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国語の読解問題を解くために必要な技術(1)

他の科目はそこそこできるのに国語ができないという人は多い。「どうしたら国語ができるようになるでしょうか?」とよく尋ねられもします。

「国語ができない」原因には、実は2つのものがあります。

ほとんどの人は、それを区別して論じようとしない、そこに国語の勉強法に関する議論の混乱のもとがあるように思われます。

★問題を解くために必要な2つのもの

人間が何かをできるようになるために必要なものは2つです。

スポーツであれば、1つは基礎体力、もう1つはその競技に勝つために必要な技術です。

勉強もしかり。

問題を解くための前提である基礎学力がなければ問題は解けません。

もう一つは技術です。問題を解くためには、教科によってそれぞれ正解を導き出すために必要な技術があって、それを習得していないとよい点はとれません。

国語という教科でも、この2つを区別して論じないといけません。

★国語の問題を解くための基礎

国語に関していうと、問題を解くための基礎的な学力、能力に当たるものは、「知識」と読む「速さ」です。

知識の不足している人は、文を読んだって内容を理解できませんから正解にはたどり着けません。

読む速さが遅い人は、問いについて考えて答えを探す時間が足りないので点数はとれません。

では、どうしたら知識を増やして読む速さを速くすることができるかというと、これは長い間の、文章を読むという経験の積み重ねしかありません。

国語ができない人に、「新聞を読みなさい」、「本を読みなさい」とすすめる人がいます。
完全な正解だとは思いませんが、一面の真理をふくんでいます。
何であれ文章を読まないと、知識も、読む速さも身にはつかないからです。

注意しないといけないのは、文章を読むための基礎的な能力は、筋肉が1日ではつかないように、何日も何年も文章を読み続けないと身にはつかないということです。

試験前に一夜漬けで読書をしたって、国語のテストの点数は1点もあがりません。長い間の地道な積み重ねが必要です。

だからといって、あきらめてもいけません。
1日では効果は目に見えませんが、数日、あるいは1週間もすれば確実に進歩はし始めます。

最初の一歩を踏み出した人だけが、前に進めるのです。

★国語の問題の特殊性

「本はよく読んでいるのに国語の点数が悪い」という人もいます。

国語も1つの教科ですから、教科特有の、問題を解くために必要な技術があります。

国語に関して広まっている嘘のうち一番罪深いのは、「数学などは答えは1つだが、国語はいくつもの正解がある」という根拠のない嘘です。

逆です。

数学は論理さえ正しければ、正解にたどり着くいくつもの道があります。
しかし、国語の正解に到達する道筋は、科目の性質上、絶対に一つです。

「科目の性質上」と言ったのは、国語の正解と、他の科目の正解とは、1つだけ大きな違いがあるからです。

国語以外の科目は、数学も理科も社会も英語さえも、客観的に正しいとされる答えがあることを前提とします。
問題の作成者も、問題の正解を自分で勝手に作ることはできません。問題を出した人も、客観的に正しいとされている答えの支配下にある点では、問題を出された人と立場は同じです。
先に答えは存在していて、出題者はそれを問うているだけです。

ところが、国語の読解問題だと、先に正解は存在していません(漢字や知識の問題は違います、他の科目の正解と同様、先に正解が存在します)。
問題の作成者は、まず本文を提示します。
次に、本文中にある言葉を手がかりに、ある解釈が唯一の正解であると作成者自身が考える正解に誘導できるように問題文を作成します。

問題作成者だけが、問題の正解を設定できるのです。問題を解く人は、出題者が正解だと設定した答えを書かないと正解にはなりません。
問題文を提示して、それについて問いを発した人が要求している答え以外に、国語の正解はありえないのです。

だから、国語の問題を解くための技術とは、その、出題者が求める唯一の正解を導き出すための技(わざ)だということになります。

★国語の問題を解くための技術とは

国語の正解は厳密に1つです。

そして、その唯一の正解とは、出題者が要求している答えです。

国語の問題を解くための技術とは、その、出題者が求める唯一の正解を導き出すための技(わざ)のことです。

ところで、正解は自分で勝手に決めることができる国語の出題者ですが、問題作成者も守らないといけないルールが1つだけ存在します。

「何が正解であるかの根拠になる文言を、問題の本文か、問いの文の中に提示しておかないといけない」というきまりです(解くための手がかりのない問題は、もはや「問題」とはいえません)。

ですから、国語の問題を解くための技術とは、出題者が最初に提示した本文と、問いの文章から、出題者が要求する正解の手がかりとなる言葉を探し出す技術だということになります。

次稿『国語の読解問題を解くために必要な技術(2)』で、国語の正解を導き出すための技術について、実際の問題を用いてさらに具体的に述べたいと思います。

俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。