MOKUZAI WARS episode 2
「木材の逆襲」
文:大川直也
大雨の車外に出て智之と少し話をした。元気だった。近況報告のような会話を済ませ、木材の現物を見せてもらった。思っていたより二倍大きい木材の山の上に、「心配」と「不安」が鎮座していた。智之が事務所から呼んできたフォークリフトのドライバーさんが木材の束を軽々持ち上げる。軽トラの荷台に積む。冗談みたいに荷台が沈む。「心配」と「不安」はまだ鎮座している。いよいよ無視することが出来なくなってしまった。急に不安になった。急に心配になった。弟を見ると、今さら何を言っているんだ、みたいな顔をした。
過積載ギリギリの積み荷を走行中に落としでもしたら大変なことになる。マリオカートみたいな話じゃ済まされない。買ってきたロープで縛ろうとする。木材は荷台にうまく固定されない。ちゃんと調べてきたのに、ウィキペディアで。やっぱり過去に戻れるならこいつを説教しようと思う。
困っていると智之が会社の積みに担当のおじさんを連れてきてくれた。優しそうな笑顔のおじさんはみるみるうちにロープで積み荷を縛ってくれた。積み荷はガチガチになった。「新品のロープじゃね、こんなもんだろう」と智之にむかって苦笑いを見せていた。会社の人と談笑する智之を見るのは不思議な気分だった。
荷造りが終わると、会話もそこそこに帰路についた。会社を出てすぐ智之は、気を付けてねとメールをくれた。リノベーションを手伝うよとも言ってくれた。そうだ、こういう感じだった。また1年しないうちに会えるといいな。軽トラは最徐行で牛乳ビルにむかった。
[つづく]
※この記事は全文無料の投げ銭コンテンツです。投げ銭はまだまだ完成していない牛乳ビルのリノベーション資金となります。
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