「くるみっこ」が人気な理由

義理のお母さんが「くるみっこ」が好きらしい。「くるみっこ」ってパッとイメージが出なかったのでググってみるとリスのパッケージのお菓子。

横浜に買いに行ってみると、売り切れ状態。聞くところによると「くるみっこ」というお菓子はいつも「本日入荷分はすべて完売しました」という立札が出るほど人気商品らしい。

お年賀として「くるみっこ」を贈ろうとしたところどこも売り切ればかりだ。こりゃまいった。だがそこでふと思った。

「くるみっこ」ってそんなに美味しいのか。

結論から言えば、「美味しいが、それよりも美味しいお菓子は存在する」ということ。

「くるみっこ」は以前食べたことがあるらしい(奥さんから聞いた)が、食べたことすら記憶に残ってない。

というのもその時の僕は「くるみっこ」の人気度を知らなかったから"魔法"がかかっていなかったから。この"魔法"はクオリティではなく、売り方から作り出される。今後の人口減少が確実な日本で商売をするには非常に参考になると思った。

確実に「くるみっこ」より美味しいお菓子は存在する。だがなぜ「くるみっこ」は人気商品となって(いるように見え)るのか。そこを考察してみる。

結論、「くるみっこ」は予約が取れないヘッドスパの「悟空のきもち」と同じビジネスモデルだ。クオリティの高さよりよりも売り方が上手い。

「いつも売り切れの」「いつも予約がいっぱいの」という「希少性」を感じさせる形容詞ビジネスだ。

なので、商品のクオリティそのもの(what)よりも、売り方(how)が上手い商品に分類される。「くるみっこ」が人気なのは「いつも売り切れの状態」にしておくからだ。

「希少性」の魔法にかかっていると、それを消費したときの満足度が高まる。なのでまた買いたくなる。メンタル設計ができている。

これほど人気ならばなぜもっと生産量を増やさないのか。もちろん製造側はもっと造ろうと思えば作れる。

だが意図的に生産量を抑えている、もしくは1日に販売する上限を決めている。「いつも売れ切れ状態」を作れるようにしている。この状態を作ると、毎日コンスタントに売れるので、販売量を増やすよりもトータルでの販売量を増やすことができる。

確実に「いつも売れ切れ状態」が発生する数量を抑えた上でギリギリの数量に抑えている。なぜなら「1日の販売量を増やさないことでトータルの販売量が増える」からだ。

例えば、毎日100個しか売らず、365日売れれば36,500個/年の販売量だ。一方、生産量を毎日1,000個を売った場合、「いつも売り切れ状態」が作れない。

そうなると、「いつでも買える商品」に成り下がり、毎日10個しか売れなくなる。そうなると3,650個/年の販売量となって在庫もかかえるのでトータルで見ると大赤字だ。

一度「いつでも買える商品」に成り下がってしまうと魔法が切れるので「いましか買えない商品」には2度と戻れない。不可逆的な変化である。

日本の人口は減っていく未来は確実なので、「くるみっこ」のように1日の販売量を意図的に少なくして「完売状態になる数量」しか販売しないというのはめちゃくちゃ重要な売り方だ。

毎回売り切れになるので、生産量を増やせば売れるのでは?は短期的であり、中長期的にビジネスしていくためにはそれでは都合が悪いのだ。

「くるみっこ」が人気なのはクオリティではなく(もちろん美味しいことは美味しいが)、「いつも売り切れ状態」だから美味しいフィルタがかかるし、「いましか買えない商品」にすることで購買促進している。

「いつでも買える商品」をいま買う人はいないが、「いましか買えない商品」をいま買う人はいる。それは商品のクオリティではなく売り方なのだ。

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