吸い込まれるように、身体ごと埋まってゆく。
水晶が液体に変わってしまったように、ズブズブと沈んでゆく。
「えっ、なんなのだ?これは一体・・・コザル王子、君の友人が水晶に囚われてしまったぞ。どうする?」
空中を漂っているコザル王子を視上げた。
「あっ、セイチョンが水晶に飲み込まれてゆくニョロね。ボクも一緒にゆくニョロよ~」
沈みゆく星葉の後を追って、コザル王子は水晶へと飛び込んだ。
「え?ちょっと、王子まで⁉仕方ない、私も後に続くしかないではないか」
コザル王子に続いてユージンも液体水晶へ向かってダイブした。

ユラユラ、フワフワ、漂う世界は平和で一杯。
そんな幸せ気分に浸りながら、プカプカと宙を浮く。
「今度は何処だろう、ここはなんだかバルーンの中みたい?浮いてるのかな・・・イイ感じ~」
青空を、透明バルーンの中に入った状態で浮かんでいる。
先ほどいた宇宙空間ではないし、巨大水晶群でもない。
「あっそうだ、コザル王子とユージンさんはどうしたかな」
確か、宇宙空間の後は、水晶のベッドでウトウトしていた。
その後のことは思い出せない。
それもそのはず、目覚めた今現在の状況がバルーンの中に入って浮いているのだから。
透明なバルーンなので辺りの様子は視て取れる。
「セイチョーン!いたいたニョロねー」
ニョロニョロ言葉が聞こえて来ると云いうことは、コザル王子もこの空間にいることが確定だ。
「王子も来ていたんだね。よかった。それで、ユージンさんは?」
自分のバルーンより小さなバルーンが目の前に浮かんでいる。
バルーンと云っても風船や気球型ではなく、どちらかと云えばシャボン玉の中にいるような感じである。
シャボン玉の中の王子はやはり内側でも浮かんでいた。
「ユーちゃんもいるニョロよ」
コザル王子が指し示した方向へ視線を向けると、やはり同様に透明のバルーンの中にいるユージンの姿があった。
なんとなくであるが、月の貴公子も形なしであるような気がするのは、気のせいにしておいた方が好いのかも知れない。
星葉ココロの本音である。
「あーホントだ。ユージンさんもいる。おーい、ユージンさーん!」
「ユーちゃーん!」
ユージンを視付けた二人がそろって叫び出した。
バルーンの中からも声は届く。
ここはやはり不思議の国のようである。
「ああ、君達。私はもう、どうしたら好いのか理解に苦しむよ。この有り様はなんなのだ?」
目的は月の塔の月の女神、イーシャの下へ向かうこと。
そのはずが、現状はどうだ、予定外も好いとこである。
実際にイーシャのいる場処へ往くことは通常ならば難無く辿り着くのだが、今日に限っては一体、どうしたことか、一向に思い通りの展開とはならない。
「明らかに可笑しい。まさか、彼等が一緒だからか?」
疑いたくはないが、仲々、思う方向へ行かないもどかしさはどうにも腑に堕ちない。
「たのしめばいいニョロよ。ユーちゃんは考えすぎニョロ」
面白宇宙人が簡単に云ってくれる。
「そーですよ。ユージンさん。今を楽しめば好いんですよ。深く考えちゃダメですって、あるがママ、なすがパパってゆうじゃないですか」
「そんなこと、いつ誰が云ったのだ?」
どうも、この二人といると自分のペースが崩される。
「君達は一体、なんなのだ。私は自分の信念に自信が持てなくなって来たよ」
そして、また、自分の置かれている状況に耐え切れない。
両手で顔を被う。
また、その姿にも間抜け過ぎて泣きたくなる。
「月の貴公子も形無しだ。こんな姿、世間には絶対に視せられない」
泣く子も黙る?太陽系の唄声と称されるユージン・ムーンシャインとも在ろう者が、月の裏側で一人の地球人の子供と何処かの宇宙から飛来したらしい得体の知れない宇宙人に翻弄されている。
なんと云う、て・い・た・ら・く!
『ていたらく』=人のありさま、ようす、ざま。(現在では好もしくない状態についてを云う)
「僕達以外、今はいないんですし、誰も視てやしないんですから、恥ずかしがることはないんじゃないですか。ねぇ、王子もそう思うでしょ?」
この月の貴公子は意外に見栄っ張りなのか。
「そうニョロよ。ユーちゃんも今をたのしむニョロね」
吞気でマイペース過ぎる星葉とコザル王子のペースに飲み込まれそうになる。
これを受け留めるべきか、流すべきか、決め兼ねる。
しかし、悩むだけムダな気がして来た。
「君達の脳天気さは誰に似たのだ?金剛とは似ても似つかぬように思えるのだが・・・」
ユージン自身も「夜天家」の人間に遭遇することは滅多にない。
金剛と年の近い弟の銀星が月面での学生時代の後輩に当たるくらいだ。
銀星も金剛に似て物静かで穏やかな人物だ。
その二人とは全く異なるこの少年は本当に「夜天家」の人間なのだろうか。
「えーと、うちの家系じゃないですか。うちの両親なんて一度仕事で家を出ると、次にいつ帰って来るのか分かりませんから、子供のことより自分達のことが優先されます。完全なる自分軸な人達ですよ。僕達は兄達とヘルパーさんに育てられました」
だからと云って、育児放棄していた訳ではない。
家族がそろった時には惜しみない愛情を子供達に注いでいた。
「それは自由な親御さん達だな。それを云ったら、うちも似たり寄ったりだが・・・」
宇宙時代と云うのは身体的な移動だけではなく、精神的にも物の考え方が、かなり自由で無限な世界が広がっている。
「ユージンさんちはずっと月神殿の祭司なんですか」
月天人の最高峰である月の祭司は代々続く家系によるものなのだろうか。
「そう、うちは代々月を統べる一族だからね。性別は関係ないので本来は現存する母が最高位に就くはずなのだが、緒事情により現在の祭司は私だ。それは実に不本意なのだ。スマナイ、こんな身内ネタを暴露してしまって、つい本音が出てしまった」
相手はまだ十代の子供なのに、自分は何を口にしているのか、自嘲する。
「いえ、別に構いませんよ。そーゆーヒーリングがうちの家系の役割ですから、いずれ、僕等も志事とすることなのです」
将来のことは分からない。
だから、現在を楽しみたいと思っている。
「そうか、君はちゃんと自分の行先を視詰めているのだな。ん?僕達とは?もしかしてコザル王子とってことかい?」
細かいところを聞き逃さない。
「えっ、あっそうではないです。僕は双子なので同い年の弟がいます。実はあなたの大ファンな弟でして、今日もここに来ているんですが、この塔に突入した瞬間バラけてしまい。お互い行方不明となってます」
見た目は少女、中身は・・心は乙女、生まれが少年。
それが夜天星葉と日時(時間差は有)を同じくして誕生した弟の夜天菫青である。
そう云えばと今思い出す。
「そうか、君が双子の片割れなのか、金剛から末の弟さんが双子だとは聞いていたよ」
金剛とは違った性格の弟達なのかと思うと、「夜天家」の面子はどのキャラもユニーク極まりない。
「そうですか。急に月に来ることになりましたが、ここへ来る寸前まで地球であなたのライブ配信を観ていたんですよ」
その途中で月の女神と菫青のチャネリングによるコンタクトが始まった。
自分は自分でアルクトゥルスの師匠とチャネリングミーティング中だった。
そこでも、月へ往けとのお達しであったのだ。
「そうなのか、それはありがとうと云うべきかな。さて、これからどうしようかね。どうやら、私はここでは自分の力を思うようにコントロール出来ないようだ。いつもはこういうことはないのだけどね。どうも、君達といると調子が狂うようだな」
他人のせいにはしたくないが、この二人といるせいかいつもの自分とはほど遠い。
「唄ってみたらどうですか?こんな状態では唄いにくいかもですが、僕はあなたの生唄を聴いてみたいです。そして、弟に自慢したい」
この子供はなんてことを云うのだろう。
面喰らうユージンにはお構いなしだ。
「ウンウン、それイイニョロね。ユーちゃん、うたうニョロよ」
そこに異星人まで加わった。
「君達は・・・もう、分かったよ。唄えば好いのだろ。だが、この状態では少々キツイ」
「パンッ!」と一つ手を打つと途端に場面が切り替わる。
空間全てが、床も天井も壁の全てが鏡張りの部屋と化した。
何枚も張り重ねられた鏡面に映し出された三人が倍増していた。
「うわぁ、鏡の間だぁ、僕らがいっぱいだー!」
360度鏡の空間は照明がある訳でもないのに、キラキラと光が反射しているような明るさに星葉のテンションが爆上がる。
「ユーちゃん、いつでも唄ってイイニョロよ」
鏡の間でも漂うコザル王子が月の貴公子を促す。
「君達は自由で好いね。何なら一緒に唄うかい、皆で唄えば楽しかろうと思うのだが?」
この二人がいる限り、思い通りにはいかないのであろう。
だが、正直云って、彼等が目指す最終目的地には辿り着いて欲しくない。
「えっ、僕はあなたの唄の歌詞は覚えてないですよ。唄うより、聴いてるだけですから」
熱心なユージンファンは、ここにはいない弟の方だ。
菫青がこの場にいたら狂喜乱舞したに違いない。
一緒に唄うどころか、うっとり見惚れて、卒倒するかも知れない。
「構わないよ。歌詞なら鏡に映し出そう。これでどうかな?」
再度、「パンッ!」と手を打ち鳴らす。
今度は鏡面上に歌詞が映し出されていた。
そして、月の貴公子がその唄声を披露する。
太陽系を通り越して轟く銀河の唄声が、鏡面に反射して拡散する。

♫ここにいない星座走るクエーサー

太陽系惑星の羅列の形成

過去に何億の星は出来 雪の恒星に

そんな星でもまだ生き抜く存命

果てしなくつづくよ 上昇人生

銀河の成り立ち何処で観よう?水の彗星に

時は巡り遠き日の昨日今日明日

月も星も輝いてる すぐ近くのソラに

太陽の炎はクールダウン

水星は時短で回るグルグル

金星はどこか冷めている

地球の碧色は水の色

火星の月はフォボスダイモス

木星が奏でるのはセレナーデ

土星の輪の数だけ幸福が待っている♫


アカペラで奏でられる唄声に鏡面が震え始める。
「おお、唄に鏡が反響している。ちょっと僕は一緒に唄う気にはなれないなぁ」
床も鏡面張りとなっているせいで、足下から振動が伝わって来る。
それとは対照的に、空間に浮いているコザル王子は妙な動きをしている。
上下運動のような上へ行ったり下へ行ったりしているのだ。
「王子?」
ピコピコアンテナが光彩を放っている。
ユージンの唄に合わせるかのように虹の如く七色の光が鏡に反射している。
「ユーちゃんの声に反応してるニョロよ。ボクの意思とは関係なくカラダが動くニョロ」
唄声の力なのだろうか。
人の声にそんな力があるのだろうか、王子自身でのコントロールは不能となっているようだ。
「へぇ、そうなの、大丈夫?」
「ウン、だいじょうぶニョロ」
叫ぶように声を張り上げないとお互いの声が聞こえない。
月の貴公子は益々、声高らかに唄い上げてゆく。
鏡面を揺らす声の振動に足下を捕られそうになる。
一緒に唄うどころではない。
「訊いといてなんだけど、僕の方が大丈夫じゃなくなりそう。まるで地震みたいだよ・・・」
続く唄声に振動は鏡面を烈しく揺らしてゆく。
小さな亀裂が入り込む。
亀裂は全ての鏡面に伝搬し、やがて破裂し始めた。
「うわぁ、鏡が割れてゆく~~~」
破片が飛び散る。
宙に浮いている王子にも降り注ぐ。
しかし、刺されば怪我でもしそうな鏡面の破片は、王子に降り注ぐ前にまるで水飛沫のように飛び散り消えてゆく。
「へぇ、破片が刺さらないんだ。んじゃ、ここ壊してもいいのか!出でよハンマー!なんつってー?おお!」
危険がないと思えば、思い切りやりたいことがある。
「ここの鏡、ぜんぶ、ブッこわす!」
本当に顕われた手の中のハンマーをしっかりと握り緊めて思い切り振り下ろした。
ハンマーは鏡面を破壊し、破片が空間へと飛び散る。
全身に降り注ぐのは固いガラス片ではなく、液体と化した破片である。

お銀河の明日は星らのホップステップジャンプ

寒い寒いと季節は駆け抜ける

走った分だけゴール進んで

夢を視ようかな

天の川銀河の果ての果てまでも

感じてた触覚も途切れた惑星

その星が萎える頃に遅く

ここで視ていようよ

そうそう月も地球も公転周期は

過去に決められ銀河で夢に視よう

そうだ さっさと跳び込め YourRoad

星は巡るよ 僕らに届けたまえ

絶対に信じて きっと

天王星でラーンデブー

海王星の衛星の外

冥王星はどーこー?♫


ユージンの唄声はまだまだ続き鏡面を揺るがす。
星葉の鏡面破壊工作も始まったばかりだ。
「うひゃあ、ストレス発散になるぅ!」
ハンマーを振り下ろした瞬間の破壊感は両手に伝わって来る。
衝撃による痺れがリアルに感じる。
テンポが軽快な曲調のせいか、星葉もリズムにノリノリだ。
菫青同様、星葉にも心に、精神に、溜まりに溜まったうっぷんがあるのだ。
「王子もやれば?すっごく気持ちイイよ」
思い切り叩き割ったところで、ここの鏡面は飛び散った破片が突き刺さることはない。
「ウン、ボクはダイジョウブニョロよ。セイチョン、思う存分たのしむニョロね。ボクはユーちゃんの唄に合わせて踊るニョロ」


♫アンドロメダで遊覧飛行

マゼラン銀河宇宙論

曇天大地 それは凄くステキな

唄い手はオルゴオル

月齢 月見 月天心 魅惑の月の声

僕の願い宇宙旅行に遠泳飛行いこうよ

あの月蝕も夜の狭間にある

それは月と太陽の間に

地球は存在しているよ

オリオン座のベテルギウス リゲル

そう宇宙を飛ぶサンダーソウル

ケンタウルス座のサザンポインターズ

天上の淵まで君らを誘導可能♫


月の貴公子は唄い。
宇宙人は踊る。
地球の子供は暴れまくり。
鏡面空間の破壊は止まらない。

♫咲って唄おうラッキーアンタレス

スピカは麦の穂実り豊作

プレアデス星団じゃバンザイ

そして君らはとってもステキ♫


鏡の破片が水飛沫に変わる。
空間は形を変化させてゆく。
ガラス片は液体へ。
そして、唄は続く。


♫太陽はクールダウン

水星は時短で回るグルグル

金星はどこか冷めている

地球の碧色は水の色

火星の月はフォボスダイモス

木星が奏でるのはセレナーデ

土星の輪の数だけ幸福が待っている

星座は廻るよ 星の導くその先まで♫


朗々と唄い上げてフィニッシュを迎える。
星葉が最後の鏡面を叩き割った途端に、大波が空間を被い尽くす。
「「うひゃあ~~」」
「うわっ?」
波が三人に襲いかかる。

大波に飲まれた三人の行方は知れない。


第七章「銀河宇宙はいつでも咲う」了

noteではコメントや読者のためになる記事はいっさい掲載しません 小説作品のみの発表の場と考えております 少々、否、かなり不親切 かつ 不躾かと思いますが 興味ある方は閲覧よろしくお願いいたします