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『ひとりでも生きられる』瀬戸内寂聴

私は少なくともこれまでの生涯、自分の情熱だけはいつわらず正直に生きてきたと言える。それが正しかったかどうか私は知らない。こういうふうにしか生きられない人間だったから、この道を選んだのだとしかいいようがない。しかし、私は、万巻の書からよりも、何百人の人の意見からよりも、自分自身の迷い多いつまづきつづけの恋そのものから、最も多くの生の歓びと悲しみと人間のあわれといとしさのすべてを教えられてきたと思っている。

(中略)

恋を得たことのない人は不幸である。それにもまして、恋を失ったことのない人はもっと不幸である。多く傷付くことは多く愛した証である。繰り返しいおう。人は死ぬために生まれ、別れるために出逢い、憎みあうために愛し合う。それでもこの世は生きるに価値あり、出逢いは神秘で美しく、愛はかけがえのない唯一の真実であることに間違いはないようだ。

多く愛し、多く傷付いた魂にこそ浄福を。

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