『さいしょのリノベーション@牛乳ビルその6』
その5はこちら
https://note.mu/torches/n/n6d14399790de
文:守屋佑一
2014/11/15(土)その6
屋上で廃品回収のおじさんを待っている間に、僕の携帯電話が鳴った。画面には電話帳に登録していない番号が表示されている。
いったい誰だろうと電話に出てみるとそれはおじさんの前に電話をした牛乳ビルの前の入居者の人だった。
僕は事情を話すと、その前任者の方は申し訳なさそうに謝ってくれた。悪い人ではなさそうだ。
なんでも、急ぎで引っ越しをしなきゃいけなかったらしく、牛乳ビルの大家さんから、もうこのビルは人に貸す予定はなさそうだという話も聞いていたのでついついそのままにしてしまったらしい。
たまたまこの日は予定が空いていて、持って帰りたいものもあるということで手伝いにきてくれることになった。
人手は少しでも多い方がいい。むしろいくらいたって足りないくらいだ。
遠慮なく、手伝ってもらうことにして、廃品回収のおじさんと前任者の到着を待った。
先に前任者がやってきて、すぐあとにおじさんがきた。
僕は前にも書いたように、絶対にデスクやロッカーを外に運び出すのは無理だと思っていた。
予想通りおじさんはビルの惨状にびっくりしていた。
でもおじさんはこれならやりようがある、と言って一度トラックに戻り、なにかを手にまた階段を登ってきた。
おじさんが手にしたものを見て僕らは目を疑った。
それはとても重そうな、巨大な鉄の棒だった。
まるで、漫画やゲームの世界で戦士がモンスターを倒す時に使う武器のようで、体の大きなおじさんにとても似合っていた。
でもいったいその棒でなにを始めるのだろう。疑問に思う僕たちに気づきおじさんはすかさず説明をしてくれた。
「このままじゃ運べないから、運べるサイズにしてあげよう。」
そう言っておじさんはデスクに向かってその巨大な鉄の棒をちから強く振り上げた。
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