バンド維新2023

日時:2023年2月26日(日) アクトシティ浜松 中ホール
会場:13:00
開演:13:30
終演:16:20

司会進行:中橋愛生

【曲目・演奏】
・雲の散歩道(北爪道夫)
・演奏:浜松市立冨塚中学校
・指揮:松下法恵

・風のファンファーレ(中橋愛生)
―ウインド・アンサンブルとフレキシブル・バンドのための祝典音楽―
・演奏:浜松開誠館中・高等学校
・指揮:浅田亨

・吹奏楽のための俗祭(和田薫)
・演奏:浜松市立南部中学校
・指揮:小林翼

・Cretaceous Wind(本多俊之)
・演奏:静岡県立浜松北高等学校
・指揮:小柴秀樹

—休憩15分―

・天上の花束(山中千佳子)※委嘱作品初演
・演奏:浜松市中学校選抜吹奏楽団
・指揮:村田勝美

・バンドの為の奇想曲(佐藤泰将)※委嘱作品初演
・演奏浜松ユース吹奏楽団
・指揮:太田貴望

昨年はコロナのため開催されませんでしたが、2年ぶりにバンド維新が開催されるということで、初めて足を運んできました。
今回は、過去に初演した作品を4作品、委嘱を2作品演奏するというコンセプト。普段、吹奏楽に関わりが少ない作曲家や、吹奏楽を作曲されたことがない作曲家に委嘱し初演するという企画は嬉しいものです。
委嘱内容は、楽器を初めて間もない中高生が演奏できること、小編成でも演奏できることが条件となっているようです。司会進行の中橋さんも話されていましたが、日本の吹奏楽は大編成が上に見られ、小編成は下に見られるということがあるということで、小編成でも魅力的な作品や演奏をすることができることも目的の一つになっているかなと感じました。

会場には、演奏される作曲家をお招きし(和田薫さんのみビデオレター)、演奏前と演奏後にトークを交えて作品についてお話頂きました。

中橋さんの「風のファンファーレ」の作曲経緯について、ご自身がお話されていましたが、バンド維新10周年を記念した祝典曲という依頼でしたので、当初は、演奏される全楽団の巨大編成で、バンダも入れるという発想もあったそうですが、バンド維新の主旨とずれてしまうということで、風のファンファーレが作曲されたようです。
副題に”ウインド・アンサンブルとフレキシブル・バンドのための祝典音楽”と付けられていますが、ウインド・アンサンブルの定義もお話して下さり、これまで曖昧にしか理解していなかった自分にとっては大変貴重なお話でした。

本多さんの「Cretaceous Wind」は、司会の中橋さんが都合で会場に来られないとお話されていましたが、演奏者(ソプラノサックス)としてサプライズ登場。学生たちと同じユニフォームも着て参加されていました。高校生にしては異常に上手いな~と思っていたら本多さんでした。(本多さん、気づかなくて申し訳ないです・・)
恥ずかしながら、今回初めて拝聴しましたが、コンサートピースとして大変素晴らしい作品だなと感じております。ゲストにプロのサクソフォン奏者をお招きして演奏されるのもいいですし、楽団内のサクソフォン奏者に演奏して頂いてもいいなと思う作品。

さて、楽しみにしていた委嘱作品。まずは山中さんの作品。作品解説は以下の通りです。


私の恩師である「故・尾高惇忠先生へのオマージュを書いてほしい」という大きなテーマを受けて、悩んだ末に書き上がった楽曲です。東京藝術大学名誉教授として数多の若手をご指導された尾高先生は、2021年2月末にご逝去されました。
駆けつけた逗子教会でのご葬儀、式終わりの献花にて、棺の中の、先生の小柄なお身体の周りに、皆で山ほどの花を捧げました。色とりどりの花に包まれて安らかに眠られる先生のお姿は、私に深い印象を残しました。
曲全体は、天上の恩師に花束を贈るというイメージで(死後もなお各地で初演・再演される尾高先生の作品群に敬意を評して)、トリルやトレモロ、同音形の反復奏法などで、花々が鮮やかにきらめく様を描きます。また、終盤のトランペットの哀悼のコラールが捧げられ、天上の世界が明るく美しいことを描いて、華やかに揺らめきながら終曲します。どうぞ、大切な故人を想い出しながら演奏し、お聴きいただければ幸いです。

バンド維新2023パンフレットより

東京ハッスルコピーの代表である佐々木さんから提案で、本作を作曲されました。作品解説を拝読した時は、最初から最後までアダージョでコラール風の作品かなと感じていましたが、前半は旋律線や和音が全く見えず(浅学なだけですが・・)、凝った響きをする作風でした。中高生でも演奏可能な範囲ではありますが、この響きを創り出すためには、それなりの技術を要するのではないかと感じました。実力のあるアマチュアバンド、プロバンドに再演して頂きたいな~と思いました。(今回の演奏も良かったですが)
曲の終わりが近づいていくと、旋律線と和音が明瞭になり、トランペットのコラールに導かれて、爽やかな朝日を浴びる如く作品が終了します。とても美しい作品でした。

続いて、佐藤さんの作品。作品解説は以下の通りです。

奇想曲とはイタリア語で【カプリッチョ(Capriccio)=気まぐれ・ごちゃまぜ】という意味合いの楽曲を指します。
この様式は、主にメンデルスゾーンなど19世紀ロマン派時代の楽曲(主に鍵盤楽曲)に多く見ることができますが、その歴史は古く17世紀バロック時代にもこの様式を遡ることができます。
この曲は単に思いのままに「気まぐれ」に作曲したのではなく、調性感や形式に一定の規則性を持たせるため古典的手法であるソナタ的な形式を取り入れました。
曲の主部は、比較的テンポの速い舞曲風の6/8拍子と、短調的なエオリアの音階を用いたスペイン風の旋律を組み合わせています。
中間部から再現部にかけては序盤のモチーフを用いながら様々に展開して行きます。
もしかしたら、「バンドのための舞曲的奇想曲」の方が曲名として適切なのかもしれませんね。
とは言っても私が一番表現したかったのは人間の「喜怒哀楽」です。
あまり細かいことは気にせず、移り変わる曲調を楽しんでいただければ幸いです。

バンド維新2023パンフレットより

佐藤さんは、アレンジでは何度か書かれたあるそうですが、本作で初めての吹奏楽作品となります。
作品は、ビゼーのカルメン、ファリャの三角帽子、ラヴェルの道化師の朝の歌を折衷した印象を受けました。中間部では、トランペットが印象的な連符を演奏されるのですが、道化師の朝の歌だなぁ~と思いました。
上記三作品を知っている方にとっては、物足りない部分があるかもしれませんが、楽器を初めて間もない中高生や、クラシックに馴染みのない方にとっては楽しい作品ではないかなと感じました。

小編成に新たなる可能性を開拓する企画は大変素晴らしいことだと思いますし、普段、吹奏楽に馴染みのない方が吹奏楽を書いて下さるのは新しい発見があるかなと思います。これからも、この企画が毎年開催されることを願ってやみません。

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