作問について、あるいはクイズ論のうずみび

作問の鳥を名乗っているからには当然クイズを作っているんですという話は自己紹介でもした通りです。今回はその話。

クイズの作り方

クイズをやってる人間で「解き専」は聞いたことないです。いるかもしれませんが。そして人によって作問方法は違うということは重々承知です。
ここでは私の方法を紹介することで、クイズプレイヤーみなさんの何かしらの参考になれればいいなという傲慢と高望みの一端をお見せします。

ネタ探し

私の場合まず必要なのは作問ネタです。クイズという情報伝達手段の一つでもって広めたい、周知させたい事実を集めます。
私はTwitterのTL無限徘徊、教養系ラジオ動画、読書とかの手段で情報を摂取しています。そこで得たちょっとおもしろい単語やニュースをDiscord個人サーバーのネタ帳にまとめていきます。
定期的に吐き出しこそしているつもりでいますが、現状今年3月前からの分が全部たまっています。少し先に吐き出す予定がありますが。

ここではちょうど目についた「違う冬の僕ら」について作問することとしましょう。

振り探し

と、その前に「振り」について。
主にクイズの問題文は「AとかBとかもある、C的な感じのDは何でしょう?」みたいな構造になっています。
基本的にはAやBは「前振り」、CやDは「落とし」と言われがちです。例文は雑につくったので、本来は例文の読点あたりにもう少し情報が入ったり、逆に落としの情報が1つだったりしますね。
しかし私はABCDの全てを「振り」と呼び、文の前後どこに入るかで「前振り」「中振り」「後振り」といった呼び方をしがちです。落としは言います。
前中後の3つに分ける都合、私の問題文は読点が2つ入りがちです、というかそれぐらいの長さが性に合いますね。
ということで、ここからはABCDに当たるような情報を集めます。

さて、ここで「違う冬の僕ら」のついて検索してみましょう。
(一次より大きい隔たりのある固有名詞は今回除外しています。例えばXさん・Yさんがコラボ配信してたみたいなもの)

①『違う冬のぼくら』は2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲームです。
②プレイヤーはそれぞれ家出をした二人の少年となり、協力して壁を乗り越え、「どこか遠く」を目指します。
③2人目は無料で遊べるフレンドパス対応。
(以上https://store.steampowered.com/app/1801110/_/?l=japanese)
④ところにょり@tokoronyori
世界の見え方が2人で違う2人プレイ専用ゲーム『違う冬の僕ら』の本発売日が8月10日(めっちゃ夏)に決定しました。(https://twitter.com/tokoronyori/status/1659892649246228481)
⑤違う冬のぼくらはプレイした二人が唯一無二の親友になればいいな、もしくは壊滅的に喧嘩して絶交すればいいなと思いながら作ったので、プレイヤーへの愛憎が純度そのままでぶち込まれています。(https://twitter.com/tokoronyori/status/1645083826379714561)

と以上5つの情報を収集できました。ここから問題文を組んでいきましょう。

成文化

とりあえず、短く無難な問題を作ってみます。
「プレイヤーは家出をした2人の少年を操作して「どこか遠く」を目指す、2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲームは何でしょう?」(②→①)
完成です。やったね!

……あなたがこれで満足ならこれでいいんじゃないでしょうか?
老若男女が参加する一般クイズ大会ならこれを持ち込んでもいいかもしれません(そもそも答えがそういう場向きではないですが)。

上で作った例文を基に、単純に距離の近い情報を増やしてみます。
「ところにょり によって製作された2人プレイ専用のゲームで、プレイヤーは家出をした2人の少年を操作して「どこか遠く」を目指すという内容の、パズルアドベンチャーゲームは何でしょう?」(+④)
通常のゲームの問題文であれば、こういうのもいいでしょう。

作者について知っているか、2人プレイ専用ゲームは何があるか、「家出をした2人の少年」が出てくる、パズルアドベンチャー……と周辺情報から直接体験に遷移していく流れは我ながら美しいですね。
例えばテトリスのような、それ自体が有名で、知名度の下がる周辺情報が多いゲームだとこういう形になります。

ここで、上にあげた情報を見返してみましょう。
①『違う冬のぼくら』は2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲームです。
②プレイヤーはそれぞれ家出をした二人の少年となり、協力して壁を乗り越え、「どこか遠く」を目指します。
③2人目は無料で遊べるフレンドパス対応。
④ところにょり@tokoronyori
世界の見え方が2人で違う2人プレイ専用ゲーム『違う冬の僕ら』の本発売日が8月10日(めっちゃ夏)に決定しました。
⑤違う冬のぼくらはプレイした二人が唯一無二の親友になればいいな、もしくは壊滅的に喧嘩して絶交すればいいなと思いながら作ったので、プレイヤーへの愛憎が純度そのままでぶち込まれています。

⑤が一番面白いですね!
そりゃそうです、私には「⑤をTwitterで見た」という記憶があったので、これは探しに行った情報だからです。
ということでこれを入れ込みます。
①と②を使った問題文を基に、
「「プレイした2人が唯一無二の親友になるか、絶交すればいい」と思い作られたという、家出をした2人の少年を操作して「どこか遠く」を目指す、2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲームは何でしょう?」
できました、私はこれで行きます。

最後に、使われずかわいそうな③を救ってあげましょう。
「フレンドパスによって友達を簡単に誘ってプレイできる、2人のプレイヤーがそれぞれ、見える世界の異なる少年を操作して「どこか遠く」を目指すパズルアドベンチャーゲームは何でしょう?」(③→①→④+②)
④から「見える世界の異なる」情報を拾ってきて成文化。ゲームの魅力を伝えるちょっとした布教要素が入っています。

と、こんな感じでクイズは作成されます。

作問に当たって

私は慣れているのでこんな感じのを1時間ぐらいで書いていますが、5つ列挙した情報の探し方とか、その取捨選択とかについて分からない方向けの話を付記します。
というか私の考え方をここに明示するという意味合いが大きいですね。

情報の探し方

まず答えそのもので検索します。Googleにぶち込めばいいと思います。
個人ブログは避けつつ、基本情報を拾っていきましょう。①とか②ですね。
ゲームの名前とか、固有名詞であればその公式サイトを参照すると間違いないでしょう。特に落としにこういう情報を持ってくると答えを確定させやすいですね。「神奈川県の都市」とか「ひっぱりアクションRPG」とか。

⑤みたいな面白情報は前振りに1つが限界。なくてもいいし、わざわざ探す意味はないので、ちょっと思いついたらくらいでいきましょう。
もし、そういう他の情報(④の作者名やゲームの内容)が欲しい時は個人ブログに足を運んでもいいかもしれません、内容や雰囲気をつかむには体験談が重要です。自分の体験でもいいですね。

重要なのは「その情報について大勢が賛成・納得するか」ということです。
私は義務教育レベルの学問系情報や芸能系の作者・グループ構成などではWikipediaから引くことも多いです。ここは一般のクイズプレイヤーと違うところです。別にそれでもいいだろう、と、これだけは言いたかった。

取捨選択

基本的に問題文に入れられる情報は(僕のスタイルだと)4つまででしょう。
特に落とし部分は決まっているので、前半部に入れる2つくらいの情報を精査していきましょう。

どうしても入れたい情報(⑤みたいな)が無い場合、「前提条件→詳細な説明→落とし」というのが基本になるかと思います。

ここでいう前提条件とは、「武田信玄の後を継いだ勝頼が武田軍を率い、(織田の戦術について続く)」(長篠の戦い)とか「第一次大戦の敗北とその講和により、(滅亡への流れ追記)」(オスマン帝国)とかそういった、「詳細な説明」に向けて提供されるべき情報です。少し思った例が出せなかったけど。

詳細説明については、その時点で明らかに一択になるものが望ましいですね。落としに重きを置かない(「フランスの作家は誰?」「アメリカの都市はどこ?」)のが私のスタイルです。

追記

毎問題こういうことを意識しているかと言われれば必ずしもそうではありません。実際上の「違う冬の僕ら」だってあんまり沿ってないです。
ただ、私の問題では、根底の設計思想はこれに貫かれています。クイズプレイヤー諸兄にも総論同意程度はいただけるのではないでしょうか。

もう一つ作問の注意点を挙げるなら、自分が読んで・読まれて、正しく対応できるかというのは気を付けるべきだと思います。
ここまでくると日本語力になりますね。今まで獲得した語彙と経験を基に合格点を安定させましょう。誤字チェックも忘れずに。

ということで今日はクイズの作り方から見る僕のクイズ論でした。独自性が垣間見えたと思います。
だんだんと黒く暗い話になるとは思いますが、とりあえず来月くらいまでは書くネタがあり続けるんじゃないでしょうか。

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