目

初対面の人と会う時、どこを見るのか。わたしは「目」だけを見て判断していた。

いい感じ、よくない感じ。大きい、小さいなどは関係なく、ほとんど見た時の直感だった。よくないと思った途端ガラガラとシャッターを下ろし、それ以上関わる必要はないと決めつけてしまっていた。話すのが苦手だった分印象に頼っていたのもあるし、どんなに取り繕っても目は誤魔化せない、騙されないぞ、というどこかひねくれた思いもあった。

「わたしにとっていい人」「波長が合う人」かどうか判断するには、今でもこの直感には信頼を寄せている。実際、あまり間違うことがなかったからだ。でもその一回きりで判断してしまうのはとても危険だし、その時の調子や状態がちょっといい、とかちょっと悪いだけ、かもしれない。実際「いい」と以前判断した人でも調子の悪い時はあったし、あまり良くないと判断した人も、話してみるとそうでもないかもしれないと思うこともある。そういうこともあるのだと気付けてよかった。なんでも決めつけるというのは、良くない。

その直感を使っていた時期、ある人に会うと「今日メイク変えた？」と聞かれて戸惑ったことがある。当時わたしは化粧をしていなかったし、質問の意図がわからなかった。後に続いた言葉が「目がいつもと違うね」だったので、ようやく理解した。その人にとってよくないことを話そうとしていたからだ、たぶん目がキツかったのだと思う。変化に気付いたことに驚きつつ、わたしと同じところを見ていたのだと親近感を抱いた。

通用しない、というかそこまで必要ではないと気付いたのは、仕事を始めてからだった。営業職で1日に何十人と顔を突き合わせていると、目で判断するのは単純に疲れた。無駄な気力を使っていた。「わたしにとっていい人」かどうかなんて関係なかった。それよりも「買ってくれるのかくれないのか」「なにを求められているのかいないのか」そこを判断する方がよっぽど大事だった。

もちろん、性格やその時の状態は目に現れるし、顔にも現れると思ってはいる。ちょっと範囲を広げて顔を見ても、纏う雰囲気でも、そんなに変わりなく判断は出来るのだとわかった。合う合わないとかは別に置いておいて、こういう人なんだな、と受け入れることが一番楽なのだと仕事をしていて気付いた。人の入れ替わりがあまりに激しいので、いちいち目を覗くのが億劫になったのが大きい。波長が合う人なんてなかなか出会わないし、出会ったらラッキーくらいに思っておいたほうがいいのだ。実際、全く違う波長の人と話すのは面白いし、発見も多い。

わたしも見てばかりいないで、少しは見られることを意識しないといけない。常にいい状態でいることは難しいけれど、努力はしよう。

新しい環境に飛び込んでまた同じことを繰り返さないよう、自戒を込めて、書いておきます。