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忘れていく記憶たちの中で
The Waterboysというスコットランドのバンドに、「The Whole Of The Moon」という歌がある。1985年にドロップアウトされた曲。
今から36年も前の曲だ。
この曲を聞く度に、思い出す場面がある。
それは、付き合っていた人と、長距離バスの中、1つのイヤフォンを2人で分け合って、この曲を聞いている場面だ。
しかも、バス席の先頭に座っていたボクらをバスの前から見た場面。
だから、ボクらが何が見えていたのかは、わからない。
ただ、2人がこの曲を、1つのイヤフォンで分け合って聞いている様子だけがわかる場面。
いつ行ったのか。季節さえもわからない(雪はなかった)。どこに行ったのか。どれぐらい行っていたのか。まったくわからない。なんとなくそのバスは山間か、渓谷沿いを走っていたことをうっすらと覚えているぐらいだ。(付き合っていた人のことは、もちろんよく覚えている)
ただ、確実に言えることは、本当に幸せな時間だったということ。
もちろん今でも幸せだと思う時間はたくさんある。
あるけれど、この場面の幸せは、不安も、畏れも、マイナスなことが、なんにも見えていない幸せだった。
歳をとるということは、良くも悪くも経験を重ねるということ。
だから、以前より安心することや、楽観できることも増えるけれど、一方で、不安や畏れも増えていく。
だから、
不安や惧れを抱きながら、幸せを感じることは避けられないし、
逆に、
不安や畏れを抱きながらだからこそ、幸せのありがたさを感じられる。
ボクは、これからも、忘れていくことがどんどん増えていく。
それは、基本的には悲しいこと。
でも、この曲で思い出されるこの場面は忘れたくないし、きっと忘れることはないだろう。
「忘却なくして幸福はあり得ない。」(モーロア)
忘れていくことについて、肯定的にとらえる人も多いけれど、ボクは、なかなかそうはなれない。
もちろん忘れたいことはたくさんあるけれど、忘れたくないこともたくさんあるから…。
でも、こんなふうに思い起こされる場面があるなら、忘れていくことが増えていっても大丈夫な気がする。
振り返れば、ボクには、こんなふうに思い起こされる場面がいくつもあるのだから。
これは、写真じゃないからこそ、こんな思いをもてているんだろうな…。
The Waterboys「The Whole Of The Moon」
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