見出し画像

「切り絵で世界旅」昇平戯院(台北/台湾)レトロな九份に1962年当時の映画館が蘇る

 台湾北部の瑞芳鎮に位置する山あいの九份は、19世紀末に金の採掘が開始されたことで発展してきた。戦後も金の採掘は続けられ、住民も数万人に膨れ上がったが、金脈の枯渇により1971年に閉山。この地は急速に衰退した。
 その九份が再び脚光を浴び始めたのは1989年、九份をロケ地とした映画『悲情城市』がベネチア国際映画祭でグランプリを受賞したことがきっかけだった。いまは台北といえば、九份が欠かせない観光スポットになっている。

販売店の前で自撮りするカップル


 というわけで私も2012年7月、九份の階段を多くの人にぶつかりそうになりながら上がっていた。踊り場状態の広いところに出たので休憩でもしようかと周囲を見渡すと、何だかレトロな洋風の建物がある。上部に大きな看板がついていて、「昇平戯院」と読める。劇場っぽいので入口に近づくと「入場無料」と書かれているので館内に入ると、懐かしい昔の映画館ではないか。
 ロビー部分には古い映写機が置かれ、壁には『非情城市』や『恋恋風塵』などのポスターが貼られている。極めつけは販売店である。日本ではとっくに失われてしまった風景がそこにあった。

 映画·演劇·人形劇などで大いに賑わっていた昇平戯院は、1914年に別の場所で営業を再開し、1934年に現在の場所に移動。1962年に改築された。だが鉱山の閉鎖後の1986年についに閉鎖となる。新北市政府は2010年、昇平戯院を記念的建築物に認定し、修復·補強工事を経て1962年当時の姿に復原した。歴史的近代建築物を大切にしない日本とは雲泥の差である。復元されたおかげで、当時の建築物をじっくり味わうことができた。
 販売店の前では台湾人の若いカップルがスマホで記念写真をとっていた。何とも微笑ましい光景である。
<旅行日/2012.07.27>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?