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ダディクールAAでスタートする、2022年によく聞いた音楽について話す記事


自分は今年の4月に出身地の香川を出て東京で一人暮らしを始めたのですが、一人での生活に馴れない事もあって気分が落ち込み中々音楽を聴く気になれない日があったり、その反面東京に来た事で今までは行けなかったようなイベントやライブに手軽に足を運べるようになったりレコード屋に通ったり、何かプラマイゼロな感じの音楽ライフを送った1年でした。
そんな自分が今年聴いて良かったアルバムやライブについて、拙くて短い文章ですが書いてみます。アルバムに関しては殆どが「2022年に出たアルバム」では無いので、年間ベストアルバム的な記事とは少し違います。新譜を追うという事を自分は全くしないのだけど、やはり良くない気がする…

神聖かまってちゃん「つまんね」、「みんな死ね」

今年は神聖かまってちゃんばっかり聴いてた1年でした。なんと、1日に2つまんね (CDとデモ版)をした日もあるぐらいです。
自分は中学生の時に90年代のサブカルチャーに触れて強く影響を受けたせいで未だにアイロニカルな態度を捨てきれず、中3の時にレンタルビデオ屋で「友だちを殺してまで」というタイトルのCDが並んでるのを見ても「ケッ」としか思わなかったのですが、ele-kingで「つまんね」と「みんな死ね」がE盤 (推薦盤)に選ばれているのを知ったり、Instagramでフォローしている海外の音楽レビューアカウントがちょくちょく「つまんね」に言及しているのを見たり、Twitterで交流のあるフォロワーのみ (@hatenasign)が神聖かまってちゃんの話をよくしてるのを知って聴いてみました。
最初は「みんな死ね」を聴いたけどあまり面白いと思えずに「ベイビーレイニーデイリー」で辺りで聴くのを辞めてしまい、そのしばらく後に「つまんね」を聴いたら2曲目の「天使じゃ地上じゃちっそく死」に衝撃を受けすぎてそればっかり聴いていました。全然アルバムを通しで聴けてない…
結局「つまんね」を全て聴いたのは6月の後半になるのですが、音にも歌詞にも衝撃を受けました。アルバムの殆どを覆っている諦めを充満させたような雰囲気 (「美ちなる方へ」や「笛吹き花ちゃん」はまた違うけど)、ボーカルは過剰にエフェクトをかけたものから突き刺すような叫びまで、童謡のようなメロディと語り口の曲もあればインストの曲もあり、多彩だけど決して色鮮やかではない作品で、東京での慣れない一人暮らしに心をすり減らしていた自分にとっての最良のサウンドトラックを見つけた気持ちでした。
「みんな死ね」は夏休みに実家に帰っていた時に、TSUTAYAでレンタルして聴きました。どの曲も好きなのですが、「ねこラジ」「最悪な少女の将来」辺りは初めて聴いた時からハマって、何度も聴くうちに「スピード」「男はロマンだぜっ!たけだ君」「いくつになったら」「口ずさめるように」等の最初はあまりピンとこなかった中盤〜終盤の曲も好きになりました。
最近はこの2枚のアルバムに加えて「夕方のピアノ」「夕暮れメモライザ」もよく聴いています。
これ以上神聖かまってちゃんについて語ってもキモくなるだけなのでここら辺にしますが、中学生の頃の「ケッ」と思ってた自分や自分と同じような偏見を持ってる人にも是非聴いて欲しいバンドだと思います。

Kuknacke「iZombie, FAQ U ALL!!」

レコードショップ「パリペキン」やレーベル「不知火」「360° Records」の主催、また今年は変名の「Jigen」の音源がアナログで再発されるなど何から語れば良いのか分からない程の多岐にわたる活動で知られる虹釜太郎氏が架空のゾンビ映画のサントラという設定でリリースしていたシリーズで(おそらく)唯一の虹釜氏以外による作品がこのククナッケ氏による「iZombie, FAQ U ALL!!」です。
ククナッケ氏は「Speaker Breaker Breaks」や「ESP」(後者はサブスク配信中、渋谷TSUTAYAでレンタルもできます)等のアルバムや自身のレーベル"forest fire"からのmix CDのリリース、UAのRemixや桃井はるこの作品への参加で知られるミュージシャン、DJです。
この作品については、Los Apson?の店長のヤマベケイジ氏が「遊園地的ミラクル・ミックスもの」というこれ以上ない程の的確な言葉で言い表しているので自分が言う事は特にないのですが、ククナッケ氏の「大怪獣ゲドム」というこちらもまた架空のお正月映画のOSTという設定のmix CDと同じ曲が使われてる箇所があり、映画の監督が一緒なのかな、お気に入りの曲なのかな~と自分まで妄想が膨らんでしまう素晴らしい作品です。

坂本慎太郎「物語のように」

3rdアルバム「できれば愛を」以来、6年ぶりにリリースされた坂本慎太郎の4thアルバム「物語のように」。個人的に最高傑作と思っている「ナマで踊ろう」のような暗さは控えめで、本人もインタビューで言っている通り「重くならずに、なるべく楽しい感じ」「夏休みの最初の日っぽい」という雰囲気のキュートで楽しくなるアルバムです。(「それは違法でした」は明らかに例外だけど) 自分は表題曲の「物語のように」を最初に聴いてた時はうーんって感じだったのですが、次にMVが公開された「ある日のこと」で良いじゃん!と思い、最近やっとアルバムを聴いて、聴き終わった時はメロメロになってました。リズムボックスの音、最高!

ガセネタ「SOONER OR LATER」

ハイプではない、正真正銘の伝説のバンド、ガセネタが解散後の1993年にリリースした、ジャケット写真から「江夏」という通称でも知られるアルバムです。
リリースの経緯としては、解散後の1992年にベースの大里俊晴がバンドの自伝的小説「ガセネタの荒野」を他のメンバーに無断で出版したのに対してボーカルの山崎春美が怒り、対抗する形でこのアルバムをリリースした.…といった感じで、帯には「ガセネタの荒野」に対する皮肉めいた文章も書かれています。
で、このアルバムの素晴らしいところは何といってもここまで名前が出てきていないギタリスト、浜野純の「クスリ臭い」とも評されるような無茶苦茶なギターです。連続射殺魔や不失者といった錚々たるバンドにも参加しておりながら、現在は音楽活動から身を退いており消息も不明というのもその刹那的な音に説得力を持たせています。個人的に北田昌宏と何か似たところが多いように感じますね、どっちもカッコいいし。ガセネタのwikipediaは何故か内容が滅茶苦茶に充実しているので興味のある方は読んでみるのをオススメします。

DJスカイハイ斉藤 & VJ 奇怪電波倶楽部 - #digitaloffline 221029 neverendingsummershoegazeset at 幡ヶ谷Forestlimit

11月の前半頃の自分はメンタルが終わっていて、大好きな音楽を聴くことさえままならなかったのですが、何となく聴いたこのmixは本当に素晴らしくて、大袈裟じゃなく音楽を聴く喜びや面白さを自分に再発見させてくれたものでした。
DJスカイハイ斉藤とは門脇綱生さんとカルトさんによるDJユニットで、このmixは2022年10月29日に開催されたイベント「digitaloffline」にビデオ出演した際のアーカイブだそうです。門脇さんが提唱している「遠泳音楽」をものの見事に体現している名作だと思います。どの曲も素晴らしいですが、個人的に一番大きな衝撃を受けたのはアメリカ民謡研究会の「私はずっと笑顔だったし朝の占いだって悪くないきっと今日も大丈夫良い一日になりますように。」です。あとずんだもん。

坂本龍一「async」

2017年の作品なのに、何故か今年やたら聴いてた1枚。けつカラの津山さんも好きらしいです。「非同期」をテーマにした坂本龍一の作品で、メロディーはかなり排除されているというのに1曲目の「andata」で毎回鳥肌が立ってしまいます。「fullmoon」も素晴らしい。あと、何度も聴いてるうちに意外とバラエティに富んでることが分かってきました。2000年代に発表したアルバム「Chasm」を「何でもかんでもやりすぎ」といった風に批判している文章を以前どこかで読んだけど、それは「千のナイフ」や「B-2 Unit」の頃から今まで変わってないんだろうなぁ。新作が楽しみです。

Video-Aventures「Oscillations」

Les Batteries「Noisy Champs」

洋楽が全然無かったので、ここで2枚まとめて紹介します。
Video-Aventuresは1980年代のフランスのユニットです。自分はこういったアナログシンセをただひたすらに弄りまくってるような音楽が大好きなので、このアルバムはドストライクな1枚でした。各種サブスクで聴けます。
Les Batteriesもフランスのグループで、なんと全員がドラムという異色の編成です。タイトルに「Noisy」と入ってますがノイズミュージックではなく、こういったアヴァンギャルドな音楽にありがちな取っ付きにくさもない良いアルバムでした。余談ですが、自分はこのバンドを「Die or D.I.Y.?」という海外の有名なブログで知ったのですが、そのブログでは少し面白おかしく紹介されていて、コメント欄でそれにキレてる人とブログのライターがレスバトルしてました。

E Y E  NTS Radio 2022/8/19

開始1分で即宇宙なmix。最高。とにかく聴いてみてください!

砂原良徳  SUPER DOMMUNE 2022/1/1

年末から年明けにかけて行われたDOMMUNEでのCornelius/小山田圭吾特集。自分は一番見たかったCorneliusの音楽について話すプログラムを寝てて見逃してしまい目が覚めたらカウントダウンが始まっていたという2021年最後の失態を犯したりしつつ、楽しみにしていた砂原良徳のDJを見ました。それは「どんな選曲するのかな、何かレアな音源とか聴けるかな」と事前に考えていた呑気な自分を裏切る、30分を「Point of View Point」1曲のみでプレイするという型破りなものでした。雑踏の音から始まり、「Point of View Point」(点=個の視点)を30分ひたすらエディット&ループさせて、「THANK YOU FOR MUSIC」のカットアップ/コラージュ部分をかけて終了というかなりメッセージ性の強いプレイに、砂原良徳のカッコよさを見た気がします。

toulavi  K/A/T/O MASSACRE vol.360 2022/2/16

K/A/T/O MASSACREという幡ヶ谷のFORESTLIMITでやっているイベントがあり、自分は存在を知ってからはよくTwitchの配信で見ていて「東京に住みだしたら絶対に行こう!」と思ってたけれど結局今年は行けませんでした。(400回目記念の時に行こうとしたけど、会場が海辺と聞いて「海辺!?」となってしまい行けなかった)
で、これは2月なんでまだ香川にいた頃に配信で見たtoulaviさんという方のLIVEなんですが、ラストに「さよならを教えて」の主題歌をかけて、何か、熱いメッセージを叫んでいて、自分の記憶があいまいなせいで読んでる方には上手く伝わってこないかもしれないけど、その時の自分は本当に食らって「真摯な表現というものは人の心を打つんだ」と強く思ったのを覚えています。

Kenji  powwwerrr 2022/1/30

まだpowwwerrrというイベントについてもよく知らない頃で、Kenji氏の名前を知ったのもこの時が初めてというにわかっぷりでしたが、配信で見てノイズ混じりのエクスペリメンタルな音、暗いけどそれだけではない詩、あらゆる「よく分からない」を集めたような映像が一体となっていてそのカッコよさに圧倒されました。「シンジくん、日本語を話せるけど、真実を話せないから、僕らの足跡はアニメにもなれないね」という一節は特に衝撃的で、未だに思い出します。

GEZAN, 5lack, KILLER-BONG at Spotify O-EAST 2022/8/11

東京に来たのでそれなりに色んなイベントやライブに足を運んだのですが、このライブは特に良かったです。まずKILLER-BONGのオープニングDJから素晴らしく、90'sのオーセンティックなヒップホップに絶妙なエフェクトをかける事で、RP BooやEQ WhyなどのJuke/Footworkと混ぜても全く違和感がないという凄すぎるプレイでした。
そして「No War 0305」のドキュメンタリーでちょっと見たぐらいしか事前知識が無かったGEZANは1曲目からギター、ベース、ドラムだけじゃなくバグパイプやディジリドゥまで持ち出し、ボーカルのマヒトゥ・ザ・ピーポーは「コロナの中心で愛を叫ぶ」と怒鳴るように繰り返すという物凄い熱気を感じるパフォーマンスで、その後も対バン相手の5lackの名曲のタイトルである「feel29」という声をループさせる遊び心あり、KILLER-BONGのラップ&シャウトあり、「END ROLL」ではバックに流れる後ろの美しい映像も相まって泣きそうになりました。全然知らないバンドだったのに。
そんな2組の後でも5lackはバックDJにPUNPEEを迎えていつも通りの飄々としたステージングを見せてくれてこちらも素晴らしかったです。自分があまりハマれなかったアルバム「Title」からの曲が多かったけど、ライブで聴くそれらの楽曲はとても格好よく、アルバムをもう一度聴き返そうと思えました。最後は今年発売された白い円盤シリーズから5lackの新たなクラシックになるであろう「39hour」を披露しステージを去ってライブ終了…かと思いきや最初にバックDJでミスをしまくったPUNPEEがお詫びという事で「Wonder Wall feat. 5lack」を2人で披露しました。非常に満足度が高く、それでいて楽しい気分になって帰れるライブでした。本当に良かった…

秋山勝彦「adolescense」

12月の初めからこの記事を書き始めていて、当初はGEZANと5lackのライブの話で終わるはずだったのですが、最近買って聴いたこのアルバムが余りにも良かったので最後に紹介させて頂きます。
P-MODELのベーシストやHere is Edenのボーカルだった事で知られる、秋山勝彦によるソロアルバムです。
P-MODEL「LANDSALE」のラストに収録された名曲「地球儀」の路線を拡大させたようなアルバムで、実際にボーナストラックとして「地球儀」がアレンジを加えられたうえで再録されています。
ピアニカやアコーディオンのような音のシンセサイザーと簡素な音のリズム、そしてそっと歌われる読書家の秋山氏らしい綺麗な言葉による切ないラ歌詞、それらの要素が絶妙な配分で組み合わさり今の秋山勝彦にしか出せない魅力が詰まってます。
「マラカスの人」みたいな印象しか持ってない人がいたら、是非聞いてそのイメージを一新させて欲しい!

あと曲単位で好きだったのはCornelius「Another View Point」のライブバージョン (世界の民族音楽からスタートして数々の伝説的なミュージシャンへと時代順に細かくカットアップされた音と映像を流しながら演奏する。初のお披露目となったFUJIROCKではあれだけ一緒に仕事してるYMOの映像が入ってなかったけど、次のサマソニからは入れてたのでシンプルに忘れてたんだと思う)、Marica「せかいにさよなら」 (ゲーム「ユメミルクスリ」の主題歌。自分の尊敬する人がツイキャスで流して、もう1人の尊敬する人がサビの一部分だけ歌ってるのを聴いて好きになった)、クララサーカス「ルンペンとラプンツェル」 (知久寿焼がカバーしているのを聞いたのがきっかけで原曲も聞くようになった。宮沢正一「キリストは馬小屋で生まれた」もそうだけど、知久寿焼がカバーする曲っていい曲が多い) の3つです。

今年はあまり自分の知らない音楽を聴かずに既に知っている音楽ばかりを何度も聴くことが多くて、それはそれで良い事かもしれないけど、やっぱり自分はまだまだ冒険的に音楽を聴きたいので2023年はもっと貪欲なリスニングが出来るように心がけたいです。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました!


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