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人はなぜ焼豚の写真をシェアするか

#キナリ読書フェス の課題図書『世界は贈与でできている』を読んだ。

他にも課題図書があったけれど、『銀河鉄道の夜』や『くまの子ウーフ』の読書感想文はとてもハードルが高いように思えた。

だからこの本にした。今後FP関連の仕事もしていきたく、贈与は相続と並んで関係ある。

しかしそんなスケベ心はすぐに裏切られた。これは経済書じゃなかった。読む過程で今までの人生と向き合い、気づきの連続。

これは覚えておきたいと逐一マーカーをつけていると、まるで真冬の砕氷船のごとく読み進めない。

もはや読書ではなく、旅だった。BGMはシューベルト『冬の旅』。

メッセンジャーの使命

以前ヘルプデスクという仕事に就いていた。会社や学校のIT部署に常駐し、PCに問題があったとき出かけていって直すのだ。

地味な仕事なのになぜか楽しく、8年も続いてしまった。

いまはWebライターの仕事をしている。すでにある情報を読みやすくまとめ、記事にする仕事だ。

これも非常に充実感があり、いったいなぜかと思っていた。特別な才能は必要なく、華やかな仕事でもない。

『世界は贈与でできている』に書かれた「贈与論」の世界では、今ある技術や発明はみな先人からの"贈与"である。

そして、贈与を受け取った者は誰かにシェアしたくなるという。

純粋な自然の贈与を受け取ると、誰かにシェアしたくなる。
受け取った純粋な自然の贈与を、それをまだ受け取ることのできていない誰かに向けて転送する。
つまり、贈与を受け取った人は、メッセンジャーになるということです。

この考え方が、かなり新鮮だった。

ヘルプデスクの仕事が好きと転職エージェントに言うと、問題を解決して人に感謝される仕事ですもんね、と言われることが多く、もやもやしていたからだ。

贈与論を使えば説明できる。技術という贈与があり、それを使いたい人(宛先)がいる。その間に立って技術をわかりやすく伝えることがメッセンジャーの仕事だ。

技術が正確に伝われば、使いたい人が抱える問題は解決する。

メッセンジャーは技術が伝わることですでに役割を果たしており、使いたい人に感謝されるかどうかは充実感に関係ない。

Webライターも同様で、情報がしかるべき読み手に伝わることが喜びだ。伝わるように力を尽くすけれど、読み手が感謝しているかどうかまではわかり得ない。

メッセンジャーの使命として伝えたくなるから、シェアしたくなるからやっているだけなのだ。

これらの仕事で得られる充実感を"承認欲求"という概念に当てはめると違和感があった。でも贈与論の世界でメッセンジャーの使命を果たすと考えればしっくりくる。

なぜ焼豚の写真をシェアするのか

無償の愛は必ず、「前史」=プレヒストリーを持っています。
結局、贈与になるか偽善になるか、あるいは自己犠牲になるかは、それ以前に贈与をすでに受け取っているか否かによるのです。

親から無償の愛という贈与を受け取っていなければ、前史がないため子に愛を渡そうとすると疲弊してしまうとのこと。

ほぼ機能不全家庭に育っている私はこの点、救いのなさを感じた。

実際、親から受け取れなかった愛を他の人から受け取って代わりにするのは、なかなか難しい。カテゴリーが似ているからだろうか。

しかしこの本を読めば人の愛以外にも、様々なところに贈与はあるのだとわかる。

例えばおいしいものを食べて「うまあぁぁぁ〜い!!!」と思うことも、自然が与えてくれた贈与だ。

以前、焼豚がうまく焼けていい匂いがしたとき、つい写真を撮りTwitterにシェアしてしまった。

そのときのことを今考えると、つい"シェアしてしまう"ときは、贈与を受け取れているサインじゃないかなと思い返し、なんだか嬉しく感じた。

このさき、受け取った贈与のサインをもっともっと感じていける人生になるとよいなと思う。

最後に

もっと難しく本質に迫ることも書いてあったのだけれど、この本一冊で記事がいくつも書けてしまうので、これで終わりにします。

機会があったらぜひ読んでみて下さい!とても読みやすい本です。

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