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今年度の振り返り【調査研】

市内で授業力向上に関する調査研究部会(以下、調査研)に参加している。
各校で自分から手をあげた教員が14名参加している部会だ。
そこで3〜4名のグループに分かれて、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」という何とも広すぎるテーマで研究を行っている。

僕らのグループのテーマは
「つくり手を育てる授業づくり」
・選択する
・ペースの違いを認める
・カンファランスアプローチ
という3つのキーワードを意識して実践を1年間してきた。

その中で実践の足掛かりとしているものが
僕が「作家の時間」
中学校数学科の方が「数学者の時間」
そしてもう1人の方が「社会科ワークショップ」
つまりワークショップ授業だ。

この調査研で、僕がLAFTで学んでいることを自分の自治体でも取り入れていけていることに大きな充実感を感じることができている。

今年度は互いの授業を1度ずつ見合ったことで共通のイメージを擦り合わせることを目標としていた。
そして、今日は今年度の振り返りをすることでイメージを言語化した。

つくり手とは?


つくり手とは、つくる⇄わかるのサイクルを自分で回すことができる学習者ではないだろうか?
また、自分の学びをつくっていくことができる人≒自立的な学習者ではないだろうか?

3つの授業とも子どもたちが何かしらの成果物をつくる授業だ。
作文・数学の問題・発表資料
それをつくり、共有する過程で子どもたちは学んでいる。
また、このサイクルを自分自身で回していくことも特徴的だ。
枠組みは決まっているのだが、何をするのかを指示されることはない。
自分で決めて学びを進めていく。
体育や図工に近いのではないかという話も出た。
そのため終わりを決めるのも自分自身になる。
3つの授業とも共通していたことが、子どもたちが授業時間以外にも自分から学ぶ姿が見られたことだ。
給食が終わった隙間時間。休み時間。さらには家に帰ってまで取り組んでいる子もいた。
このような様子は今までの授業ではあまり見られなかったことだ。
つくることを通してわかる。
このサイクルを自分で回せるように少しずつ子どもたちはなっていっているように思えた。
このような経験をしていくことで、子どもたちは自分の学びを自らがつくっていく存在になっていくのではないだろうか?
それがきっと自らの人生を自分でつくっていける人になるペースになると思う。

自立とは依存先を増やすこと

小児科医であり、当事者研究でも知られる熊谷晋一郎さんの言葉です。
この言葉を授業を参観した先生が教えてくれた。
これは目指す子どもの姿を考える上で大きな意味をもつ言葉だった。
「つくり手」≒「自立した学習者」だとすると、1人で黙々と学べる子ではなく、必要に応じて人を頼ることができる子をイメージすることをメンバーで共有した。

今回の僕らの授業にも友だちを頼る姿は見て取れた。
頼り方が上手いかどうかはさておき、自分から頼るという経験はできていた。
その経験を繰り返さなければ、きっと適切に他人を頼ることはできるようにならない気がする。
もし、「自力だけで」解決することが授業で求められる事が多ければ、人を頼ることは大切なことだと思えないだろう。

また、依存先を「増やす」ということが大事だと思った。
依存先が「たった1人」では、頼る方も頼られる方もしんどい。
人へ依存するバランス?も上手くなっていくことはきっと大切なことだろう。

選択する

このワークショップ授業では、子どもたちが様々な選択をする場面が多く設定されている。
・取り組む問題やその難易度
・自分の興味関心にあったテーマ
・どのように発表するのか
・取り組む場所
・誰と一緒に取り組むのか
などなど。

教師は子どもたちが選択をできるように、授業の枠組みを整えていくイメージだ。
「なんでもしていい時間ですよ。」
では、きっと選ぶことは難しい。
選択肢が多すぎても、選ぶことに迷ってしまって結局何もできない。
自分で決めるということを尊重しつつも、まずは自分で決めやすい環境を整えていくことが大切なような気がしている。
自分で決めることを繰り返していくうちに教師が整えていた枠組みなどとっぱらい、力強く自分の力で学び続けていくことができるようになるのではないだろうか。

また、3人とも共通していたことが子供たちの学びが授業時間外でも起こっていることにあった。
給食を食べ終わった隙間時間。休み時間。家に帰ってからの時間。そんなところでも学びは続いてた。

さらに学年が超えても学びは続いていたことも発見した。
昨年度、2年生で作家の時間を取り組んでいたのだが、今年度になっても書き続けていることを知らせてくれる子が3名ほどいた。
その中の1人は、作家の時間×プログラミングでアニメーションを作成していた。
それを見せてもらったのだが、想像以上のできで感動してしまった。(内容は感動とは程遠いコメディ要素の強いものだったが)
しかも、元担任に聞くとその活動はは横のつながりで波及しているらしい。

自ら選択することを続けていく経験を重ねていくことは、自分の学びをつくっていくことにつながっていくと感じられた。

ペースの違いを認める

「これは教師のスタンスだよね。教師がコントロールするのでなくて、子どもがやっていることを面白がれることが必要だね。」
と、メンバーが言っていたことにとても共感とすると共に、どうして、このスタンスが教師は取りづらくなってしまうのかということを考えてみた。

その原因の一つは一斉授業のスタイルだ。
もちろん一斉授業の中でペアワークやグループワーク、子ども同士での対話はあると思う。
しかし、そのコントロールをしているのは教師だ。
そうするとその教師のつくる波にうまく乗れていない子は「違うことをしている子だ。」と教師からも周りの子どもたちからも思われてしまう。

一斉授業の中で算数の問題を解いているときに、全く違うページの問題を解いていたら「なんかわかっていない子」という風に教師も他の子供も感じるだろう。

しかし、ワークショップの授業であれば、その違いは面白さに変わる。
作家の時間で言えば、同じ作品を書いている方が違和感を感じるほどに。

これはどちらが良い悪いということではないと思う。
仕組みとして、一斉授業はペースの違いが認められにくいし、ワークショップではペースの違いが面白さになりやすい。
ということをどちらもやっていて感じる。

また、ペースの違いを大事にすることで長期スパンで子どもの変化を見取ることもできた。
45分の1時間で見てしまうと何もかけずにいた子が、3ヶ月の間で書けるようになった。
なんていう成長を見ることができるのもこの授業の特徴なのかもしれない。

取り組みのペースの違いもあるように、人には成長のペースの違いもあることに気づける実践のように感じている。

カンファランスアプローチ

この授業では、教師がずっとMCをすることはない。
子どもたちが学んでいる側をぐるぐると練り歩き、子どもたちの様子を観察している。
そして、介入するときには、子どもに質問をすることが基本だ。
「今どんなかんじ?」「この後どうしたい?」
そのような形で子どもが考えている事を聞き出す。
そこでの対話をカンファランスという。
一人ひとりの現状を把握し、次の行き先を子どもと一緒に考えていくイメージだ。
また、このカンファランスは教師と児童生徒だけではなく、児童生徒と児童生徒という関係性でも行われていくことで、学び合うコミュニティの醸成につながっていっている。

このカンファランスの中で学んでいることはそれぞれ教科特有の知識や考え方もあるのだがそれ以外のところにも派生していた。

数学の問題づくりでは、生徒がつくる問題に破綻が起きると思い、その事を質問してみると
「それがすごくいい学びの機会になるんですよ。お互いの問題をよく吟味するようになったんです。どこの条件がよくないとか、この設定を変えれば上手くいくのではないか?というような話をするようになりました。これは思ってもいなかった効果でした。」
と答えてくれた。
つまり、生徒たちが物事を批判的に見る姿が見られたと言う事だと思った。
さらにその姿が学校の校則についての見直しにも派生していったとも話してくれた。

また、子どもたちの様子から授業改善に繋げていくこともこのカンファランスでは可能だ。
社会科ワークショップに取り組んだ方は、前回見せてくれた授業の次の単元のワークシートを持ってきてくれた。
彼は前回の単元で子どもたちがつくる問いが弱いことに課題を感じていた。
そこで、単元の初めにある程度網羅的に調べられるワークシートを用意し、その過程で生まれてくる問いを探究するという形にアップデートしていた。

この子どもたちの様子を見取ることで授業を改善していくことができるのもワークショップの特徴だと思う。
他の形式の授業でもできるとは思うのだが、教師が見取る時間を十分に確保する形だからこそ、どのように授業を変えていくか考えられる余白ができると思っている。

来年度へ向けてどうしていくのか?

以下、グループメンバーへの伝達事項
・4〜6月で授業をもう一回ずつやる。それを市内の他の先生たちにも公開する
・中間発表でどのようなフィードバックを受けたいのか明確にする。
・発表はどのようなものだと分かりやすいのか検討する。それぞれが出店形式で行う。実践の概要はポスター。事例は動画。それで気になったことを実践者に聞けるようにする場をつくる。こんなイメージはどうだろうか?→見てもらった人にどう思ってもらいたい?自分もやりたいと思ってもらいたいのか?それともいい実践だなぁと思ってもらいたいだけなのか?
・実践として、磨いていかなければならないところを明確にする。現状での課題にもっと目を向ける。
・3つの要素は「選択」「ペースの違い」「カンファランス」でいいのか?他に適切な言葉はないか?



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