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LTspiceでSパラメータの基礎を体験(スミスチャート編)

LTspiceなどのSPICE系アナログ回路シミュレータの基本は回路動作を再現し、結果を(測定器に置き換えれば)オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、電圧計、電流計のように表示します。

しかし、周波数が高くなると回路動作自体を再現することが難しくなり、普通はSパラメータを利用してシミュレーションを行います。測定器で言えばネットワークアナライザに相当します。

内部動作を回路的にシミュレーションしないSパラメータは、ある意味、入出力特性しか扱わないIBISモデルに近いかもしれません。

LTspiceには類似パラメータとして「Yパラメータ」「Zパラメータ」などもありますが、今回、ここで体験するのは高周波で一般的な「Sパラメータ」とします。


■Sパラメータについて

Sパラメータとは端子に入力した信号(入射波)と、そこから戻ってくる信号(反射波)の関係を表しています。

具体的なSパラメータの定義は以下の図のようになっています。例えばPort1のインピーダンスをZinとすると、この入力端子(Port1)に接続するブロックの出力インピーダンスがZinになっていれば反射波は存在しません。言い換えるとb1=0と表現できます。

Sパラメータの関係式

Sパラメータ付属の番号は最初の数字が出力端子二番目の数字が入力端子いうイメージです。

例えばS11なら端子1に信号を入れて端子1から出てくる信号、S21なら端子1に信号を入れて端子2から出てくる信号のイメージです。

Sパラメータを求める場合、例えばS11はa2=0と言う条件があります。この意味は「2 port Net-work」の出力インピーダンスがport2の端子に接続される負荷と同じになっていると言うことです。

最初から具体的にイメージをするのが難しいSパラメータの定義が出てきましたが心配しないでください。十分に理解できなくても、ツールとしては大いに役立つパラメータになります。

入出力インピーダンスが共にZoで使用される回路では
 S11=入力インピーダンス
 S21=順方向挿入損失
 S12=逆方向挿入損失
 S22=出力インピーダンス

を直接、表すパラメータになっていて非常に使いやすくなります。

以降、具体的な設計例を体験しながらSパラメータのイメージを膨らませていきましょう。

■ネットワークアナライザとは

Sパラメータを扱うには、先ず、パラメータを測定する必要があります。一般にはネットワークアナライザと言われる測定器は使って測定します。

測定ブロック「DUT」を以下の図のように接続して測定しますが、ネットワークアナライザの種類によっては、「パワースプリッタ」や「カプラー(方向性結合器)」が外付けになることもあります。

ネットワークアナライザ

測定結果は後程、説明する「スミスチャート」上などに表示され、マッチング調整などに使われます。

■LTspiceでSパラメータを求める設定

Sパラメータの測定法等がイメージできてきたと思うのでLTspiceを使ってSパラメータを求めてみましょう。

Sパラメータを求めるには「.netコマンド」を使います。負荷の抵抗をR1、信号源をV1とすると設定の仕方は2通りあります。

.net I(R1) V1  
    or
.net I(R1) V1 Rin=50 Rout=50

前者の場合は信号源のインピーダンスは信号源設定でRser=50、負荷インピーダンスもR1=50と実際に接続しておきます。

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