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としま共創トーク 対談「まちづくりの新発想をどう活かしていけるか」 渡邉裕之(東京商工会議所豊島支部会長)&竹沢徳剛(リョウザンパーク代表)

特集:新企画 としま共創トークVol.1

渡邉裕之さん
創業94年になる渡辺建設株式会社代表取締役社長。2018年より東京商工会議所豊島支部会長ほか豊島区内団体で要職を務める。
竹沢徳剛さん
株式会社TAKE-Z代表取締役。シェアハウス「RYOZAN PARK」代表。シェアオフィス、託児所、英語プリスクール、イベント企画など事業展開している。

渡邉:竹沢さんのリョウザンパークについては私の知人も入居していたりして以前から知っていたのですが、お話しするのは初めてですね。それでは私から最近の活動をご紹介します。私が2年前から会長を務める東京商工会議所豊島支部では『豊島イノベーションプランコンテスト』を開催しています。これは地域の新しい課題解決の方法と若手起業家の発掘を目的にしたものです。一昨年度のグランプリ受賞企業は、祖父の代にアイロン台工場だったスペースと工具を再利用して、地域に開かれた「ものづくり工房&コミュニティカフェ」を開設した11-1 Studioさんでした。中小企業の事業承継の課題に取り組むモデルでもあり、受賞後は東京都の特定創業支援事業に認定されテレビ取材も多く受けられています。昨年の受賞企業は、ひきこもりの方を対象に在宅ワークとトレーニングを提供するCOMOLYというコミュニティ運営する(株)Meta Anchorさんになりました。
こうした時代のニーズを先取りしたベンチャー企業の事業モデルは、既存の企業の刺激になるだけでなく、新しいアイデアと培ったストックを有効に補いあいながらこれからのビジネスと経済活性化に結び付けていくチャンスにしたいと思っていまして、交流会やSNS、セミナーなどで受賞プランの情報を積極的に発信していくような看板事業として継続しています。

竹沢:僕は巣鴨生まれの巣鴨育ちで曾祖父の代から巣鴨に住んでいます。2011年に起きた3.11の震災があったとき、アメリカのワシントンDCの大学院で国際法を学んでいました。日本でボランティアできないため、まず初めに現地でファンドレイジングを始めたんです。すると手伝ってくれる学生たちのなかに、マイノリティーとして育ってきた方が多いことに気づいて、彼らの一生懸命さに心を打たれました。アメリカが持つ多様性にも感動して、自分も地元の巣鴨に帰り、どんなバック(背景)をもった人間でもやりたいことにチャレンジして互いに切磋琢磨できるようなコミュニティを作りたいと思うようになりました。これが、帰国後に40人が住むシェアハウスを、50人が働けるシェアオフィスを立ち上げた経緯です。
リョウザンパーク(以下RZP)の名前はもちろん水滸伝の梁山泊から付けたのですが、志をきちんと持っている人たちを集めたいという思いから、入居の内覧の際には僕自身が立ち会って「君の夢は何か。やりたいことは何か」と会話しながら、僕が60歳70歳になっても一緒に酒を飲み交わしたいと思う人たちに来てもらっています。それを面白がる人たちがどんどん集まって来てくれるのですが、そうこうするうちに結婚するカップルも20組ぐらいでてきて、しかも近くに住むようになっています。そうなると、子供の成長する姿を見守りながら自分の仕事をしていきたいっていう希望が多くなり、託児所付きのシェアオフィスを実現させてみました。徒歩10分圏内で「働いて子育てをして遊ぶ」場を持つような東京の村(ムラ)を作っているような活動です。 僕は今の時代は資本主義の過渡期にあると思っていて、それは近代以前の社会が強い家族とコミュニティを形成したのに対し、近代は強い個人を形成してコミュニティを弱くした反面、もう一度、自己再生するコミュニティを持つ必要があるという考えに基づいています。内田樹さんの著書に、『パブリック・ドメインを作り出すのは、実は政府や自治体のような〝パブリック〟ではなく〝私人〟である』と書かれていて「私利の追求を抑制し、私有財産の一部を差し出すことで、はじめてそこに「みんなで使えるもの」が生まれる。私人たちが持ち寄った「持ち出し」の総和から「公共」が立ち上がる」ともあります。
東京の村(ムラ)を作っているというのは、それが今の時代に必要な自己再生コミュニティになっていくという社会実験をしているイメージなのです。

渡邉:竹沢さんのその気持ちが仲間たちにも伝わって、集まる人たちが竹沢さんとともに住むまちを好きになっていくという過程が目に見えるようで素晴らしいですね。豊島区は他の区に比べても、行政がまちづくりを積極的に進めていると感じられるのが良いところでもあるけど、それだけでは面白くなくて、そこに住む人たちが自分ごととして環境を作っていく気持ち、そういう心を持てるまちはいいまちになるはずです。みんなが地域のことに入り込める余地が必要なのでしょうね。

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竹沢:豊島区はまちづくりにアイデアを発揮しようとしている姿勢が感じられます。RZPでも区役所の職員の方が仕事でシェアオフィスを利用できたらいいね、というお話もありました。地域のビジネスマンと一緒に仕事するバディになった方が面白いことが起きるんじゃないのかなと思ったりして。セキュリティの問題もあって実現はしていませんが、サンシャインの職員の方はいらしていただいています。 商店街とか町会の方は結構高齢化されてきているので、実際に僕たちの世代とは交流が断絶しているところがあるので、僕みたいにずっと巣鴨にいる人間が中継ぎをしていきたいなと思っています。今の若い人たちでも地元のコミュニティに繋がりを求めている人はいるので、その間でインタープリター・通訳者になるべきだろうなと感じています。

渡邉:世代を超えた連携って、本当に必要だと思うけど、やっぱりなかなか交流が活発な雰囲気にはなりにくいですよね。ときどき地元の防災訓練などに私や社員たちも参加しますけど実感します。出てきてほしいという気持ちも、やっぱり出ていきにくいという気持ちも両方わかってしまうよね。行政が地域の連絡協議会を設置してその機会を作るという方法もありますが、やっぱりお祭りみたいな楽しい雰囲気で少しづつ顔を合わせて知り合っていくという機会が必要なんじゃないかと思います。 インタープリター・通訳者がいればって話が出たけど、それはどんな人ができるのでしょうね。

竹沢:その地元にいる不動産オーナーの方々はその可能性を持ているんじゃないでしょうか。先ほど引用しましたが「みんなで使えるもの」を「持ち出し」あいながら公共をつくる、というきっかけはできるように思います。
率直に言って、既存の地元の会に入会しても10年くらいやらないと一人前に提案ができないとか、新しい住民の方では地域を舞台に使わせてもらえないとかがあると、若い人はすぐやる気がなくなっちゃう感じがします。
新しい発想でチャレンジできるように、地域を舞台として遊ばせてくれる〝旦那衆〟のような人がいると動きが生まれると思います。始めは小さな芽でも育てて、成長して良くなってきたら地元に還元してもらう発想でいればいいのではないでしょうか。

渡邉:私の地元の椎名町でも、昔、神社で子どもの「相撲大会」のイベントがあって、神社が場所を開放して、みんなが集まれる「場」を作ってくれていました。子どもの頃に参加した人が大人になって今度は親になって、段取りする側が高齢化して休止していたのを復活させてくれたりしていることもあります。
私の会社でも、そんな時に舞台やテントの設営に協力させていただいたりしていますけど、まちの人たちに「ありがとう」って言われると、やっぱり私たちも地域に育てられてきている実感がすごく湧いてきて、村(ムラ)のメンバー意識というか、私自身も社員もイベントの時期になると喜んで進んでテント張りの打ち合わせに行くような気分になっています。
〝旦那衆〟って、自らの私財を投げ打って、職人に腕を振るう機会を与えて、文化を後世に伝えようとした人々のことですよね。地域のなかで「持ち出し」できるものがある人や企業が〝旦那衆〟になっていくことは、これからの時代、地域や企業がサスティナブルになっていくという意味からも必要なことかもしれません。

竹沢:僕は、この地域で何かをやりたい人たちを応援し、愛着を持ってつき合っていくことが、いろいろな人々にとって好循環になると思うんです。
面白いポテンシャルを持った人たちは豊島区にまだまだたくさん住んでいるはずです。みんなが熱くなれるような舞台がいろんな地域に欲しいです。

渡邉:今日、最初にご紹介したニュービジネスの方々や竹沢さんの仲間たちなど「やる気」のある人たち、そしていろいろなポテンシャルを持つ人たちが、もっと地域に出てこれる機会をつくりたいですね。きっかけはイベントでもお祭りでもいいのかもしれない。今、豊島区が国際アート・カルチャー都市の舞台としているグローバルリングや南池袋公園やイケ・サンパークや公共施設も、もっと地域の人に企画を開放していいように思います。舞台を「使っていいよ」とするだけで、いろいろな動きが始まること、そのこと自体が豊島区の好循環ですね。

竹沢:みんなが愛情を感じる「まち」、マイノリティにも優しい「まち」っていうのがこれからのキーワードじゃないのかなって感じています。小さな芽がこのまちで育てられて、その一つの喜びがだんだん隣に伝わってきて、全体を盛りあげていくんじゃないかなって。

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2021年4月8日㈱サンシャインシティ共創空間にて
※としま共創トークは㈱サンシャインシティと「とっぴぃ」の共同企画です。豊島区のまちづくりの好循環をゲストの方の対談によって模索していきます。

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