「数量を文字式で表す」を、できるだけ簡単に
中学1年生にとって難関の一つが『文字式』、その中でも「数量を文字式で表す」です。
小学校では具体的な数字だった数量を、抽象的な文字を使って表さなければなりません。
子どもにとってわかりやすく無理がないのは、現状の知識で理解できることから出発して、徐々に応用に至る方法です。小学校の算数の知識でわかる問題から初めて、少しずつ理解を深めながら、順に難しい問題に移っていく方法で指導するのがベストだと思います。
★子どもたちが理解しやすい問題
(1)1本50円の鉛筆をa本買ったときの代金
注1:文字式のきまりから、答えには×と÷が使えないことを徹底しておきます。
式を考えるとき、最初のうちは、まず×、÷を使って考えてみて、次に×、÷をとるやり方でもかまいません。
注2:文字式では、単位をつけないと減点です。
単位のつけ方として、単位を( )で囲む方式と、式を( )で囲む方式の2つがあります。
方式1:50a+100b(円)、方式2:(50a+100b)円
前者の、単位を( )で囲む方式のほうが簡便です。どんな答えでも同じやり方でいけるので悩まなくて済みます。
教科書は、後者の、式を( )で囲むものが多いようです。この方式の場合、50a+100bのように項と項の間に+、-があると( )が必要ですが、そうでない単項式のときは式に( )は使えません(例:(50a)円は間違い、50a円が正解)。
(2)50円はがきをx枚、80円切手をy枚買ったときの代金
(3)xグラムの箱に、1個yグラムのあめを4個入れたときの全体の重さ
解答
(1)50×a=50a(円)
(2)50x+80y(円)
(3)x+4y(g)
★問題と答えを覚えておいたほうがよい問題
(1)1000円札を出して80円のケーキをx個買ったときのおつり
(2)1辺がacmの正三角形の周りの長さ
(3)3科目の得点がa点、b点、c点であるとき、3科目の平均点
解答
(1)1000-80x(円)
(2)正三角形の辺は3本だから、a×3=3a(cm)
(3)(a+b+c)÷3=a+b+c/3(点) /は分数の横棒を表します
注:おつり=1000-代金、正三角形の周りの長さ=3×a、3回のテストの平均=a+b+c/3は覚えておくとすぐに他の問題に応用できます。
(4) 長さamのひもから、bmのひもを3本切り取ったときの残りの長さ(お金の残りがおつりですから、「おつり」と「残り」は同じ発想で解きます)
(5)1辺がacmの正方形の周りの長さ
(6)男子20人の平均身長がacm、女子23人の平均身長がbcmのとき、男女全員の平均身長
解答
(4)a-b×3=a-3b(m)
(5)正方形の辺の数は4本だから、a×4=4a(cm)
(6)平均=合計÷人数、合計=平均×人数より、男子の合計が20×a、女子の合計は23×b、人数は20+23=43人、よって(20a+23b)÷43=20a+23b/43(cm)
★単位をそろえる問題(子どもたちがいやがる問題)
(1)akmは何mですか。bmは何kmですか。
注:どう教えても、なかなか上手くできない問題群です。今のところ、次のように教えるしかないと思っています。
1kmは1000mである。だから、a(km)=1000a(m)。逆に、1mは1000kmではない。ということは1m=1/1000km。だから、b(m)=b/1000(km)。
解答
(1)akm=1000a(m)、bm=b/1000(km)
(2)xkmとymの和をいえ(単位はmで)。amとbcmの和をいえ(単位はmで)。
(3)x時間とy分の和をいえ(単位は分で)。a分とb秒の和をいえ(単位は分で)。
(4)長さamのひもから、bcmのひもを3本切り取ったときの残りの長さ
(5)akmの距離を分速bmで40分進んだときの残りの距離
解答
(2)xkm=1000xmだから、1000x+y(m)。bcm=b/100mだからa+b/100(m)
(3)1時間は60分だから60x+y(分)、b秒はb/60分だからa+b/60(分)
(4)100a-3b(cm)、またはa-3b/100(m)
(5)1000a-40b(m)、またはa-(b/1000)×40だからa-b/25(km)
★整数の問題(重要、答えを暗記しておいたほうがよい)
(1)10の位がa、1の位がbである2けたの数
(2)4で割ると商がxで余りがyになる数
(3)いちばん小さい数をxとするとき、3つの連続する整数
解答
(1)例えば53という2けたの数は10×5+3である。5にあたるのがa、3にあたる数がbだから10×a+b=10a+b
(2)例えば(?)÷5=2あまり3のとき、(?)をどうして求めるか?5×2+3で13と求めるはず。つまり、小学校で習った検算と考える。割る数×商+あまり、4x+y
(3)連続する3つの整数とは、5、6、7のような数をいう。1ずつ増えるから、5、5+1、5+2となっている。よって、x、x+1、x+2
(4)100の位がa、10の位が5、1の位がbである3けたの数
解答
(4)100a+50+b
★割合の問題
(1)a円の4%はいくらか。
(2)200円のc割はいくらか。
注:小学校と同様、百分率、歩合はそのままでは計算には使えません。例えば、3%=0.03(小数)または3/100(分数)にして初めて式で使うことができます。
覚え方は、パーセント=1/100、割=1/10です。
数字のとき、例えば3割だと0.3(小数)でも3/10(分数)でもどちらでもよいのですが、文字のとき、例えばa割だと、a/10(分数)のみで、小数は使えません(0.aはありえない)。
解答
(1)4%=0.04、日本語の「の」は数学では×と考えてよい。だから、a×0.04=0.04a(円)、分数で考えた人は4a/100だが約分しないといけないから正解はa/25(円)
(2)c割はc/10、分数にする。200×c/10だが、200と分母の10を約分して20c(円)
(3)原価a円の品物に、2割の利益を見込んで定価をつけたときの定価
(4)定価500円の品物をa%値引きしたときの売値
注:「利益」と「~引き」の2つは、決して見落としてはいけない言葉です。
「2割の利益」は2割(0.2)ではありません。2割、もとより儲けたい、つまり、もと+2割のことです。そして算数・数学で「もと」と言えば1のことですから、「利益」という言葉が出たら「1に+」と覚えておいてください。2割の利益とは、1+0.2、すなわち1.2倍ということです。
「~引き」も同じです。2割引きは0.2ではなくて、1-0.2、つまり0.8のことです。「~引き」とは1から引けということ、1-と覚えておきましょう。
解答
(3)「2割の利益」は1+0.2、1.2だから、1.2a(円)
(4)「~引き」は1から引かなければならない、そしてa%は分数のa/100、よって、500×(1-a/100)、×をとった500(1-a/100)(円)
★最後に「速さ」の問題です
(1)時速akmで6時間進んだときの道のり
(2)xmの距離を毎分ymの速さで歩いたときかかる時間
(3)pmの距離をq秒で走ったときの速さ
注:道のりを求めるときだけかけ算で道のり=速さ×時間、他は道のりを割ればよいから速さ=道のり÷時間、時間=道のり÷速さ、この3つの公式を確認しておきます。
解答
(1)道のり=速さ×時間より、6a(km)
(2)問題の最後が「時間」だからといって、答えの単位を(時間)にしないように。分も秒も「時間」に含まれます。「毎分」とあるから、この問題の「時間」は「分」です。
時間=道のり÷速さより、x÷y=x/y(分)
(3)速さ=道のり÷時間より、p÷q=p/q(m/秒)
(4)時速akmで5分進んだときの道のり
(5)xkmの距離を毎分ymで速さで歩いたときにかかる時間
解答
(4)単位をそろえないと式にできません。「時速」とあるので「時間」しか使えません。5分を「時間」に変えないといけません。1分=1/60時間を使って、5/60時間、約分して1/12時間です。
a×1/12=a/12(km)
(5)これも単位をそろえる必要があります。xkm=1000xmより、1000x÷y=1000x/y(分)
俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。