二回目の緊急事態宣言は効果があったのか?

緊急事態宣言の効果はあったのか?
緊急事態宣言は2回出されたが,2回目について効果があったのか疑問視する声が大きい。実際に感染者は減ったわけだが,さて効果はあったのか?あったとしたらどれぐらいなのかを考えてみる。

1年ほど前のnoteで,各国や各県の新規感染者の増え方をプロットした。基本の考え方は,新規感染者△Nはそれまでの感染者数Nに比例するので,その関係は△N=aN (aは拡大率)と表される。それゆえ拡大率a=△N/Nとしてプロットするものだった。

△NやNは本来は市中にいる感染者だけど,それを求めることはできないので,△Nは新規感染者数,Nは△Nの総和つまり累積感染者をとった。実際の市中の数も概ね比例関係にあるとみて大きな違いはないだろう。
まずはこの計算で,1年分のプロットしてみる。空港検疫分を除いているのは,昨年5月末に感染者数が数十人レベルになったときは空港検疫分の数人が誤差となるため。また,東京は累積で日本全体の1/4を占める「大勢力」であるため,東京を含む場合と含まない場合で示した。

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第一回の緊急事態宣言は4/7に7都府県に出され4/16に全国に拡大,5/14に39県で解除,5/21に大阪・京都・兵庫で解除,そして5/25にはのこりの東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道で解除された。図で5月末から6月下旬は拡大率が最低の0.001(0.1%)近くまで下がっており,緊急事態宣言に十分な効果があったように見える。

しかし,直後から反転。拡大率は一貫して東京がそれ以外の地域を上回り,いわゆる第2波に突入していく。このときはGo Toキャンペーンなどが行われたが,収束策は打たれなかったにも関わらずある程度に収束し,10月末頃まで小康状態が続いた。


11月初め頃から東京以外の地域が牽引する形で感染者が増え始め,1月頭頃にピークに達する第3波となる。拡大率は低めだが,これは例えば100人から10人増えると10%増,1,000人から100人増えても同じく10%増と理解できる。


第2回の緊急事態宣言は1/7に1都3県にだされ,1/13に11都府県に拡大,2/28に6府県で解除され,3/20に残り1都3県も解除された。拡大率はおよそ2月末が底になっており,以後は拡大の一途をたどっている。東京都の拡大率はこの間全国平均より低く推移している。

activeな感染者数(入院者)を用いてみる
まず最も簡単に数値化できる日々の感染者数と累積感染者数を用いたが,感染の初期はともかく,感染が1年も続く今となって,昨年の感染者数が今の感染者に関係するという前提は現実的ではない。そこでもう一つの方法として,感染者から退院した人の数を引いた値,英語で言えばactiveな感染者数(入院者)を用いてみる。感染し回復した人は免疫を持っているので再び誰かに感染させない,という前提をおいてみる(実際には再感染があるけど多くはない)。

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2つのプロットを並べる。感染初期は同じだが,全体に値が高くなり累積感染者を用いた場合より,傾きが穏やかになる。拡大率は数%をうろうろしているというのが,より現実にちかそう。


驚きの一つは,一回目の緊急事態宣言に対する拡大率で,累積者ベースなら緊急事態解除後しばらく拡大率は低いままだが,入院者ベースだと解除された直後の5/27頃には上昇に転じている。緊急事態宣言の効果がよりはっきりと示されている*。
* 「行動の結果が感染者数に反映されるのは2週間後」と誤解してる人が多い。感染から発症まで「一般に3-10日」とされているので,発症した日に結果がでるなら最短3日目ら。東京都は「検査から結果まで3日程度かかることがある」としているので,最長は10+3で13日。つまり行動から「3-13日間後」に結果として示される。

 第2波は策が打たれなかったため,傾きが穏やかで,かつ,第1波では1%帝都度まで下がった感染率は,4-5%程度までしか下がっていない。

 第3波は,第2波より傾きはほんの少し急だが,第1波にはとても及ばない。底も第2波と同程度の4-5%に留まる。10%(0.1)以下を線形表示すると,よりはっきりする。

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7日間移動平均でみると,底を打ったのは3月初め, 2/28に6府県で解除された直後のことである。その意味で2月中は宣言の効果はあったとも言える。しかし,傾きが第2波と変わらないことから,宣言解除後の弾け方(反動)の方が問題の可能性もある。1都3県は3/20まで解除されなかったが,累積者ベースでみると感染率は全国平均より低めで,若干の効果はあったらしい。

以上,残念ながら,二回目の緊急事態宣言の効果はほとんどなかったと言える。しかし,これは薬の効果がなくなるような他責的なものではなく,行動を第一回のようには抑えられなかった行動の結果であることは理解しておく必要がある。経済効果などそのことの可否はここでは問わない。

以上

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