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コンサルタントに論理的思考力が重要なのは「それしか武器がないから」ということを知った時

別に今更知ったわけではないのだが。

社会人数年目くらいまで、ずっと疑問に思っていたことがある。「なぜ、コンサルタントと言えば論理的思考力と言われるくらい、論理的思考力は重要と考えられているのだろうか?もちろんそれが大切なのはわかるが、他の業種と何が違うのだろうか?」ということである。コンサルタントに論理的思考力が必要なのはわかるが、実際は分析力や提案力、実現性を保証したり検証する力も必要なわけで、そういう意味でも他業種と比べて何が違うのだろうか?と思っていたのである。

その理由は、非常に単純かつ、しかもどちらかというと情けない理由だった。実業務を行っていないコンサルタントには「高い論理的思考力を使うことでしか、現場で業務を行っているクライアントと対等な会話することができないから」というだけだったのだ。

コンサルタントは、クライアント企業の問題を解決することが仕事である。確かに人は、自分自身のことを客観的に見ることができないことが多いが、しかしそれでも、日夜様々な立場や部門の人が利益を上げるために活動をしているわけで、数週間、数か月前から入り始めたコンサルタントに言われることなぞ、だいたいのことはクライアントも百も承知のことなのである。コンサルタントから言われる指摘は、同様の指摘がすでに現場の人間からもあがっていたこともあっただろう。

かたや、ぽっと出て高い給料で雇われた外部の人間。かたや、現場で何年ん、何十年も会社で働き、尽くてきた人間。どちらのほうが発言に重みがあるかは明らかである。

その長年の経歴や信頼性を覆すために必須の能力が、「論理的思考力」だったわけである。事実やデータという、絶対的な真実から会話をはじめ、根拠に基づいて、誰にも反論できないよう論理を組み立てて、クライアントに対して問題の解決策や提言を行う。それによって、ぽっと出の外部の人間の言うことであっても、社内の人間が納得しざるを得ない状況を作る。このためのコンサルタントはとにかく論理的思考力を徹底的に磨いていた(磨かざるを得なかった)のだ。恥ずかしいことに、このことに気が付いたのは、私自身が顧客に提案活動をするようになってからだった。

ふと思い出したのだが、論理的思考力の研修を受けた際、「論理的思考力の目的は、人を説得させるためである」という文章を見たことがあった。あの時は、「論理的思考力の目的が人の説得というのはおかしいのでは?人の説得であれば別に他にも方法はあるし、別の目的にも役立てるように思える。なぜ論理的思考力の研修なのに、論理的でない説明をするのだろうか?」と思ったのだが、コンサルタントが論理的思考力を身に着ける理由とすれば納得できる。まあ、何も考えず、コンサルタント向けの論理的思考力研修テキストをSEにも受けさせる研修資料も大したことがなかったということかもしれない。

このため、クライアントとの関係性が希薄なコンサルタントにとっては、論理的思考力は必須だったのだろうなと思った。また、論理が通用しない企業(現代ではそのような大企業はほとんど存在しないだろうが)に対しては、コンサルタントは別のアプローチをとる必要があるのだろうなとも思った。

私はずっと、論理的思考力を磨き続けていたいと思っていた。それは、事実やデータから物事を分析・理解する思考回路を持ちたいと思っていたからだ。ただ、それを突き詰めるためには、ビジネスよりも研究者として仕事をしたほうが都合がよかったのだろう。昔研究者になりたいと思っていた私の根源はここにも影響を及ぼしているのだな、とふと自分の思考回路を振り返ってみて思った。

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