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3月7日のリノベーション

文:大川直也

またしても朝から雨が降っている。
仕事を終えて、昼過ぎにくいしんを駅に迎えに行った。ホームセンターでマスキングテープを買いに行く。前回ペンキの試し塗りをして、いよいよ壁と床を一面真っ白に変えるペンキ塗りの準備をはじめた。

地味な作業が続いて、やっと大きく見映えの変わる作業ができる。牛乳ビルに到着して、ステンレスの窓枠にマスキングをする作業をはじめた。磨いたステンレスにペンキがついてしまわないように、マスキングをして、テープがはみ出したところをカッターで切る。これが終わればいよいよペンキ塗り。ひたすらテープを貼る。テープを貼る。壁の釘も抜く、ペンキ塗りの邪魔にならないように。ひたすら釘を抜く。釘を抜く。

驚愕した。あまりの地味さに。ペンキ塗りが待っているとはいえ、準備があまりに地味すぎる。くいしんはマスキング、僕は釘抜き。作業を分担して進める最中、会話はほとんどなかった。あまりの地味さに軽く引いてしまい、喋ることができなかった。

地味さのおかげと言おうか、地味さゆえにと言おうか、17時の日没までにほとんどの作業を終えた。僕とくいしんは無表情で牛乳ビルを後にし、スターバックスに寄って帰路に着いた。

リノベーションの9割は地味な作業が続く。雑誌の誌面や夢で見た楽しい薔薇色のリノベーションは最後の、本当に最後の最後に待っていてくれているんだろう。

車を運転しながら飲んだ大好きなチャイは、いつもより、妙に甘かった。僕は、無表情だった。

※この記事は全文無料の投げ銭コンテンツです。投げ銭はまだまだ完成していない牛乳ビルのリノベーション資金となります。

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