実は生成AIってそんなに流行ってないのでは?

ここ2年ほどで、生成AIによるサービスがいくつも提供されている。
おそらくもっとも有名なのはChatGPTだろう。

私は主にテキスト生成の研究をしているため、日常的に生成AI(LLM)に触れている。そんな私に対して、XやYouTubeのアルゴリズムは生成AIの話題を提供する。
だからこそ私は、「今、世間でも生成AIが流行りだ!」と感じていた。
だが、実はそうでもないのかもしれない。

私は今までエンジニア以外の人もChatGPTなどの生成AIの存在は知っていて、みんな使ったことがある状態だと認識していた。
おそらくこの認識はズレているのだろうが、この"ズレ"の正体は一体何なのだろう。


ChatGPTを知らない人は意外といる

私が利用している美容室の美容師さんも、バイト先のパートさんも、私が世間話の中で"ChatGPT"という単語を出した時「なんだそれ」という顔をしていた。
おそらく"ChatGPT"という生成AIの名前は聞いたことがあるのだが、単純に名前までは覚えていなかったのだろう。

生成AIの導入や活用についてニュースで取り上げられていることもあるから、この出来事に私はとても驚いた。
だが、よく考えれば生成AIのニュースなんて数あるニュースの内の一つでしかない。
私の専門分野が生成AIだからニュースで取り上げられたことを覚えていただけだ。

日常的に何に使えるの?

そもそも生成AIは日常の中でどこに組み込めるのだろう。
今は様々なPC作業(プログラミングなども含めて)をメインに活用されているが、もっと普段の生活の中に組み込めないのだろうか。

日常の中での活用例としてすぐに思いついたのは、質問応答システムだ。特定のドメインに対して使えるようにチューニングされて活用されている事例がある。
だが、これは回答に正確さを求められる場面では不安が残る。どうしても現状のLLMは嘘(ハルシネーション)を出力してしまうからだ。
正解率が99%のLLMは、単純に100回に1回は嘘をつく。

では他には何に使えるだろう。
文章要約?日常で効率を求めて文章を読むことがそんなにあるだろうか。
今日の献立でも聞いてみる?おそらく思い通りの出力がされないことに腹を立てることになる。

そう。生成AIの活用は難しいのだ。
いきなり十徳ナイフを渡されても何にどう使えばいいか分からないし、そもそも解決したい課題がないかもしれない。

利用するコスト

ChatGPTやClaude、Copilotなどのサービスはどれも簡単に使える。
だが、この"簡単"というのは普段からPC作業を行う人にとっての感覚なのだろう。
雑に言ってしまうと、使い慣れないサービスをわざわざ使うのは"だるい"のだ。

生成AIの利用には様々なコストがかかる。
最新のモデルを利用しようと思えば金がかかる(多くのタスクは最新モデルほどの性能を必要としないが)

そもそも生成AIを使うためにはアプリやブラウザを開いてログインしなければならない。これもコストだ。

いざ使ってみたら、思い通りの出力をするためには上手なプロンプトの書き方を学ぶ必要がある。少し使ってみたいだけの人にとっては大きな学習コストがかかる。

そもそも現状の生成AIはサービスとして完成していない。
だって使うのが"だるい"から。
あまりに雑な物言いではあるが、これも生成AIが流行っていない理由の一つだろう。

生成AIは"夢の技術"ではない

たぶん、生成AIは実際に利用している人以外には"なんか凄そうな技術"と思われている。あるいはそう思われていた。
(もちろんすごい技術ではある)

だが、何でも解決できる技術ではないのだ。
海外の大企業が多大な金を投じて進めている分野であるため、非常に速いスピードで進歩している分野ではあるがまだまだ完成形ではない。

実際に使ってみると様々な問題がある。ハルシネーションなどはその問題の一部でしかない。

そして、生成AIは"便利"な技術だが、まだ"無いと不便"な技術ではない。(私個人は生成AIが無いと不便だが)
今のところ利用するコストが大き過ぎて、相対的に得られる恩恵が小さいのだ。
もう少し利用コストが小さくなれば、つまり導入が簡単になれば、生成AIが日常の中に溶け込む未来もあるのかもしれない。

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