浮力(ふりょく)の基礎・基本(中学理科)
★浮力とは何か?
ばねはかりにものをつるし、目盛りを読むとA(N:ニュートン)であったとします。
次にものを水中に入れて、ばねはかりの目盛りを読むとAより小さいB(N)になります。
必ずA>Bとなります。
つまり、ものを水中に入れると、入れる前よりばねはかりの目盛りは小さくなる、つまり、軽くなったようにみえます。
また、空気中だと手を離すと下に落ちる木が、水には浮きます。
地球上にあるすべてのものには、地球がものを真下(地球の中心)に向かって引く力(重力)がはたらいています。
重力の大きさは、物体が空気中にあっても水中にあっても変わりません。
だから、物体を水中に置くと、ばねはかりの目盛りが変わるのは、水中にある物体に、重力とは反対向きの力がはたらいていると考えないと理屈に合いません。
この、物体が水中にあるとき、物体にはたらく上向きの力が、浮力です。
重力や浮力を図で表すときは、重力は物体の中心から鉛直下向き(地球の中心に向かう真下の方向)の矢印で表します。
浮力は、物体の中心から鉛直上向き(真上の方向)の矢印で表します。
(まとめ)浮力=空気中での重さ-水中での重さ
★浮力が生まれる理由
水中にある物体には、水による圧力がはたらきます。
水の圧力(水圧)です。
深いほど物体の上にある水の量も増えるので、水圧も大きくなります。
つまり、水圧は深さに比例します。
下の図で、水の圧力は深さに比例するので、水圧C<D<E<Fとなります。
ところが、水圧のうち、DやEは、D1=D2、E1=E2だから、左から押す力と右から押す力がお互いに打ち消しあって、力としては0になります。
結局、上から下にものを押す圧力Cと、下から上にものを押す圧力Fだけが残ります。
この、下に押す圧力Cと、上に押す圧力Fとの差によって生まれるのが浮力です。
水の圧力は深さに比例するので、C<Fとなり、水中にあるものには常に上向きの力である浮力がはたらいていることになります。
(まとめ)浮力が生まれるわけ=上の面にはたらく水圧と下の面にはたらく水圧の差
★アルキメデスの原理
次に、浮力の大きさを計算で求める方法を考えてみましょう。
上で述べたように、物体の上の面より上にある水の重さと、物体の下の面より上にある水の重さとの差によって生まれる力が浮力です。
浮力=物体の上の面より上にある水の重さ-物体の下の面より上にある水の重さ
ところが、体積1立方cmの水の質量は1gです。
だから、体積100立方cmの水の質量は100g。
さらに、質量100gの物体にはたらく重力(重さ)が約1Nです。
水の体積100立方cm=質量100g=重力(重さ)1N
以上より、体積の差を求めることで重力の差(=浮力)を求めることができることがわかります。
さらに、図からわかるように、体積の差は水中にある物体の体積と一致します。
この関係はアルキメデスが発見したのでアルキメデスの原理といわれます。
アルキメデスは、「ものを水に入れると、ものがおしのけた体積の水の重さと同じだけ軽くなる」と記述しました。
物体の体積=水の体積の差
水の体積の数値=水の質量の数値(単位は違うが数値は一致)
水の質量100gにはたらく重力(重さ)は1N
以上の関係より、
水中にある物体の体積がわかれば物体にはたらく浮力がわかり、
体積100立方cmの物体にはたらく浮力は1Nである、
ということになります。
また、浮力は水中にある物体の体積に比例するだけで、深さや物体の形は関係しません。
(まとめ)水中にある体積100立方cmの物体にはたらく浮力は1N
★この稿のまとめ
1、浮力=空気中での重さ-水中での重さ
2、浮力が生まれるわけ=上の面にはたらく水圧と下の面にはたらく水圧の差
3、水中にある体積100立方cmの物体にはたらく浮力は1N
4、浮力は水中にある物体の体積に比例するだけで、深さや物体の形は関係しない。
俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。