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019 品質検査もVARの時代に

機械加工部品の場合、出荷検査や現地での立会品質検査はとても大事。弊社でもコロナの影響により中国の生産工場に出張できずに半年以上が経過。そこで、とうとう遠隔VAR(ビデオ判定)を試験的に採用してみました。最初は、カメラの位置、ピント、光量などの設定が難しく一つの部品を検査するのに3時間位かかっていましたが、4回目を迎えてかなり実用域に達してきました!

1.意外と使えたVAR

VARとはビデオアシスタントレフェリーという意味で、サッカーのW杯でも採用された新しい手法。なので機械部品の品質検査をVARと呼ぶのは若干の語弊があるかもしれません。素直にVideo判定と言った方が分かり易いですよね。

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日本も中国も、いわゆる町工場の現場でVideo会議や画像、動画判定を導入するのはなかなかハードルが高いと思い込んでいる方が多いのは事実。むしろ機器の導入以前に「本当にそんなんで分かるのか?」という心理的ハードルの方が高そうです。しかし、いざトライアルしてみると意外と使えることが分かってきました。最初の段階では別段高価な機材は必要ありません。光源(ライト)とスマホとChat Toolさえあればかなりの事ができてしいます。簡単に言うとスマホがあればある程度の事が出来るとも言えます。弊社の場合は、工場が中国なのでWechatを使用。撮影動画は15秒/回で収めて、必要な個所を数回撮影。詳細画像は接写で撮影してもらいます。マクロレンズが無い場合は100均ショップの外付けレンズでも十分使えたりします。

これまでは毎回現場での立会検査で、測定治具が無い部分は見て、触って判断する場面が多かったのですが、実はこれって定量化されていないんですよね。現場に行けない今、これまで「感覚」で判断してきた部分を思いっきり「定量化」しなければならない状況に直面。逆に言うと、検査・測定の方法を改革する良いきっかけになったとも言えます。

2.品質感の考え方

機能上問題なければいいじゃないかという中国文化。一方、そうは言っても仕上がり状態にとても拘る日本人気質。昔からこの品質感にはGapがあり、良くも悪くも日本品質基準は世界一厳しいとも言われてきました。これまで日本大手メーカーの品質は下請け企業の凄い品質に支えられているという歴史があります。図面で表現していない部分まで作りこんだ品質によって、性能が維持出来ているという製品も実は沢山あるのです。

そう言った意味において日本の町工場は、ある意味過剰品質になっている部分もある一方、コストダウンを目的にした海外の部品工場で、図面に記載されている以上の事を求めるのはとても大変。図面に落とせるならまだしも、仕上がり感のようなものは何らかの形で定量化しなくてはなりません。

3.触感が難しい

今回の課題は「触感」。表面粗さや、エッジ部の仕上がり等、熟練の職人さんは加工面を触ることでかなりの情報を分かる、言います。私の大師匠である職人さんは、常に「見て触るだけで製品が語ってくれる♪」と言っておりますが、画像ではこの「触感」がありません。さて、どうやって遠隔で「部品に語ってもらえるか?」これが目下の課題。

見たり、触ったりしないと分からない機械加工部品の仕上がり品質。その「仕上がり感」という定性的なものをどこまでバーチャルで読み取れるか。どうすれば定性的な感覚値に近いものを画像以外で捉えていくことが出来るか?そして、属人的になっている「感覚値」をどこまで定量化できるか?この部分については今後ニーズがかなり高まると見ています。

4.製造工程は宝の山

その一つの解決策として、最終部品の画像と同時に設備、加工時の動画、作業の状態、こういった「製作過程」を動画で紹介することが、思いのほか職人さんにとって凄い情報になることが分かりました。画像では判断できない部分は、その「工程」「製造過程」を見るだけでかなりの精度で見抜いてしまうという事ですね。そんなこと当たり前じゃないか!とその道の方からはお叱りを受けそうですが、私には結構新鮮だったのです。

これまで「肝の工程」は直接対面で説明したり、実演したりすることで成立していたのですが、今後はその製造プロセスの一部を動画で見せることで「仕上がり感」に直結するパラメータやアドバイスを共有できるかもしれません。もちろん、工場側は「加工ノウハウは見せたくない」と言った側面見あることは事実。こういったこれまでの常識や壁を乗り越えバーチャルや遠隔でどこまで出来るか?これまで気が付かなかった新たなイノベーションのチャンスが潜んでいそうです。

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