親父杯の楽しみ方について(1)

(以前書いたものを2022-23大会対応に更新)

グランツーリスモのユーザーイベント「親父杯」の概要が2月3日に発表されました。今年で4回目の開催となります。

主催・運営のNiShiKeNさんのお目こぼしをいただいて、大会映像などを作らさせていただいていますが、私の立場はあくまでも一参加者でございます。ここでは、参加者視点で見たこの大会についてのお話を。

今大会は、タイムトライアル予選が2月11日開始となっていますが、事実上、大会の火ぶたは既に切って落とされている状態で。
開催を待ちわびていた親父達が、待ってましたと早速、猛烈な走り込みを開始しています。普段はツイートの少ない親父達が急にエントリー報告をして意気込みを語り、予選のタイムアタック動画やスクショをばしばしアップしています。親父杯を知らなかった方は、急激な盛り上がりに驚かれているかもしれません。

それだけこの「親父杯」が魅力的な大会である証かと思います。この大会の魅力の一つは、参加資格が30歳以上(エキシビション除く)なので、概ね参加者が形成するコミュニティの雰囲気が落ち着いていること。工夫次第で、同年代の気の合う仲間や、居心地のいいグループを見つけられる可能性はとても高いと思います。

その上で、この大会を奥深いものにしているのが運営のNiShiKeNさんが編み出した絶妙な大会レギュレーション。具体的にはタイムトライアル予選(以下「TA予選」)です。

4回目のこの大会、優勝者決定(勝ち上がり)のシステムは回によって変遷がありますが、TA予選はコースは変われど4回ともほぼ同じ形態で実施されています。それだけ完成されたルールと言っていいと思います。

はっきり言っちゃうと、総合優勝を真剣に狙う選りすぐりのトップ層以外の参加者にとって、親父杯の楽しみの多くはこの「TA予選」に凝縮されていると思います。

詳細は、公式ドキュメントを御覧いただきたいのですが、TA予選は指定期間中、自分の選んだタイミングでアタックをし、1回のアタックで最大4周のタイム計測ができます。最大2回までアタック機会が行使可能ですが、ただし2回目を行使した場合は1回目のタイムは無効。

このルールの特徴として、個人的に思うのが、とても親父達の状況に合っているし、非常に公平だということ。
大抵のイベントは、指定の日時にレースを実施するものですが、仕事や家庭で多忙な親父達。せっかく猛練習を積んでも当日急な用事で泣く泣く欠場ということもありえます。

しかし、このイベントではNiShiKeNさんの尽力で豊富なアタック機会が設定されますので(ここはホント頭が下がります)、練習成果を披露できずに欠場という心配はほぼありません。

優勝者を決める決勝は日時指定のレース形式ですが、都合で決勝に出られなくてもTA予選のタイムで自分の力はアピールできますので、多忙な親父達にとって納得感のある仕組みになっています。

そしてこのTA予選は非常に公平性に配慮されている。イベントに備え猛練習を積んだのに、肝心のレースで1周目1コーナーでもらい事故で下位終了。そんなやるせない経験をした方もいるのではないでしょうか。

その点、この親父杯のTA予選はいわゆるスーパーラップ形式の実質単走アタック。他の車の影響を受けることはほぼありません。
たまに前を走行する車がクラッシュ、イエローが出て集中が乱されることはありますが許容できる範囲ですし、様子を見て同走車がいない(少ない)タイミングを選んでアタックすればリスクは相当低減できます。この点でも非常に納得感の高いシステムになっています。

一方で、参加者は配信されているという自分に注目が集まる環境のもと、限られた4周でタイムを出すことを求められます。実はこれがデイリーレースや公式戦とは正直比べ物にならない、尋常じゃない緊張感を生み出すのです。
はじめてこのTA予選に臨んだとき、ほとんどの方はこう思うのです。「何だよこれ…」と。

人によっては、手が震え、足が震え。ハンコンの操作もままならない。親父達は「こんなに緊張するのはいつ以来だろう…」と心の中で呟きながら、親父杯ファーストアタックに出撃していくのです。

2回目のアタックともなれば、更にそのプレッシャーは倍増します。1回目以上のタイムを出さなければという思いが、ハンドルを握る指をさらにこわばらせる。

相当な練達の方でも「何があるかわからないから、なるべく2回目はやりたくない。1回目で納得できるタイムを出したい」と話されるのを何度も聞いているので、レベルは違えどプレッシャーがかかるのは皆さん一緒かと思います。

猛烈なプレッシャーにさらされるTA予選、まさかのスピンや、思うように体が動かずベストと程遠いタイムでアタックを終えられる方は珍しくありません。私も知り合いのアタック失敗に言葉を無くした記憶が何度もあります。

逆にアタックを決めた時の達成感は何物にも代えがたい。自分自身、2019年は不完全燃焼に終わり、逆に2020年、2021年はほぼ会心のアタックができたんですが、あのときの体を突き抜けるような快感はいまも忘れられません。

そして、親父杯に出た人たちはみんなそのTA予選の緊張を知っているのです。だから、仲間の喜びも無念も、同じ経験をした仲間として深く共有し、わかちあえる。この共通の体験の存在が、親父杯で意気投合した仲間とのつながりを強くし、コミュニティを作り出していると私は思っています。

そして、経験者たちは、親父杯TA予選が自分が試される場所であることを嫌というほどわかっているので。あの緊張に立ち向かうには練習しかないことを身に沁みて知っているので。さらにライバルが同じ考えでいることを完全に確信しているので。

だから、概要発表と同時にアホみたいに猛練習をはじめているのです(笑)