早く目的地に到達するために、ゆっくり進む

ウェブ関連の仕事をしていると不具合というものに出くわす機会が多い。

例えば、Googleタグマネージャ経由でGoogleアナリティクスの計測をしているが、クッキー同意取得管理ツール導入をきっかけに広告のコンバージョンが計測できなくなったなど。

こういう場合は原因を特定する必要がある。原因が分かりさえすれば解消したも同然だ。逆を言えば、原因が分からないと解消しない。

原因が分からないと対策(施策)の精度が低くなるというか、根拠ない数打ちゃ当たる状態になる。

時間が無限にあるならば良いが、時間は決まっている。特にデータ取得は不可逆的なものなので、なる早での解決が求められる類のものだ。

そういった場合は、一本釣りで最初から原因の特定をしていきたくなるがこれはかえって時間がかかるのではないかと考えている。

結論は、原因の切り分けを半分ずつ行っていくことで急がば回れとなり、一本釣りを狙うときよりも早く原因を特定できる。

その中央値を切り分けるための問いを立てていけるか否か、その精度が原因特定までの速度を左右する。100ある選択肢を50にして、25にして、12.5にしてというように。

宝探しゲームではめちゃくちゃ重要なアプローチだ。というのも選択肢を絞れるまで絞った上で仮説を立てることで、その仮説自体の精度を高めることができるから。

不要な選択肢を排除していくという引き算的なアプローチ。これには"前に進んでいる感"による精神的な安心感と目の前のことに原因がある可能性が高いと集中力が高まるという副次効果もある。

前述の例で言うと、まずはサイト管理者側の問題なのか、Googleタグマネージャ(以下GTM)とクッキー同意取得管理ツール(以下CMP)の問題なのかを切り分ける。

「CMP導入前後でコンバージョンはどのように変化したのか?」という問いを立ててみた。中央値を切り分ける問いだ。

すると、CMP導入前は3,000件/週あったコンバージョンが導入後は0件になっているとのこと。(ファクト)

これは明らかに不自然なので、GTM/CMP側の設定に何かしら問題がありそうだ。これでツールの設定側の半分に原因箇所が絞り込めた。

つぎにGTM/CMPのどちらに原因があるのかを切り分ける。「GTMのトリガー設定は正しいか?」という問いを立ててGTMのタグとトリガーの設定を見てみると問題はなさそうだ。

つまり、CMP側に問題がありそうだと分かる。最初100あった選択肢が25までに減った。ここからは仮説をしっかり立てていく。

「クッキーの分類に原因があるのでは?」

広告ツールから発行されるクッキーは基本的にはターゲティングクッキーに分類される、GTM側でもターゲティングクッキーが同意されたことをトリガー条件の1つでタグが発火される設定だ。

対象サイトのクッキー分類を見てみると、どうやら該当ツールのクッキーがパフォーマンスクッキーに分類されているようだ。

つまり、CMP側ではパフォーマンスクッキー扱い、GTM側ではターゲティングクッキー扱いになっているこの差異が原因ではないかと導ける。

つまり、対策としてはGMP側とGTM側のクッキーカテゴリを一致させることが挙げられる。この対策の精度は一本釣りでは導くことが難しい。

原因特定を行うためには、中央値を切り分ける問いを立てて選択肢を半分ずつ削っていくことが結果として早い。

不要な選択肢を排除した上で仮説を立てることで仮説の精度が高まる。早く目的地に到達するために、ゆっくり進むというアプローチだ。

悪いリーダーは答えを与え、良いリーダーは公式を与える違いがあると考える。日本の学校教育だと答えを与えるので、自分で答えを導ける(作っていける)思考にはなりにくいのではないか。

自分自身への自戒を込めて、子供には答えではなく、答えの導き方(作り方)を教えたい。

人を育てられる人は答えを教える(魚を与える)のではなく、こういった答えを導くための方法(魚の釣り方)を教えるのだから。

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