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掌編小説まとめ/tononecoZine

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掌編小説のまとめです。
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#小説

夜明け前、金木犀

 早朝、鳥が鳴いている。昨日ひさしぶりにお酒を飲んだからか、まだ薄暗いうちに目が覚めた。…

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満月の子

 湖のほとりの神社で、狛犬の赤ん坊が産まれた。満月の夜だった。列島の北から南まで、さまざ…

あの星の話し

 あの頃は本当に何にも考えてなくって、平和だったってことかなぁ。いや、でも文化のあるとこ…

透明たゆたえば

 つらくなったら透明の気持ちを想像します。くらげのような半透明の生き物とかじゃあなくて、…

晴れのち雨

 傘に友だちができたのだけれど、その相手が帽子だったものだから仲良くなるたび傘は憂いた。…

今宵おかしな子うさぎと

 おかしい。今日はお天気の良いいつもの週末で、特に変わったこともなかったのに、突然子うさ…

春雨(はるあめ)

好きな人に振られり 振られる 振られれば 振られるとき いや、 振られる 振られれ 振られよ 振られりるれろ… このくらいには頭のおかしい事を口走ってしまう心理状況にある。 振られた。重かった、のだそうだ。わたしの気持ちが。 桜の季節でひさしぶりの恋で、わたしは完全に浮かれていた。 突然現れた魅力的な男。 具体的には、長身で細身の派手な柄シャツが絶妙に似合う眼鏡の男に、秒で心酔した。 姿かたちと話し方がツボすぎたのだ。 でも、季節性の恋は春の終わりに、みごと散っていっ

君たちはどうかしている

 引っ越し前日の夜、爆睡していた。理由は、しこたまお酒を飲んだから。わたし達はどうかして…

清い川は流れて

 コーヒーを飲みたいと思う朝は、幸運を運んでくる。いつもより、からだと心のコンディション…

猫溜まり

 きのう仕事で些細なミスをした。周りから責められている訳でもないが、ただ誰よりも俺が自分…