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図南の翼 - 小野不由美

皆様ご存知十二国記シリーズの一冊です。

簡単に世界観を説明すると、どことなく中華風なファンタジーです。
どこかの「別の世界」にある12の国を統べる王様達のお話。

麒麟という人の形をした神獣が天意に沿って王を選び、選ばれた王は善政を敷き続けるかぎり500年でも600年でも生きる。ただ、王となり国を預かった以上、悪政を敷くと麒麟共々斃れ、普通の人としての死は望めない。
王がいない国はそれだけで災害が起き、妖魔と呼ばれるバケモノが跋扈し、人が生きるのも困難になってしまう。

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国王が斃れて27年、荒れ続ける国と嘆くだけの大人を憂いて、たった12歳で決して人の住めない妖魔の国、”黄海”を越えて麒麟に天意を諮りに行くと決めた豪気な少女、珠晶。
それに運悪く巻き込まれてしまった、黄海で騎獣(妖魔と似ているが、人に慣れることがあるので乗り物とされる)を狩る黄氏である頑丘という男。そして、道中で出会った不思議な”旅の人”、利広。

大人がならないのなら私が王になるわ、と豪語してやまない彼女の過酷な旅は、果たしてどうなるのか?

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十二国記シリーズで私が初めて触れたのが図南の翼でした。
小野不由美さん作品は、確か最初に魔性の子を読んでそこから興味が湧いたような…?
そこからのめり込むように十二国記シリーズに手を出して、GHシリーズに手を出して。

それにしても、これを読んだ時の衝撃は忘れられません。そして、全てのシリーズを読み終えた後にこの話を読むとまたさらに感動してしまうんですよね。

気が強くて、王になるなんて不遜なことを言うちょっと生意気な小娘と思いきや、彼女は本当は結構思慮深く謙虚で、前向きで奔放で、強い心の持ち主です。珠晶のこと全然嫌いになれない。

小野さんの書くお話は本当に示唆に富んでいて、特に十二国記シリーズはそれが深いと感じます。
王様として選ばれる、というのはかっこよくて華やかな言葉ですが、王となる主人公たちは皆、数百万の命を預かり、政治と、時に官司たちに立ち向かい、ただ1人国の行く先を背負う立場として王となってからも先の見えない道を先導者として歩き続けなければなりません。

ファンタジーなのによくここまで踏み込んでいるよなあ、とか、世界観の設定の作り込みの凄さ(神の存在ありきの世界観なのに、その存在を疑うということまでさせている)、あらゆる知識の深さに小野不由美さんにはいつでも驚かされてしまう。

実は小野さんが出した本のうち数冊まだ読めていないものがあるので、本にかじりつく余裕のある間に小野さん作品を制覇してしまいたいです。

▼以下シリーズネタバレ---


十二国記は本当に、物語が展開を迎える時のカタルシスがすごい。
陽子が景国の王とわかったときや、景国の革命の手助けをする少女たちに身分を隠したまま混じった陽子が、自らが王であることを明かしたときとか。今作は犬狼真君と出会った時、その名前が明かされた時、彼女を王として迎えがやってきたとき、それから利広の正体がわかったとき。
嬉しくてドキドキして何度も同じページを読み返してしまう。何年たっても、内容を忘れていなくても、この辺の気持ちの高揚感は変わることがありません。

にしても、王を選べず死んだ麒麟すらいるとはいえ、そして珠晶がまだ幼いとはいえ、恭麒はほんっと呑気だなあ!と初見の時思いました。
うーむ。
一国を、そして他国まで巻き込む強運、それを発揮してみせた、それから沢山の見知らぬ大人と生死を共にする生活を送った彼女の旅は王になるために必要だったと感じるのですが、珠晶が決断をもう少し遅くしてたら恭麒もじきに死んでいたのでは…??
彼を死なせなかったのも彼女の運なのでしょう。にしても出会ってすぐに引っ叩かれて、その後も玉座に座った彼女によく引っ叩かれているであろう彼は、90年たってもそののんびりした性格のツケを払っているのかと思うとなかなか面白いです。

十二国記シリーズ、私は小説しか触れていないため、それぞれの見た目の情報が主に文章と挿絵のみなのですよね。アニメ版見たら少なくとも景国組、雁国組は描けるようになりそうな…。
絵がかっこよすぎて私の絵柄では合わないけど、描きたいきもちはいつでもあります。


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