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遺書めいたもの

あなたが死んだらどうする?
真剣な顔で嫁がそんな話をした。なるほど、確かに大事な話だ。お金のこともあるし、子供をどう育てるかという事もある。再婚できるなら是非してほしい。そんな事を話し始めると「ちがう、そうじゃなくて。闇としてお化け屋敷風のお葬式とかした方が良いの?」と真剣な顔して聞いてきた。どんな事をしたいか、分かりやすいように遺書に書いといてくれとお願いされた。
どこかで私たちは、お互いのボタンを掛け違えてしまったのかもしれない。
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確かに、私が今死んだら社員の久保田と向後は何も言わずに私の遺骸を引き取りにきて、なにかしらメカを仕込みそうな気がする。それが弔いだと思い込んでる節がある。ヤバい。今死んではいけない。からくりサーカスにされてしまう。善意で。
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先に言っておくと、普通で良い。安いので良い。社員が遺骸をひきとりに来たら塩撒いて追い返してほしい。
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しかし、まさか嫁がそんな事を割と本気で心配してたとは思わなかった。「ブランディングとかあるでしょう」と言われたが、そこまでは求めてない。そんなブランディング手法は教科書にない。
確かに例えば鳥山明氏が亡くなったらお葬式はドラゴンボールで彩られる気がする。J・K・ローリング氏が亡くなったらホグワーツ風味になる気はする。
でも、八百屋の大将が亡くなっても胡瓜とナスの精霊馬でデコレーションすることはないだろうし、ホラープランナーが亡くなってもお化け屋敷装飾が必要とされることは基本的には無い。縁起以前の問題である。
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もう若くはない。うえに比較的不健康な生活をしてるので、死は決して他人事ではない。一応幸せだなと思える人生ではあるが、子供もまだ小さいし、やりたいことも神龍10回分ぐらいある。息子たちと一緒にお化け屋敷にも行きたい。
周りの人にもっと感謝を伝えたい。人付き合いは悪いが、嫌いな人はいない。ほぼ全ての出会いにご恩を感じている。
もう少し野菜を取ろう。転売以外でリングフィットアドベンチャーを手に入れよう。
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「来年死ぬとすればそれまでに何をするか」は重要な命題だ。定期的に自分に問いかけるが、まだ究極のホラー作品は作れていない。
生前に結果を残さないと、私の死をもって何かしら完成させられる恐れがあるので気を引き締めていこう。


来世、救われます。