チョコレート事件(後編)

GABAの袋は、仏間にある仕事机の上にぽんと置いていたはずだ。

慌てて仏間に戻り、仕事机の上に目をやった。
「GABAが無い…」
私の心と体は凍りついた。

机の周囲を見渡す。
するとGABAは、仕事机の下に落ちていた。
袋は噛みちぎられ、チョコレートの粒たちが散乱していた。
その横で寅次郎は「どうしたの?」と言わんばかりに私の蒼白な顔を見ながら舌舐めずり。

寅次郎が食べたGABAはおよそ3粒。
急いでかかりつけの動物病院に電話した。



出ない。。。
この日はゴールデンウィーク。
休診日だった。

どこでも良い、とにかく診てもらえる病院を探さなければ!と必死になって電話をかけまくった。

先生「○○動物病院です。」
私「猫がチョコレートを食べてしまいました。診てもらいたいのです!」
先生「どのくらい食べたの?」
私「1cm大の粒を3粒くらいだと…」
先生「結構食べたな…」
※私、この先生の一言に言葉が詰まる

先生「どこの人?」
私「○○町です」
先生「そうすると車で15分くらいかな。その時間、休診時間だから時間外料金かかっちゃうけど…大丈夫?」
※金の問題じゃない!そんなことイチイチ聞くな!と少しイラっとしてしまったが、診てもらえるなら全然良い。
私「すぐ行きます!」

車で15分ピッタリ。
寅次郎がチョコレートを食べてから40分ほどが経過しただろうか。

病院へ駆け込み、すぐに診療台へ。
診察が始まった。

先生は寅次郎に、何かを注射した。
1分後…
寅次郎の全身が波打ち始めた。
何回か見たことがあるが、吐く前に起こる自然運動?だ。
あの注射にはそんな作用を引き起こす力があるのか。。。と大変驚いた。

嘔吐した中に、まだ消化されていないチョコレートの粒があった。
先生「ご飯食べてからすぐのチョコレートだったみたいだね。あまり消化が進んでないから問題ないよ。」

私はこの先生の言葉で号泣した。
涙と嗚咽が止まらなかった。
寅次郎がいなくなってしまったら生きていけないとさえ思った。

「良かったですね!」
今思えば、アラフォーのおじさんが、20歳くらいの若い女性看護師に慰められる姿は滑稽だったろうな…と思う。

診察料(時間外料金も)を支払い、心からの感謝を伝えて帰路についた。

寅次郎、本当にごめん。
俺が不注意だったばっかりにこんな想いをさせてしまって…

それから我が家ではチョコレートの取り扱いにはとても敏感になった。
愛猫家の皆さん、既に注意なさっていると思いますが、猫が食べてはいけないものの扱いには充分注射しましょう。



ちなみに、ビックプロジェクトの企画書はこの事件もあり精度が120%に満たず落選。
いや、この事件のせいではなく、自分の企画力が未熟だったのだ。