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鳥のきもち「あとがき」

最後までお読みいただきましてありがとうございます。

いかがでしたでしょうか。
多くの飼い鳥の飼育についての本は人間側からの視点で書かれていました。
しかし、本書はあくまでも鳥の立場、つまり鳥のきもちに沿って書いてつもりです。
もしかしたら鳥が自分のきもちを伝えるとしたらこういうことなのかなと、自分の体験を振り返りながら書き綴りました。
愛鳥家の皆様そして飼い鳥にご興味がある方のご参考になれば幸いです。

実はこの本を書くにあたって、モデルになったオウムがいます。
動物のオークション会場でレスキューした、愛称「トキちゃん」というオスのオオバタンです。
彼とはもう25年のつきあいになりますが、鳥といるというよりも、ひとりの男性と一緒にいるような錯覚を覚えることがしばしばあります。
トキちゃんは喜怒哀楽がはっきりしていて、自分のきもちを正直に出してくれます。
気がつけばトキちゃんからいろいろなことを教わり、僕たちは成長してきたのかもしれません。
僕たちはトキちゃんのような、いろいろな事情で飼えなくなった鳥を引き取り、新たに里親さんを探す活動を行っています。
コンパニオンバードの素晴らしさが世の中に広まることはうれしいですが、飼えなくなって手放す鳥が増えるのはとても悲しいことです。
せっかくご縁があって飼い始めた鳥を、最後までお世話していただきたいという願いを、この本に込めました。
しかし、本書は飼育本ではありません。コンパニオンバードを飼育される場合は、本書と別に「飼育本」を併用されることをお勧めします。

ペットの中でも非常に感情に溢れ、知能が高い飼い鳥はこれからコンパニオン・アニマルとしてさらに普及していくでしょう。
しかし、お世話の方法を間違えれば飼い主を困らせることにもなり、あげくの果ては手放す結果に繋がることになるかもしれません。
本書が人や鳥そして周りを取り巻く社会の幸せに繋がればこれ以上うれしいことはありません。
トキちゃんの言葉でつづった本とはいえ、適切ではないたとえや表現がありましたらどうかご容赦願います。

この本を執筆にあたってどうしても書きたいことがありました。
2000年2月。アメリカ最大級の飼い鳥のレスキューセンターであるガブリエル財団の第1回シンポジウムに参加しました。
そのとき同時に読んだ本が『捨て犬を救う街』(小社刊)でした。
僕はこの本とシンポジウムの参加をきっかけにその1カ月後、飼い鳥のレスキューセンター「TSUBASA」を設立しました。
それから10年。自分の本を出版するときは『捨て犬を救う街』を出版したWAVE出版さんに一番最初に企画を持ち込みました。
 
ダメもとでした。
そのとき対応してくださったののが、玉越直人社長(当時)と編集部(当時)の手島朋子さんでした。
いろいろな話をしているうちに、手島さんから1999年頃に東京池袋で「トキちゃん」というオウムがいるペットショップに何度も足を運んだというお話をうかがいました。
なんとそこは僕たちのショップだったのです。
手島さんとは25年くらい前に何度かお会いしていたということがわかりました。
偶然かもしれませんが、トキちゃんがとりもってくれた縁であると僕たちは信じています。
『鳥のきもち』が世の中に出るにあたり、多くの方にお世話になりました。
この場をお借りして心から感謝致します。

今、日本で飼われている飼い鳥の多くは、幼いヒナのときに海外から輸入されています。
親鳥の愛情をたっぷり注いでもらえずに、親から引き離されて長旅の末、異国日本に到着しました。
甘える親鳥もいないのでさぞかしさみしかったと思います。知らない場所、わからない言葉などで不安がいっぱいだったでしょう。
しかし、彼らはそんな素振りを全く見せずに僕たちの心を癒してくれます。
僕たちを笑顔にしてくれます。
もしかしたら彼らは地球からの親善大使なのかもしれません。
その素敵な親善大使のすべてを僕たちが幸せにしなくてはならないのです。
親善大使の彼らが幸せになることは、つまり僕たちの幸せに繋がるからだと思っています。
この本が「人、鳥、社会の幸せのため」少しでお役に立てれば本望です。
                              
(終)

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