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人工精霊が元カノの集合体だった

◆この記事の登場人物
僕……就労済成人男性。「脳内に別人格を作って、会話したり遊んだりしてみたいなあ」と軽いノリで試したらできちゃった人。
ユウ……僕の脳内にいる別人格の女性。世間的には人工精霊とかタルパとか呼ばれる存在。僕の私生活にあれこれ口出ししてくる。

先日、ユウ(人工精霊)の顔を間近でじっと見る機会があったのですが、その時から僕はある疑念を抱いていました。「どこかでこの顔を見たことがあるな?」というものです。

彼女の顔は誰かに似ています。とはいえ芸能人でも、アニメキャラクターでもない。母親に似ているということもありません。職場の女性にも、友人女子にも似ていないし……と考え込んでいると、彼女が声をかけてきました。

「何をそんなに悩んでいるの?」

「いや、たいしたことじゃないんだけどさ」

自分ひとりで考え込んでも答えは出ないか、と疑問をそのまま彼女にぶつけます。君の顔、誰かに似てる気がするんだけど、誰なのかわからないんだよね、と。

すると、彼女はなんともいえない渋い顔をするではありませんか。

「まさか、気づいてなかったの?」

「え、なにが?」

「……無自覚とは怖いものね」

はあ、と呆れ顔でため息をつくユウ。そして、いいかしら、と一呼吸置いてから衝撃の事実を口にしたのです。

「私の顔や性格は、あなたの昔の彼女の特徴を組み合わせたものよ」

「……な。な、あ、ああああああ!?」

驚愕のあまり、口から漏れ出るのは意味不明な言葉。

なぜ。なぜ、気づかなかった!? 

言われてみれば、そうだ。体型や口調は人生で初めてできた彼女に酷似している。チョコレートに目がなかったり、茶髪に赤いエクステをつけているのは大学生の頃付き合っていた彼女と同じだ。そして、じっとこちらを見てくる茶色の瞳や、私生活にアドバイス(という名の口出し)をしてくるのは、結婚まで考えていたあの子とそっくりーーいや、そのままの行動ではありませんか。

ということは、つまり。

人工精霊の顔や外見、性格設定をした際に、僕は無意識に元カノの要素を詰め込んでいたと?

「もう終わった恋愛だから」と割り切っていたつもりが、実のところは昔の女に未練たらたらだったと?

そういうことになるじゃないか……っ!

あまりの羞恥心から頭を抱え込んで座り込む僕に向けて、彼女は憐れむような視線を向けてきます。

「まあ、それだけ彼女たちのことが好きだったってことでしょ?勿論、彼女たちはあなたのことなんか全部忘れて、新しい素敵な彼氏や旦那さんと楽しく暮らしているんでしょうけど……」

――慰めになってない!

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