藤の花を酢につける。

山藤の花を一輪だけ手に入れた。ちょっと高いところに花たちはあって、手が届かなかった。一つだけ採集した花を、大事に持ち帰り、透明のガラス瓶に入れ、酢を満たした。もう一つ欲しいと思い、昔、藤棚を見かけた公園によることにした。山の中の道を車で走っていると、藤の花を見つけた。
「一つだけ頂戴ね」と声をかけて、一輪手折った。今度の花は先の花より紫がかっている。ガラス瓶の中で2輪の花は、ドキッとするほどきれいだ。
 そして前に農産物直売店で見かけた、それはアルコールだったが、マムシの子供を思い出した。首を液体の上に出してじっとしていた。生きたままアルコールに溶けていくのは、切なかっただろう。マムシ酒は滋養強壮によいと言われているが、恐怖も溶け込んだのではないかと私は思っている。
 藤の花も同じだろうか。気になった。

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