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なぜあの場面でギャンブルプレーを選択したのか。 2022/4/2 今日のワンプレー

全てのタイガースファンが悲鳴を上げたこのプレー。見たくはないだろうが、なぜここでギャンブルスタートだったのかをご理解いただくにはご覧いただく必要がある。

https://twitter.com/toraho/status/1510210254994550784

このプレーについてはSNS上でも様々な意見が見られる。まとめるとこの2点に集約される。
・この場面でギャンブルする必要があるのか?
・次の打者は好調な大山なのに冒険する意味は?

まずお伝えしておこう。その程度のリスクは素人が言うまでもなくプロの監督は百も承知である。その中であらゆるリスクとメリットを総合的に判断しギャンブルプレーを選択したのである。

残念ながら結果は最悪なものになったが、あとからなら誰でも言えることだ。仮にこのギャンブルプレーが功を奏し、内野ゴロでサードランナーがホームインしていたとしても「たまたま得点できたが、この場面でギャンブルはリスクがありすぎる」とこの方たちがおっしゃるのであれば、まだ理解できるが。


さて、まずはギャンブルプレーの定義をおさらいしておこう。

・ノーアウトか1アウト
・ランナーが3塁
・投球がバットに当たった瞬間、その打球がどのようなものであれ3塁ランナーはホームへスタートを切る
・主に試合終盤、どうしても1点がほしい場面で採用されることが多い

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【参考】
似たような作戦で「ゴロゴー」と呼ばれるものがある。ゴロゴーは打球の性質によってスタートを切るか否かを走者が判断する。文字通り「ゴロ」であればホームに向かってスタートを切る。ライナーもしくはフライであればギャンブルプレーのようにフリーでスタートを切るのではなく、通常どおり状況を見ながら進むべきか戻るべきかを判断する。

私も学生時代「ゴロゴー」や送りバント、スクイズなどのサインがでたときは、ヘルメットのひさしを視線と打者のミートポイントに重なるよう調整していた。こうしておくとフライがあがればひさしにかくれて打球が見えなくなり「とりあえず帰塁」と判断し、ゴロならひさしの下に打球が見えるためそのままスタートが切れるからである。
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ギャンブルスタートのメリットは、走者が早いスタートを切るため、通常なら何事も起こらない内野ゴロが得点につながる可能性が高いことである。

デメリットは、(まさに今日の試合のように)内野のライナーならダブルプレーとなり一気にチャンスが消滅することである。まさにギャンブルだ。


次に本日問題の場面、1アウト2・3塁でギャンブルスタートを選択した際に考え得るあらゆるケースを網羅する。

・ヒット→普通に得点が入る。
・内野ゴロ→多少の速いゴロでも俊足ランナー近本はホームインできる確率が高い。万一3塁ランナーがホームでアウトになってもタッチプレーであり打者走者は1塁に残り2塁ランナーは3塁に進塁する。従って最悪でも2アウト1・3塁で次打者大山を迎えることができる。
・内野フライ→スタートを切っても帰塁する時間がある。
・内野ライナー→ダブルプレーの可能性が高い。
・外野フライ→スタートを切っても帰塁する時間がある。外野手が捕球する位置によってはタッチアップを狙う。

この5通りである。絶対に避けたいのはダブルプレーとなる「内野ライナー」のみである。

それでは打球が「内野ライナー」となる確率はどうだろう。今年のタイガースの全試合(4/1まで)での内野ライナーをカウントしてみた。

3/25 0
3/26 0
3/27 1(中野)
3/29 1(近本)
3/30 0
3/31 0
4/1   0

7試合で内野ライナーは2。
1試合あたり内野ライナーが発生する確率は0.286。3試合で1本も出ない可能性があるプレーである。

この場面は上記のように内野ライナー以外なら最悪のケースは避けられる場面である。さらに内野ライナー以外なら得点できる可能性が高く、タッチアップができない内野フライや浅い外野フライでも3塁ランナーは3塁に戻るだけである。意外とリスクは少ない。


最後にこのポイントについても考えてみよう。「次の大山が好調なので無理する必要はない。」これは一理あるかもしれない。どう判断したのであろうか。

4/2終了時、大山の打率は.357である。確かにかなり打っている。ではこれを裏返して「凡打率」にしてみよう。凡打率は.643である。

ノーアウトや1アウトなら犠牲フライや内野ゴロの間に3塁ランナーがホームインすることができる。しかし今日あの場面で大山に打席に立つなら2アウトになっている。ヒット以外に得点できない。期待するのは良いが.643は失敗する。

であれば、その前のバッターで意外とリスクが少ないギャンブルスタートを選択し同点を狙うことに、私はなんの違和感も持たないのである。


ここまで紐解いても「あの場面でギャンブルプレーを選択したのは誤りだ」というのであれば、その根拠を示していただきたいものである。



とはいえ結果残念ながら「ギャンブル」は失敗し、タイガースはセ・リーグ記録である開幕8連敗を喫した。明日こそ我々にとっての「開幕戦」を迎えたいものである。

阪 神 2 0 0 1 0 0 0 0 1 4
巨 人 2 1 1 0 1 0 0 0 X 5
【阪神】 ●小川(0勝2敗) 桐敷 渡辺 斎藤 湯浅
【巨人】 山崎伊 ○戸田(1勝0敗) 今村 畠 高梨 S大勢(6セーブ)
[本塁打] 坂本2号(巨) 丸2号(巨) ポランコ3号(巨)

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