卒業~箕面自動車教習所~
今年の3月で普通自動車第一種免許取得からちょうど10年になる。教習を受けた箕面自動車教習所は大学からすぐのところにあり、同じく大学1回生の秋冬に通っていた同級生も多く、大学生活と密接なものだった。そのため当時の想い出も多く、秋がくればあの敷地や近所の古本市場、マック、教習終わりに自転車で大学構内に侵入する裏道などなど様々な景色が浮かぶ。そんな記憶を綴ってみます。免許取るまでの過程を記録する人がいる世の中でもいいでしょう。
免許を取るとかそういうことを全く考えず地元最後の春休みを遊び倒し、これまた免許を取るとかそういうことを全く考えず大学1回生夏まで遊び続けたため、気づけば訪れていたのが10月。文学部のカリキュラムは月曜1~4限、火金午後のみ、水木休みという今考えても素敵なシステムだった。そうなることを受験前日にそのへんにいたアメフト部から聞いていたから余計にそう過ごしてやるという思いも強かった。そのため月曜は2限の民俗学終わりに下宿組のつーじー、成瀬、実家組のはじめと4食で飯を食べ3限をとばすといった過ごし方をしていた。はじめが免許を取ろうとしているという話をしており、「ふーん」だったが、そういう因果も含めているのだろう、4食の入り口に箕面自動車教習所ののぼりを掲げ長机に座る二人組が見えた。「大学ってどんなところ?」って聞かれたら、「食堂の入り口にそういう人たちがいるところ」って答える。完全に脳に刷り込まれた我々は翌週の月曜には入学金30万円を持ってパイプ椅子に座り長机を見つめていた。晴れて同期入所となる。人生最後の大きな負担をありがとう、お父さんお母さん。
「30万!?高すぎばい!」と思うあなたは正常です。箕面自動車教習所は併設のカフェテリアで飲食無限タダというシステムをとっており、俺はこのおかげで5キロぐらい太った。最初はパスタとかピラフとかカレーとか色々食っていたのだが、結局どれもまずくて、1か月後にはトーストとミックスジュースに落ち着いた。午前に教習を入れ、昼飯をそこで食べて午後から大学に行ったり軽音のバンド練に行ったり、前も言った劣悪なネカフェバイトに出かける日々を過ごしていた。とても優雅。教習所から大学まで行く道は171に出て茨木方面に進み、ラーメンはなみちで右折、坂をのぼる途中で住宅街に入り猫が通るような道を猛進すればそこは体育館の横です。
他の教習所のことなんてなんも知らんけど、箕面自動車教習所にも名物講師みたいな人は数名いた。ロザン宇治原風の語気強め教官、ジェスチャーが変すぎて救護の講習がヤバかったおっちゃん教官、マックを目印に右折することを「メガマック」と呼ぶ教官、ただ厳しいだけの何でもない毒虫みたいな教官などなど。この毒虫みたいな教官に序盤の5回分ぐらいの実技をけちょんけちょんに言われ余分にお金を払う羽目になった。殺そう毒虫なんだし。
後半になると安定してきて路上教習もすいすいとこなしていった。と同時に教習の印象も薄まるのだが、唯一印象深いのが危険予測みたいな教習の時に一緒になったお姉さんが俺のことを「当然彼女がいる」という前提で雑談をしてくれたことだ。人生でそんな扱いを受けたことがなかったから嬉しかった。危険予測だから夜にしか受けられない講習で、ブレストをするプレハブで教官が来るのをまっている、冬の早くて重い夜の景色。終わってプレハブの階段をカツカツと降り、門で「私は桜井の方なので」と別れるあの瞬間までの全て。両手に数えられるだけのいい夜を集めるとしたら、確実に親指。そういうことも味わった。
他にも色あせない景色として古本市場がある。教習と教習の間が1時間とか空くと近所の古本市場に行った。そこで小学生に混じってMAJORの立ち読みをはじめ、結局2013年の8月に石垣島で77巻を見つけるまで全巻集めることになる。またある早朝に泊まっていた大賀の家から自転車を漕いで家に帰る途中、蛍池あたりで完全に自転車が壊れたのでなんとなく「クロスバイク買おう」と思い、昼の教習所でフリーのパソコンでネットサーフィンしていた成瀬にそのことを報告すると「良いね、俺も買うわ」となり2人でその冬にクロスバイクを買った。それにももう10年乗っている。橋爪君とバンド名を決めたのも教習所のカフェテリアだった。玉崎さんと一緒に教習所から自転車で帰り、疲れて寝たら夜9時のオルガンでの待ち合わせを寝ぶっちしたこともある。色んな原点が箕面教習所にあった。
うまいこと1回生の春休みに免許をとった。住民票は大分のままだったから、大分のバカ山奥にある免許センターで試験を受けた。約1年ぶりの試験と合格発表、さすがに受かると嬉しい。「よかった~」って漏れたのは高校受験の合格発表と同じだった。大分がそうさせるのだ。当たり前やけど教習所で撮った写真なんて1枚もないわ。
ちょうど節目の10年、立派な卒業生として懐かしの教室をたずねる俺がそこにはいた......。