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ライトゴロを防ぐ方法はあったのか? 7/20阪神-広島戦

2024年7月20日 阪神対広島戦でのこのプレーが議論を呼んでいる。

無死1・2塁。平凡なフライをライトが落球。1塁ランナーは2塁にスタートを切れずセカンドでフォースアウトとなり記録はライトゴロとなった。

私が現地で見て感じた結論は以下のとおりである。

・1塁ランナーがハーフウェイで待機していても、2塁で封殺された可能性は高かった。

・しかし、1塁ランナーがハーフウェイから適切に打球を判断し動いていれば、2塁に進塁できる確率が可能性は低いながらも残せたかもしれない。

詳しく見てみよう。


まず、無死もしくは1死で打者がフライを打った時の走者がとるべき動きは以下の通りである。

a タッチアップするために元の塁に帰塁する
b タッチアップが無理な打球ならハーフウェイで待機する。野手がダイレクトに捕球すれば元の塁に戻る。正規捕球できなかった場合は先の塁へ走る。

今回はライトやや前方への飛球であり、明らかにbである。

ここで再度動画を見てみよう。打球が上がった瞬間に1塁ランナーはハーフウェイまで自身の位置を進めている。

この位置ならダイレクトに捕球されたとしても1塁へ安全に帰塁することができる。一方、落球した場合は2塁への距離が近くなり進塁できる可能性も残せる。

このあと、ライトが落球する。この時、1塁ランナーはライトが落球した瞬間に2塁方向に走るのがセオリーである。

私はスマートフォンで野手を追いながらランナーの動きを肉眼で確認していた。実際にはこのような流れであった。

ライト:捕球体制に入る→落球する→拾って送球体制に入る
1塁ランナー:外野手が落球して拾って送球体制に入る直前まで1塁方向に走っていた

おそらく1塁ランナーは、ライトがグラブにボールを当てた瞬間にダイレクトに捕球したと判断し、落球したことは自身で確認せずに1塁に帰塁したのであろう。落球したことを自分の目で確認していれば、間違いなくその瞬間に2塁への進塁を試みるはずである。

そして、打者走者の動きや1塁ランナーコーチの指示をみてライトが落球したことを理解し2塁を目指す動きは見せた。

だがライトからの送球はすでに2塁に到達しておりライトゴロが成立した。

以上は人間の判断や意見を問わず事実起こったことである。

では仮に、1塁ランナーがライトが落球した瞬間を確認しており、即座に2塁へ向かっていたとしよう。それでもライトがプレーしていた位置と2塁ベースとの距離を考えると2塁フォースアウトとなった可能性は高い。

しかし落球した外野手目線で考えると、ハーフウェイから全力で2塁をめざして走っているランナーを刺すのと、1塁付近まで帰塁しておりようやく2塁へ走ろうとしているランナーを刺すのとでは、精神状態は大きく異なる。前者はより正確で速い送球が求められる。ミスが生まれる確率も上がる。

今回のプレーでは、外野手は山なりのボールを投げても、多少左右にボールが逸れても悠々1塁ランナーをアウトにできる状況となった。

内野ゴロなどで、平凡なゴロを足元に落球し、拾って送球するも大きく逸れるケースがある。それと同じことを誘発できるチャンスが今回もあった。そのチャンスを、打球を見ていなかったことによって1塁ランナーは放棄した。

動画では、ライトが送球動作を終えたたあとにようやく方向転換して2塁へ向かう様子がわかる。このタイミングでは遅すぎる。

よって結論は冒頭に記したように

・1塁ランナーがハーフウェイで待機していても、2塁で封殺された可能性は高かった。

・しかし、1塁ランナーがハーフウェイから適切に打球を判断し動いていれば、2塁に進塁できる確率が可能性は低いながらも残せたかもしれない。

である。


ネットではこのプレーについてさまざまな見解が書き込まれている。主なものに回答する。

「この打球を落球するとは誰も思わない。走者の帰塁するという判断はやむを得ない」
「プロがあんなイージーフライを落とすとは誰も思わない」

では、平凡な内野ゴロを打ったときに打者走者が1塁に向かって全力疾走するのはなぜなのか。内野手が落球する可能性・1塁への送球が逸れる可能性・1塁手が送球を落球する可能性、すべてを念頭に置き1塁でセーフになることを目的に全力疾走するのではないのか。

「あんな打球を野手がミスするはずがない、仕方がない」と判断することを良しとするのであれば、そもそも打者走者が1塁に走る必要すら無い。

2アウトで打者がフライを打った時、イージーなフライであってもランナーが全力で体力を消耗させながらも次の塁を目指すのはなぜなのか。可能性は限りなく低いながらも野手が落球した時に有利な状態とするためではないのか。

「落球するとは思わなかったから、自分の目で打球を確認せず、捕球したと仮定してプレーする」という判断は、ひとことで言うと「ミス」もしくは「ボーンヘッド」である。常に何かが起こることを想定してプレーするべきである。


「これは走塁ミスではない」

ミスである。外野手が落球しているのに気づかず、捕球しているものと誤認してプレーを続けることはミス以外のなにものでもない。※しかし、ミスがなかったとしても2塁へ進塁できたかどうかはまた別の問題である。


「ハーフウェイで待機していたら1塁に戻れず刺されてしまっていた」
「1塁ランナーが(2塁方向へ)出すぎているとファーストに戻れずアウトになるからこれでいい」

ハーフウェイ待機というのは「厳密に塁間ちょうど半分の位置で待機する」のではない。この場合だとライトが捕球しても安全に1塁へ帰塁できる位置で待機すれば良いのである。また、ライトが落球したあとにまだ1塁方向へ走っていたことの説明にはならない。問題は「待機する位置」ではなく「落球直後の行動」である。

また少し角度が異なるがこのような言及も散見された。

「なぜ記録はエラーではなくライトゴロなのか?」

まず以下のような場面を思い浮かべてほしい。

無死1・2塁。打者がショートゴロを打った。

ショートはうまく捕球できずグラブにボールを当てるも足元にボールが転がる。

それを拾って2塁にトス。1塁ランナーのみフォースアウト。

このプレーを「エラーかどうか」と迷うことはないだろう。ゲッツーはとれなかったものの記録はショートゴロである。

今回のプレーもおなじことである。実際に一連のプレーを見ているといろんなことが起こっているが、簡単に言えば

ライトがダイレクトに捕球できなかった

1塁ランナーを2塁で封殺した

ライトゴロ

シンプルにこれだけの話である。


相手の小さなミスを大きなメリットに変える野球ができていない。一方自軍のミスは相手につけこまれる。このような場面が今年のタイガースには至るところで見られるように感じる。オールスターが終わると勝負の後半戦。巻き返しを期待したい。

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