人の声の影響力。

Aさんって賢いよね~って言いだすと、Aさんのやることなすこと賢いという話題となる。
Bさんってスポーツ万能だよねと言い出すと、Bさんのスポーツ万能具合が常に取りざたされる。

私も賢いなあと感動するときもあるしめっちゃ運動神経良いね、と言うときももちろんあるが、
声の大きい人ほどなのか、そのイメージで常にAさんBさんを見る傾向があるように思う。

あの人はこうだから、と分かりやすく区分していく。
その方が話の流れが単純明快で人に伝えやすいというところは大いにあり、結果人に伝えるときだけでなくその人そのものをそのように捉える癖がついているのではないか。

そして周囲はそれに影響され、ほんとそうだね、と納得していく。

私はひねくれているから、そういう人の区分分けについてとても良い気持ちで受け入れられない。

しかし結局事なかれ主義で流してしまうのだが、そういう視点の人ととはあまり接したくない。

そういう視点の人は、往々にして物おじせずに発言出来て、面白い話が出来て、遠慮なく話せるお友達が多い(ように見えて)、なんとも魅力的なのだ。
自分の姉もそうである。
だから、自分はその人たちより劣っていてその人たちの視点が正しくてその視点と違う自分の意見は、たぶん大変少数派であるのだろう。(=主張するものじゃない)と思っていた。

そしてそういう魅力的な人たちと友達になっていた。

しかしね。この歳になってようやく気が付いたんだけど、
そういう視点を口に出す人と付き合うのは疲れるのです。

ほんと今更気が付きました。自分が疲れて傷ついていることに。

もちろん人だから、この人はきっとこうだろう、と思うことはあるのは日常だと思う。
しかし、良いレッテルで話を盛り上げることと、悪いレッテルで良かれと思って注意することは、同じ人がやるんですよね。
で、でどちらも受け入れ難くなってきたのです。

話を盛り上げることも、あるシチュエーションから登場人物の感情を安易に面白く仕立て上げたりしてて、冷めた視点で聞いてしまうし、
注意することも、どこまで相手の話を聞いて違うと指摘しているのかはなはだ疑問だったりするのです。

これまでは、ずっとモヤモヤしながら接していたけど、ようやくわかったし、
書きながら、世の中そういう人の方が、知人が多く人生ワイワイ楽しそうにしている・・・と気が付きました。

やはり人間は複雑すぎるがゆえに、素直にその複雑さを受け止めていると、分かりやすく話せなくなるのですね。
そうなると、話を聞いている側は何が言いたいんだ、となる。
つまり、その時何が言いたいかはっきりしている方が、聞いている側は安心して会話できる、ということで、その安心を人は求めているということなのかもしれない。

確かに、設計の仕事でクライアントに説明するときに、耐震についてなどはこの施工方法であれば地震について大丈夫です。とは口が裂けても言えない。
また、これ出来ますか、と質問されたときに、出来るか出来ないかと問われると出来るとなるが、現場の状況や大工の腕やそれに伴う予算を考えたときにどこまで施主がクオリティを求めて予算を出すのか、によってやって良かった仕様となるのか、過剰な仕様となるのか、が測りかねたりする。
その説明はもちろんするのだが、クライアントによっては細かい話は聞きたくない方もいて、そうなると理解していないことになり結論が出ない。

施主は、出来るか出来ないか、を求めているのだから、
私が出来ません。なぜならこんなに費用がかかるしクオリティが怪しいから。と言えばいいのだろう。
しかし、プロが素人に言い切るのは、私は嫌なのです。
世の中絶対はない。
素人のクライアントの要望から新しい発見が得られることはあるし、設計者としてはそれは成長の一つとなる。
それになにより、クライアントに自分の建築だという意識で建築という行為を出来るだけ楽しんでもらいたい。

だから、今の状況で妥当かどうかと問われると。といったお話になってくる。

それで良いのだと思う。

過去の時代は、言い切って分かりやすくグイグイ進んでいく時代であった。
でも今は情報が個々ですぐに得られて、環境が多様であることが可視化されてきて、一言で言い切るのはむしろ短絡的で危険であるということがようやく広まってきたように思う。

その中でも、分かりやすく表現して成功体験を積んできた個々人は、そういった視点で人の気持ちを判断し物事を整理し話をすることはやめられないだろう。
そして私はそういう人たちを避けて生きることは到底できない。

だから、気分が悪くなった時は、その言葉は受け止めないようにして頭と気持ちを切り替えていくことが大事。

複雑さに抗わず、分かりやすさに飛びつかず、知らないことに壁を作らず、社会の中で生きていきたい。

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