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ゴミの城

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動画~https://youtu.be/YN4iTq7kIF4  父親が他界、実家に残されたのは子供のように振舞う母親と引きこもりの兄、そして大量に残されたゴミの山だった。 登場…
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2021年8月の記事一覧

ゴミの城~003~要因

 これまでのお話  ほんの少し前、手を伸ばせば届きそうな距離に過去がある。目をつぶればすぐに戻れそうなのに戻れない。戻ってやり直せればどんなに良いことだろう。  父が嫌がっても病院に入院させれば良かった。頻繁に母親に会いに行けば良かった。そうしていれば、二人は今も元気で暮らしていたのではないか? 両親を色んな所に連れて行ってあげれば良かった。日本には素敵な所がたくさんある。もっとお金を貯めておけば良かった。もっと勉強しておけば良かった。  それでも過去には誰も戻れない。

ゴミの城〜004〜故人の名誉

 これまでのお話  父親が亡くなり数週間が経つが、部屋を埋め尽くすゴミの多さに泣きたくなる。一週間に一度か二度しか行けず、それでもゴミを袋に詰めていくのだが、段々と親父に腹が立ってくる。 「馬鹿なんじゃないのか?」 「……なんだよ、これ」  父親は大工でもなかったのに、金槌が三十本くらいあったし、カンナも二十本以上あった。カセットテープも二百本以上、MDも三百本以上。フィルムカメラなんか四十台くらいあるんじゃないのか?     ここ何十年と何かを捨てた事がないのでは?

ゴミの城~005~庭やベランダのゴミを処分する

 これまでのお話  父親が他界して一か月、呆れるほどのゴミをちょこちょこと片付けているのだが、ゴミが家の外にも及んでいる。庭や駐車場、家と塀の50㎝程の隙間にさえ物が置かれている。と言うよりも「ゴミが詰め込まれている」が正しいのだろう。  基本、家の中はゴミ袋に入る大きさの物が多いが、外となると事情が変わる。厄介な「燃えないゴミ」それも大きな物が多い。プラスチックの大きなタライやスキーの板に壊れた自転車。それに大きな水槽が何個もある。その他にも酒屋でもないのにビールや酒の

ゴミの城~006~恐るべきゴミの王

 これまでのお話  ゴミ屋敷の主人、父親が他界して一か月。一週間に何度か実家へ行って、呆れるほどのゴミを片付けているが、先日、兄に 「ベランダにハクビシンが居る」  と言われ半信半疑だったのだが、いつも通りゴミをまとめて帰ろうとした時に、庭にある父の仕事場だったプレハブ小屋の裏から鳥のような鳴き声がした。そこはゴミだらけで覗くこともできない。実家を後にして歩きながらスマホで「ハクビシン 鳴き声」を検索してみた。  動画はすぐに見つかり、それを再生してみた。……似てい