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続・京都〜日光を9日間で走った話(その3)

位置について。用意、スタート!

スターターがいないかわりに上記の心の叫びと共に、私は4月29日の8時40分、京都御所を日光に向けてスタートを切りました。
去年と違い今年は決められた期間内のうち好きな時間にスタートして良いことになっています。良く言えば融通がきいた運営、悪く言えばほったらかしとも言いますが、多くの人は前日に京都入りし、かなり早くからスタートをしていた模様。私は早朝入りのため同日スタート組ではほぼ最後尾での出発となりました。天候は曇り空、今日は午後から雨が降るとのことでそれまでにできるだけ走っておきたい所です。

スタート前の京都御所。今年は受付もスターターもなく、一人で勝手にスタートします。
首に巻いているのは参加賞のBUFF。



途中の山科までは時折青空も覗く絶好の行楽日和で、去年も通った道のりである安心感もあり順調に進んでいきます。
しかし、今日の行程の半分ほど進んでも同日スタート組の誰にも会わないため、さすがに少し心配になってきました。本当に今日大会が開催されているのか? 私だけパラレルワールドにいるなんてことはないのか?

といった並行宇宙学説に思いを巡らす間もなく、30キロ過ぎに今大会初の同業者にようやくお会いすることができました。聞くと三重から参加されており、今日はゴール後に一旦自宅まで戻り、明日朝また続きからスタートするとのこと。関ケ原で落ち武者に首を狩られることを非常に気にされていたようなので、私はどちらかというと塩尻峠で山賊に注意したほうが良い、と去年の経験を踏まえしばらく楽しく会話し、その場は別れました。


雨の醒ヶ井宿。とても風情があるきれいな町並み。中山道はこうした路面を色付けしている宿場町が多い


そして午後4時過ぎ、とうとう雨が降り出しました。そして日暮れ。
この旧中山道の道は国道に比べ車通りは少ないものの、道路脇の側溝の蓋が所々空いており、去年はそこに落下し初日から怪我を抱えたまま走ったという苦い経験があったので、今回はライトを照らしながら注意深く進んでいきます。
すると、ライトの向こうに何やら人影が見えます。こんな雨の日にリュックを背負って歩いているとは同業者かと思い追い抜きざまに挨拶をすると、なんと中山道を一人で草津から歩いて野宿をしながら旅をしている方なのだそうです。今日は彦根近くの公園で寝る予定なのだそうで。

中山道を歩いて野宿で一人旅!

私のように夜はホテルで風呂に入って寝て旅をするというのはそれに比べるとなんと文明の利器に汚されているのだと思わずにいられませんが、しかし中山道に魅せられた者同士、初対面でも非常に話が弾みます。
旅は道連れ世は情けなどと申しますが、やはりこうした出会いというものが我が人生を鮮やかに彩ってくれるのです、いや〜楽しい、、と思っていたその瞬間、私は宙を舞いました。

次の瞬間、私は去年に引き続き、去年落ちた所と似たような側溝に見事に落ちていました。

「大丈夫ですか!すんまへん!すんまへん!」

旅人の方は非常に恐縮して謝ってくださいましたが、話に夢中になって注意を怠っていた私が悪いのは、明日また太陽が東から登ることと同様自明の理でありましょう。
幸い、被害は擦り傷のみなので、コンビニで絆創膏を買って貼り付ければなんとかなりそうですが、しかし今日の風呂は厳しいかもしれない。
ほどなくその旅人の方と別れ、私は今日の宿泊先のホテルへ行きました。

ああ、我が辞書には学習という文字は無し。

(次回へ続く)

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