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中庭同盟感想 - 衛星の軌道

GHファンの間ではかの有名な稀覯本、小野先生のゴーストハントにまつわる書き下ろしの短編が入った同人誌、中庭同盟の感想です。
そして妄想と希望的観測です。
ものすごくネタバレですので、ご留意ください。

※中庭同盟は、国会図書館に所蔵されており、無料で閲覧可能です。

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衛星の軌道

真砂子ちゃん視点のお話です。彼女の家族関係などが、彼女の視点から語られます。

真砂子ちゃんがツンケンした性格なのは、能力のせいで周りに振り回されて来たせいかなぁと思っていたし、ナルが好きなのは自分の境遇を思わず重ねていたところがあるのでは、と思っていたのですが、
改めて語られると、真砂子が頑ななのも、そうせざるを得なかったんだって思ってしまい切なくなってしまう。

真砂子は、なんかお嬢様ぽいからお嬢様と大事にされた家庭に生まれたのかと思っていたから、なんだか本当に切ない。
同情したいわけではないんだけど…。

麻衣は真砂子は自分で働いてて、大人のみんなの仲間だよね、と思っていますが、
真砂子は誰よりも家族に縛られ能力に縛られる子供なのだと感じてしまった。

子供、というのは、幼いという意味ではなく被保護者である、という意味です。望む望まないに関わらず無条件で保護される、その間の意思決定プロセスが保護側に絶大に影響される。

真砂子が早く、そこから抜け出してしまえたらいいのに。
麻衣と仲良くなって、軽口叩き合って、タカとも打ち解けたりして、綾子の姿に自分の意志と力で力強く渡っていく世界のことを覚えて、早く大人になって、「普通の女の子」でも大人に望まれた歪な形の能力者としての立場でもない、彼女の願う道を自分の手で選びとって幸せになって欲しい。

案外素直な真砂子には、きっとそれができます。


ナルに対して嫌がらせ(ナルからしたら嫌がらせであっただろう)デートを強行していたのも、彼女のプライドがさせたのではなくて、真砂子は真砂子で好きな人への接し方が全く分からなかったからなのかな。

真砂子がナルの”インナー”になれていたかどうか、私の視点ではギリギリでノーだと思います。尊敬できる能力を持った人間、そしておそらく真砂子が能力に縛られている弱者であることを感じ取っての、配慮と誠意を与えるに値する相手。

ナルは、性格悪いけど、かなり淡白だけど、なんだかんだ自分の気持ちすら定量的に測れないものを理解するのを面倒がっているだけで、案外感情の揺れを持ち合わせていると思う。
でも、そこにぶつかっていくには、真砂子は本当に不器用です。
きっとたくさん疲れていて、臆病になっていて、麻衣みたいにエネルギッシュに他人に飛び込んでいくことができない。

麻衣だって「普通の女の子」ではありません。
なるとケンカするなんて、なるとケンカする才能がないとできないと思う。

真砂子はナルじゃなくて、もっと優しくて、能力なんかあってもなくてもいいって言う、図太い人おおらかな人を捕まえて、幸せになりなよって、思っちゃうよ。

でもナルに出会わなければ、SPRに協力しなければ、麻衣と出会わなければ、彼女は「外」の世界に触れられなかったでしょう。
自分の能力で誰かを助けたい、という思いを持っていること、従順であることを無意識に押し付ける「保護者」ではない大人に仲間として扱われること、いろんな面で、SPRとイレギュラーズは彼女の救いになっていると思います。

ナルはナルで、おそらく多少はメンドくさいと思いながら、それでも彼女が真摯にナルが落ち込んでないかと心配しているのを感じ取って、わざわざ電話まで寄越したのでしょう。
「あまりにご心配いただいているようなので」。

ナルの行動が、倫理的観点から組み立てられた結果のものであれ、彼なりの親切心が働いたのであれ、電話を寄越させる真砂子の誠意は、ナルにとっても本物だったのだろうと思います。

ああまとまらない。
真砂子ちゃん幸せになって。
でろでろに甘やかしてあげたい女の子がまた増えてしまった。

▼中庭同盟は特別なので、シリーズとして検索しやすいようにタグ付けておきます。
#中庭同盟

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