この世界の片隅に

この世界の片隅に

私は広島で生まれ育ち、何もなくて川がたくさんある広島のことをそれなりに愛しています。

基本的にこのアカウントはオタクアカウントなので、あまり重い話のことはしようと思っていなかったのですが、最近この世界の片隅にを観た妹と話をして、どうしても書きなぐりたくなりました。

戦争の話となるといろいろと厄介だと思われると思いますが、映画「この世界の片隅に」の、素晴らしさと、わたしの感じた言葉にならない気持ちを書き殴るだけの乱文です。

ネタバレは配慮しております。

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そこそこ話題になった映画と私は勝手に思っているのですが、「この世界の片隅に」は戦時下の広島で、広島のはずれの港町、呉(くれ)に嫁いだ「すずさん」の日常を描いたアニメーション作品です。絵も柔らかく、主題歌はコトリンゴさん、主人公すずさんの声はのんさん(能年玲奈さん)。

かんこれ勢も、たくさん戦艦の話が出るのでその辺はちょっと楽しいかも。呉は軍港なので、たくさんの戦艦が港に見えます。楽しそうに「あれがヤマト、あっちはムサシじゃ」等旦那さんや姪っ子が説明してくれます。

予告編を貼っておきますね。
https://www.youtube.com/watch?v=kczb7IJJg0g

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−「すぐ目の前にやってくるか思うた戦争じゃけど、いまはどこでどうしとるんじゃろ」(すぐ目の前にやってくると思っていた戦争だけど、今はどこでどうしているんだろう)

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18で見初められてよく知らないけれどすずさんを好いているという男性の元へ嫁いで行ったすずさん。ほんとうにのんびりした性格で、絵を描くのが好きで、けっこうドジで、周りの人を和ませ世話を焼かれながら、物資の減っていく中の戦時下を皆でたくましくそれなりに普通の楽しみも持ちながら、生きていきます。

−「なんでも使うて、暮らし続けにゃならんのですけ、うちらは」(なんでも使って、暮らし続けないといけないんですから、わたしたちは)
時に野草を使って工夫して料理を作ったり、昔の人が考えたお腹がふくれるご飯という秘策を使ったら不味くてがっかりしたり、すずさんも周りもよく笑いながら、たくましく生きている様は思わず微笑んでしまう。

そして、少しずつ少しずつ、ごく普通の誰もが生きている生活が、変わっていく様が描かれます。

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私は広島で生まれ育ち、転職で東京へ来るまであの街でずっと過ごしてきたので、「平和学習」というものを受けています。広島は原子爆弾を初めて落とされた街ということで、かなり熱心に第二次世界大戦というものがなんだったのか、そして市民がその中でどんなものを見てきたのかを、教えてこられました。

今の広島はめっぽう普通です。よくある地方都市です。あんまり何もありませんが川が多くて人はほどほどに少なくて、いいところですよ。
原爆ドームは市街地のすぐ横にあり、平和公園はおじいちゃんが木陰で囲碁を打ってるような「平和な公園」って感じです。

呉もちょっとレトロな港町で、よく遊びに行きました。大和ミュージアムもありますよ。かなりでかいヤマトの模型があるので、一時かんこれ勢がたくさんきてくれたようです(その頃オタクだったら、いろいろ案内したのに...とちょっと残念に思う 笑)

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すずさんは、生き延びます。いろんな人を失いながら、そして新たな出会いを得ながら、戦争の終わった世界でもやっぱりのんびりとした声で、うちらには明日も明後日も来月もあるけえね、と言って笑います。そして旦那さんに「ありがとう、この世界の片隅に、うちを見つけてくれて」と言う。(これが、タイトルの由来ですね)

だから、なんていうか戦時下にもたくましく生きた女の子のいい話、というふうに思ってくれる人もいるようなのですが、8/6にすずさんがキノコ雲をみるところ、広島に暮らしていたすずさんの家族のその後の様子、「どうしてあの時ウチは、ああしなかったんじゃろ」とずっと悔やみ続けるその言葉、彼女が失ってしまったもの、そしてこれから失っていくもの...それを想像すると、その少し和やかなエンドを見ても、私はどうしても、苦しかった。

戦争は始まって終わればそれですべて解決するわけではありません。終わってからもずっと、想像を絶するほどのたくさんのものを奪いつづけていくのです。

語り部(戦争を体験した方がその体験について語ってくれます)の方々の、どうしてあのとき...どうしてわたしは...と声を詰まらせる様子がリフレインします。

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恋愛するだとか結婚するだとか子供を産むとか、それがかならずしも幸せなことと限らないのは私はよく知っているつもりです。
私自身だって、正直基本的には自分を幸せにするので精一杯です。

それでも、すずさんが生き延びてくれて、そして生きてくれて、そうやって生きてくれた人たちが私たちの命を紡いでくれたのだと思うと、子供が生まれ次の世代が育つことは、本当に大事なことなのだなと、そう思いました。
子供を持つって、本当に本当に大変なことだと思うのだけれど。


私にはすきなひとたちがたくさんいます。フォロワさんだってそうです。
だから、理不尽に大切な人が奪われてしまうことは、震災だって、戦争だって、すごく嫌だ。だから、できるだけどうしても好きになれない人(にんげんだもの、仕方ない)とはそっと離れ、好きな人を、時々ちゃんと大事であることを再確認しながら、時々は本当に自分でできる範囲の、例えば選挙に行くとか、戦争なんてどうでもいいとは思わないとか、小さなことを忘れないで生きていきたいと思います。

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恥ずかしい語りになってしまいましたね。すみません。

この世界の片隅に、音楽も映像も素晴らしいです。もし機会があったら、観てみてほしいなと思っています。

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