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『あれ?いうほど美味しくない??』と思ったら、試していただきたい、あれやこれや

この記事は、これまで、ミールスを召し上がっていただいて「あー、美味しい」と思っている方は、読まなくてもいいかもしれません。
だって、ミールスの食べ方って、その人それぞれでいいと思いますし、これが正解なんてものもないと思いますので。

ただ、なんというか『それじゃ、美味しくないだろーよ』と思うパターンもあるのですよ。見ていて、ハラハラというかドキドキというか。まぁ、でも、横からあれこれ言われるのも、召し上がっている方からすると鬱陶しいと思いますし、悩ましいところです。

というわけで、前置きが長くなりましたが、ミールスの食べ方について、お伝えしたいことをいくつか挙げていきます。

まず、第一に、声を大にして言いたい!
「ライスを白いままで食べるのは、極力避けた方がいい」

とら屋食堂では、ランチミールスには“あえて”バスマティライスを使っていません。
もう一度言います。
ランチミールスには“あえて”タイ米を使っています。

しかも、炊き方は「湯取り法」、大量の水で茹でるようにして仕上げます。
日本人が米に対して抱いている「もちもち」「ツルツル」「ピカピカ」「甘味」「旨味」なんぞというものは、全てお湯の中に置いてきているのです。

ですから、単独で舌の肥えた日本人の米評価に耐えられる状態のライスではないのです。それを、不味いだの、ボソボソしているなんぞというのは、はっきり言ってライスが可哀想すぎます。
ランチミールスにおけるライスの位置はパレットです。パレットに過分の個性があったら、上に載せる野菜のおかずたちの繊細な魅力が損なわれてしまう、そう思って、あえて没個性化するように調理しています。

パレット(ライス)の上に絵の具(おかず)をのせて、ご自分の好きな色を作っていくのが、とら屋食堂のミールスの楽しみです。
パレットだけをじっと見ていても、ちっとも楽しくないように、能動的に楽しんでいただくことで、ご自分が最も美味しいと思えるお料理に近づくことができます。

もちろん、おかずだけをひとつひとつ食べていくのは、ちょっと、いや、かなり残念な食べ方だと思います。あ、パパド(ライスの上にある揚げせんべい)におかずをのせて食べるのも、絶対やっちゃダメだとはいいませんが、それで終止してしまうのは、とても残念な気がします。ワダを浸して食べるのは、大いにアリですが。

そして、慣れない方へ、さらにもう一つアドバイスがあるとすれば
「最初は、ちょっと汁だくかな?と思うくらいから始めた方がいい」

先に書いた通り、ライスはわざわざパラパラボソボソに仕上げています。ここにおかずがのっかって、初めて美味しい状態になるのです。
白いご飯の上に、汁物をかける(しかも皿状の食器の上で)というのがハードルが高いのはよく理解できます。が、そこが一番大きくて、でも重要なところです。

先にお伝えしておきますが、よく言われる「全混ぜ」というのは、最初はお勧めしていません。
全混ぜというのは、ライスの上に、カトリ(食器)の中に入っているおかずを全てぶちまけて、ぐわーっと混ぜることを指します。
何より、いったん全部を混ぜてしまうと、もう戻れません。新しくライスを投入して仕切り直しするくらいしか手はなくなってしまうので、よほど体力と食欲に自信がある方を除き、できれば、少しずつ、重ねていく方がおすすめです。
重なっていった先に、最終的に全部混ざった部分ができる、というのが美しいと思います。
もちろん、とらさんが献立を考える時には「全てのおかずが混ざった状態で美味しい組み合わせ」を基準に考えていますので、一口ずつ全部を重ねたバージョン(ワダを除く)は、一度は試していただきたいと思います。でも、その重ね方にも好みはあるはずです。
野菜のおかずには、それぞれ違った方向の味わいがあります。どれをどのくらい加えたものがご自身の好みに合うのか、そのあたりはおひとりおひとり違いますので、試行錯誤していくのもミールスの楽しみ方だと思います。

ここまで書いてきて、すでにお気づきのことと思いますが、ミールスを美味しく食べることができるか否かは、作り手側から食べ手側に委ねる部分が大きいと言えると思います。

誤解を招くことを恐れずに書きますが、面倒くさがり屋さんには向かない料理なのかもしれません。

特に、とらさんが作るベジミールスのおかずたちは、味付けもおとなしく、一つ一つはインパクトに欠けるものかもしれません。化学調味料や肉・魚介、出汁なども使っていませんので、とてもシンプルです。
だからこそ、いろんな組み合わせにより、無限の可能性が生まれるのだと思います。

ぶっちゃけ、チキンカレー、ヴィンダルーなど、南インド料理のノンベジのおかずの美味しさは格別です。私も、もちろん大好きです。もう、何も考えなくても、ただご飯にかけて食べるだけで、美味しいです。
ノンベジのグレイビーソースと、あの香り高いバスマティライスが絡まる様子を思い浮かべるだけでも、お腹がなりそうです。

また、いわゆるスープカレー、創作カレー、あとお家のルーカレー、それぞれの美味しさはもう今更説明するまでもありませんが、それらとミールスとを一緒のジャンルにまとめることに、ちょっと無理があるように感じます。
どっちがどう、というわけではなく、もう別物だと思っていただいた方がいいと思います。

また、ミールスといっても、これまた一括りにできないのも現実で、例えば、西荻窪駅の周辺だけで、3つの南インド料理店があり、それぞれミールスを提供していますが、それぞれ全く違います。
なので、ここでいうミールスは、あくまでも「とら屋食堂とらさんのミールス」です。もしも、お口に合わなくても、「ミールス」を嫌いだと決め付けずに、他のお店に足を運んでいただければ、きっとご自身の口に合う「ミールス」は見つかると思います。

とはいえ、今、とら屋食堂に足を運んでしまい、そして、どうやら口に合わないのかも、と思ってしまっているあなたへのアドバイスです。
「アチャールを活用してみる」
アチャールというのはインド版ピクルスでとら屋食堂でデフォルトでついているのは、若いマンゴーのアチャールです。辛くて、しょっぱくて、そして酸っぱいです。つまりは、インパクトがあります。
これをライスに混ぜつつ、他のおかずを加えていくと、おとなしかった味わいが豹変します。試してみる価値は十分にあると思います。
足りなければ、お声がけください。アチャールをおかわりする方は他にもたくさんいらっしゃいますから、したからといって、「あら口に合わないのを誤魔化してるのかしら」なんてことは思ってもいませんから、大丈夫です。

それでも、どうにもならない場合は、追加料金が発生しますが、オプションをオーダーする、という奥の手もあります。
牡蠣のアチャールなんて、牡蠣好きさんならぜひ試していただきたいものですし、それだけで、ご飯が食べられるという方もいらっしゃるくらいです。
他にも、お時間をいただければ、ノンベジのガツーンとしたおかずもご用意できたりします。

ただ、他店によくあるベジ+ノンベジのプレートを、どうしてとら屋食堂ではやっていないか、ということも理解していただけると嬉しいです。
バスマティライスを使わないのと同じ理由です。
ただ、そこにいるだけで、圧巻の存在感を醸し出すノンベジのおかずを前にすると、野菜のおかずたちはどうしても脇役になってしまうのです。
なので、あえて、彼らを主役にしたい、そう思って、作っています。

最後に、私の拙い文章では伝えきれなかったものを補うべく、ミールス愛の熱さと深さでは、誰にも負けないおふたりの記事をのせておきます。

まずは、私たち夫婦が最初に出会った南インド料理は、この方が作るミールスでした。
ケララの風モーニングの沼尻さん
(今はミールスの提供はなく、ティファンのみとなっています)

そして、「ミールスの食べ方」そして、楽しみ方を丁寧に丁寧に解説した
エリックサウスのイナダシュンスケさんの記事

あわせてご覧いただけると、ミールスの深さ、面白さに触れていただけるのではないかと思います。



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