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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」

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1945年から今日まで、10人の「在日朝鮮人作家」の作品と人生、その歴史背景を、文芸評論家の林浩治さんにミニ評伝で紹介していただきます。 (本文の著作権は、著者にあります。ブログ…
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2021年10月の記事一覧

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔前篇〕

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔前篇〕

金泰生――洗練されたリアリズムで、名もない庶民を描いた 前回の金達寿(キム・ダルス)に続き、金泰生を紹介したい。
金泰生と言っても知らない読者が多い。生前も有名作家ではなかったが、死後35年も経った昨今ではほとんど名があがることがなかった。ところが、今年(2021年)2月発行の『対抗言論』vol.2(法政大学出版局)に掲載された座談会「在日コリアン文学15冊を読む」に金泰生「骨片」が選ばれていて驚

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔後篇〕

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔後篇〕

                       ヘッダー画:奥津直道

〔前篇〕からつづき

9)『文藝首都』で文学修行 1955年、金泰生は冒頭に書いたように、金達寿の紹介で小品を在日朝鮮人の雑誌に発表した。その年の暮には、純粋文学の雑誌『文藝首都』*2)の保高徳蔵を訪ねる。
 なだいなだは、『文藝首都』の面々をモデルとした小説『しおれし花飾りのごとく』(1981年 集英社文庫)に、金泰生を模した

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*注)林浩治「在日朝鮮人作家列伝 02 金泰生」

*注)林浩治「在日朝鮮人作家列伝 02 金泰生」

林浩治「在日朝鮮人作家列伝 02 金泰生」の注*1)~*14)です。(編集部筆+著者〔林さん〕添削・加筆)

*1)「くじゃく亭通信」実業家、高淳日が、渋谷に開店した画廊「ピーコック」(1968年)とレストラン「くじゃく亭」(1970年)を発信地とする、日本と朝鮮半島、在日をつなぐ文化紙。のちに金泰生が受賞した「青丘文化賞」も高淳日と実業人仲間がはじめたもの。
三一書房から『始作折半 合本くじゃく

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