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かゆいひと

わたしはレディースクリニックに来ていた。 
診察を終え座っていると、看護師さんがわたしの隣に座る女性に声をかけた。

看護師さん「◯◯さん、最近体調どうですか?」
見知らぬ女性「つわりで気持ち悪くて…ほとんど食べられなくて…」

近くに座る無関係なわたし(つわりかあ‥きついよなあ‥)

少し経ってから、わたしは別の看護師さんに声をかけられた。

看護師さん「とりあえずさ〜ん。」
私「はい。」
看護師さん「今回は隠部が痒いとのことで!(なんかすごく元気)」

近くにいる無関係な妊婦さん(この人股が痒いのか‥。)

ってなってますよね!??!
絶対なってますよね?!
わたし=股痒い人 ですよね?!?

看護師さん『陰部が痒くならないように気をつけることがいくつかあるので、今から説明をしますね!』
わたし『は、はい‥(こ、ここで?!)』

看護師さんはハキハキと説明をし始めた。
この状況、かなり恥ずかしい。恥ずかしいけど恥ずかしいことを悟られたほうが恥ずかしい。恥ずかしさをねじ伏せわたしもなぞにハキハキと受け答えをしてしまっていた。
ハキハキとする股痒い人。ボディソープで股を洗いすぎて股が痒くなった股痒い人。妊婦さんに全て知られてしまう股痒い人。

気をつけることの最後のほうで『後ろから前に拭かないようにしてください』と言われ、それに対してはすぐさま「やってません!」と無罪を主張した。そんな痒みの自給自足はしていないのだ。

看護師さんから薬を受け取り、カバンにしまう。
股が痒い人としてどんな顔をしていたらいいのかわからない。
なにをどうしようと病院を出るまでわたしは股が痒い人。
ああ早く帰りたい。

名前を呼ばれて会計を済ませ、わたしは外に出た。股痒い人からの解放。外の空気はうまい。薬ももらったしこれで安心だ!

帰りに近くのドラッグストアで買い物をした。
あ、さっきの妊婦さんだ。
きっと「あ、さっきの股痒い人だ」って思われてるんだろうな。その名前は病院の外で捨てたはずなのに。
早足でレジに向かいながら、無関係ながら妊婦さんのつわりが早くましになるようにちょっとだけ祈った。
妊婦さんもわたしの股の痒みがなくなるようにちょっとだけ祈ってくれていたかも知れない。



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