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T家の日常 放任主義ですみません

うちの娘が通う中学校には、二泊三日の移動教室 がある。
臨海学校とか、林間学校とか、そういうものだ。

どうやら、今週の水曜日に出発のご様子。
今日は月曜日。昨日、足りなそうなものは買ってきた。特に問題はない、はず。
「ご飯食べたら準備しようっと」
彼女も余裕だ。のんびり遊んでる。
こんなときこそ、注意が必要だったのだ。
油断しては、いけなかったのだ。

食後。どうやら、自室で準備を始めた模様。
間もなくして、リビングに戻ってきた。
「ねぇ、袋、ちょうだい」
出た。やはり油断してはいけなかったのだ。
「…袋?何入れるの?どのくらいの大きさのを、何枚欲しいの?」
「ええと…」
一緒にしおりをみてみる。
「表紙は〇〇ちゃんが描いたんだよ。上手いよね」
確かに上手いが、そんなところを見たいのではない。
持ち物は、横並びにずらずら書いてある。見づらい。読解力をつけるため、敢えてこんな書き方をしているのだろうか。
「見てみな。1日分を一つの袋にいれて…」
「そうそう」
そうそう、じゃないんだよ。
「洗濯するものはこっちの袋に入れてね…」
こういうのを自分でできるようになって欲しいのよ、お嬢さん。

「明日、大きいバッグは、学校に持って行くんだよね」
また、ぶっこんできた。だったら、土曜日にはある程度準備しておくべきだったのでは。
「ああっ、昨日買ったズボンが入らないっ」
サイズ、見なかったの?試着、しなかったのね。
「持って行こうと思ってたズボンが、洗濯して干されてるっ」
そりゃ、履いたんだから、洗濯するでしょーよ。明日には乾くから待っとけよ…。
これは、先が長そうだ。

「できた、かな。まあ、こんなもんでしょ」
時計は、とっくに日をまたいでいる。が、何とか荷物はまとまったようだ。
ちょっと得意げな表情に、苦笑が漏れる。
もっと早めに、一緒に見てやんなきゃいけなかったのかな。放任主義ですみません。

「あとは、これだね」
指をさしたしおりには「お小遣い3000円程度」とある。
「程度、ってことは、もう少し多くても良いんだよね」
「いや、3000円でいいでしょ」
何で中途半端な書き方をするんだ。自主性でも育てようというのか。何か、違うんじゃない?
「ほら、3000円ね」
「…ありがとう」
受け取った彼女は、少し不満そうだ。消費税10%くらいつけろとでもいうのか。
だが、この境界を越える気はない。
そして、今度こそ、準備完了、のはずだ。もう中学生が起きてる時間ではない。
「何かね、お家にお土産を買ってきても良いらしいんだよ」
彼女なりのフォロー、感謝の気持ちなのだろうか。
「そんなの気にしなくていいよ。楽しんできて」
「いや、大丈夫。もう、調べて決めてあるから、お土産」
「…」
そういうところの準備だけはしっかり終わってるのかよ。
フラフラとべつ向かいつつ、こいつは大物になるかもしれん、と思いながら、ベッドに倒れ込むのであった。
「でもやっぱり順番が違うんじゃねーのかー!?」
この叫びが、ちゃんと言葉になったかどうかは、定かではない。

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