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(7)The Future of ‘Birds-first’ Breeding「自然淘汰だよ。野生ではそうだろ?」

いつもありがとうございます。鳥爺です。

25年以上前、国内のブリーダーさんの中でも名の知れた、ある繁殖場を見学に行ったときのことでした。

繁殖場の中に入る前から強い臭いがしてきました。そして室内に入ると、強烈な異臭に一瞬たじろぎ足が止まりました。それもそのはず、ペアになっている鳥たちの部屋の床は、止まり木の下を頂点に、こんもりとしたウンチの山が出来上がっていました。

私は恐る恐るブリーダーさんに聞きました。
「掃除はどれくらいの頻度で行っているのですか?」と。
すると
「今の繁殖が終わってからだよ」と、速攻で返事が返ってきました。
さらに続けて

「掃除をすると繁殖率が下がるからね」
親鳥がびっくりして子育てを放棄するそうです。

へぇ~、そんなんだ、とその時は思いました。
しかしウンチの山を見て、繁殖期だけではなさそうなので、具体的に聞きました。
「何ヶ月くらいしたら掃除するのですか?」
「そうだな、半年に1回くらい」

半年、、、!? 言葉に出しませんが、心の中で驚きました。
信じられません。国内でも有名な繁殖場です。私だけでなく多くの方が見学に来たり、鳥を購入に来たりしていると思います。そういう人たちは、この環境を見てどう感じたのでしょか!?

「でも、この環境(掃除をしていない繁殖場)だと子育て放棄より、病気をほうが心配なのでは?」と、個人的な気持ちを伝えました。
するとブリーダーさんは今まで表情とは一変して一瞬を嫌な顔をしました。
気に障ったようです。ということは、今までこんなことを言う人がいなかったということでしょうか?

ブリーダーさんは、私を睨みながら
「自然淘汰だよ。弱い鳥は死んで、強い鳥が生き延びるんだ。野生ではそうだろ?」と。
さらに
「だからお客のところに行く鳥は強いんだよ。あんた(私のこと)のところにも丈夫な鳥を送るよ」
と勝ち誇ったような笑みを浮かべていたことが印象的でした。

ちょっとだけ現在に戻ります。
愛鳥家さんから「酷い小鳥屋がある」との通報を受けて、こっそり視察に行くことがあります。そこにはお年寄りの方が一人、もしくはご夫婦で営んでいるところがほとんどです。
視察に行くときに対立姿勢で行くと、門前払いされる可能性が高いです。
そこで私の役柄(?)は、昔ながらの鳥好きのオヤジという設定で入店します。
するといろいろな話をしてくれます。小鳥屋の親父さんも鳥好きであることには間違いありませんので。
ただ昔ながらのやり方で成功体験を引きずっているので、止まり木の下がウンチの山になっていることに、問題意識すら感じていないようです。

そんな親父さんが悪びれることなく、
「弱い鳥は死んで、強い鳥が生き延びるんだ。野生ではそうだろ?」
と似たようなことを言われます。
小鳥屋やペットショップは野生ではない!、言い返したいことを我慢しつつ、現在も25年以上前と同じような考えをする小鳥屋さんが、まだまだあります。
後継者がいない場合、こういうお店は時間の経過とともに無くなるでしょう。
しかし、今そこにいる鳥たちのことを考えると複雑な心境です。

(つづく)

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