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「勉強」はピラミッド型の三層構造 (「勉強」の中身を分類することの利点)

勉強、特に受験勉強では、「勉強の内容はピラミッド型である」と意識したら、何を、どのように、勉強すればよいかを具体的にイメージできます。

勉強の内容は、A.定期テストレベルB.実力テストレベルC.入試レベルの3つに分かれます。

A.定期テストレベルは、小学生であれば学校の単元別テスト、中学生であれば学校の定期テストレベルで90点以上とるために必要な勉強のレベルです。

B.実力テストレベルは、外部の模擬テストや中学3年生の実力テストで7~8割以上得点するために必要な勉強のレベルです。

C.入試レベルは、文字通り、実際の入試で合格ラインを楽々超えるために必要な勉強のレベルです。

A. 定期テストレベル

小学校の算数であれば、「計算が正確にできる」、「速さ割合面積公式がちゃんと使える」など。
中学校数学だと、「計算方程式は完璧にできる」、「グラフの式を求められる」など、英語だと「英単語を間違いなく書ける」、「疑問文否定文を正しく作ることができる」などがこの領域に含まれます。

このレベルの勉強ができている人は、学校では「よくできる人」です。
小学校の低学年からきちんと勉強している人は、それだけでこのレベルはクリアできます。

しかし、受験となると、このレベルの問題が出題されることはほとんどありませんから、まだ入試での得点力はありません。

B. 実力テストレベル

小学校の算数だと、「分配法則で式を簡単にしてから計算する」、「斜線部分面積は全体から不要な部分をひく」、「旅人算だと、最初の差を、二者の差や和でわる」などをきちんと理解できていること。
中学校数学だと、「グラフでx座標がわかっているときは、グラフの式に代入してy座標を求める」、「面積二等分する問題は中点を求める」、「円錐側面積母線×半径×πで求められる」など、英語だと、「おもな連語はほとんど覚えている」、「like+to~をbe fond of+~ingで書き換えられる」などを理解できていることがこの段階になります。

いわゆる「受験のテクニック」と呼ばれるものの多くが、このレベルで習得しておかないといけない代表的なものになります。
学校の勉強だけではどうしても見逃しがちで、塾などで練習して覚え込むことで身につくことが多い事柄です。

ただし、この段階で満足してしまっていては、実際の入試ではまだ得点力はそう高くありません。
入試問題(特に進学校と言われる学校の入試問題)は、このレベルのことは受験生全員が熟知していることを前提に、その応用問題が出題されるからです。

C. 入試レベル

この段階で要求される主なものは、「正確な読解力」、「高度な思考力」、そして「ひらめき」です。

教えてもらって覚える入試テクニックを超えた、いわば個人の努力知識の量に大きく依存する領域です。

そして、「正確な読解力」、「高度な思考力」、「ひらめき」の3つのうち、一番必要とされるのは、意外に思われるかもしれませんが、実は「ひらめき」です。
なぜなら、「読解力」や「思考力」は、A.定期テストレベルや、B.実力テストレベルをクリアしている人であれば既にほぼ全員が修得できているからです。

ここでいう「ひらめき」とは、根拠のないあてずっぽうのヤマカンではありません。
問題を解くときに必要な「ひらめき」とは、「根拠のある推測」のことです。
「頭がすばらしくよい人」というのは、「根拠のある推測」ができて、それがいつもズバッと当たる人のことです。

では、この「ひらめき」がある人は、どうやって「ひらめく」力を修得できたのでしょうか?

私の答えはこうです。

何もしないで、生まれつき「ひらめく」ほど、神様から愛されている人などいるはずがありません。
ひらめく」人とは、多くの骨のある問題を解き、頭の賢い使い方を自分の中に蓄積している人のことです。
多くの問題を解いて訓練を積んだ人は、自分では意識しないで、頭の中に蓄積した情報を瞬時に組み合わせて、正しい解法にたどりつくことができるのです。

したことがある問題だから解けるわけではありません。
蓄積したいくつかの解決法が自然に組み合わされて、出された問題を正しく解くことができるのです。
人から見ると、それが「ひらめいている」ように見えるだけです。

人から教えられるだけではいけない、自分で勉強をし続けないといけないのは、自分だけで多くの問題を解かないといけないのは、そうしないと「ひらめき」のもとになる大切な「なにものか」が頭に集積されないからです。

「勉強」を三層構造のピラミッドと理解することの利点

通常、勉強をする人も、勉強を教える側の人も、勉強の中身を分類して意識することはほとんどありません。

そのことが、多くの「勉強」の「やりそこない」を生じさせます。

例えば、入試直前にA.定期テストレベルの勉強をいくら長時間必死にやっても、ほとんど入試の得点にはつながりません。

また、A.定期テストレベルの学力もおぼつかない人が、C.入試レベルの学習指導に特化したバリバリの進学塾に入ってしまったら、塾通いはその人を傷つけるだけです。

「勉強」の中身を分類することで、今、自分に必要な勉強は何なのかを初めて正確に把握することができるのです。


俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。