出会いの日 #04
捜索開始からおよそ4〜5時間ほど経っただろうか。
ついに赤ちゃん猫の姿を捉えることができた。
暗い床下を照らした懐中電灯の光に、猫特有の眼がキラリと反応したのだ。
このとき、私の心には3つの感情が順番に湧き上がってきた。
ひとつめ。
安堵の感情。
「ようやく見つけた…。」
探しても探しても姿を捉えることが出来なかった捜索対象に、少し苛立ちがあったかもしれない。
ふたつめ。
恥じらいの感情。
洗面所という見当違いの場所に狙いを定め、勇猛果敢なレスキュー隊気分でチェーンソーを振り回していたが、違う場所から発見されたことが少し恥ずかしかった。
みっつめ。
これはもう、○○の感情と表現するに適した言葉が見当たらない。
「かわいい…」
私の第一声を聞いた妻は、後で聞いた話だが、
「あー、これは飼うことになるな」
と、そのとき悟っていたらしい。
様々な感情が一気に押し寄せたが、間髪入れずに次の問題がやってきた。
「どうやって拾い上げようか」
野菜室は狭く、私や妻では中に入れない。
そして赤ちゃん猫の間には2mほど距離があり、手が届く範囲ではない。
(ちなみに4年経った今も、私とこの子とのソーシャルディスタンスは変わっていない。妻にはピッタリ添い寝するのに。)
そこで、モンプチの柔らかいご飯を野菜室の入り口付近に置き、再びご飯で釣る作戦を決行した。
次回以降どこかで書くが、我々が見た最初のうんちには木屑が混じっていた。
とにかくお腹が空いていたのだろう。
そして、泣き続けたことでもっとお腹が空いたのだろう。
赤ちゃん猫は、ヨタヨタ歩きながらご飯に寄ってきた。
しかし、猫は人との間合いを計るプロ。
ご飯まで近寄ってこない。
床に寝そべって頭を野菜室に突っ込んだ状態では手が届かない。
ここで、本当の意味でのレスキュー隊が現れた。
我が家の騒動をずっと見守ってくれていた向かいに住むおばちゃんが、
「なおくんでは入れない。私が入る。」
発した言葉が私の耳を通過するよりも早く、おばちゃんは腕まくりをして野菜室へ入っていった。
これぞレスキュー。
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数分後。
埃まみれになったおばちゃんの腕には、
小さく、泥だらけで、手に持つと壊れてしまいそうな、
それでも強く生きる意志を持った赤ちゃん猫がいた。