ここに来て激戦州が増えるというアメリカは、いよいよわからない
さて、前回のエントリー『今さら聞けない「大統領選挙の仕組み」と「激戦州」』では、改めて大統領がどう選ばれ、激戦州になぜ注目しなければならないのかをお話ししました。
激戦州がどこにあったのか、下の図でもう一度おさらいしておきましょう(出典はすべてfivethirtyeight.comから)。州の色が薄ければ薄いほど、今回の選挙でものすごく競っているということを指します。
では、もう一つ面白い図を。下の図は、アメリカ合衆国の地図なのですが、州の大きさが面積とは違う何かを表しています。
そう、これは「選挙人」の数なんですね。選挙人についても、前回のエントリーで簡単に説明しましたが、人口ごとに各州に割り当てられたポイントだと思ってください。アメリカ合衆国全体で538ポイントあって、その過半数である270ポイントを取った人が大統領になるのですが、カリフォルニア州やテキサス州など、人口が多い州には55ポイントとか38ポイントが割り当てられています(日本に置き換えるなら、47都道府県にポイントが配られて、東京や大阪は人口が多い分たくさんポイントが割り当てられているようなもんです)。
州ごとに投票が集計され、その州で最多得票だった候補者がすべてのポイントをもらう原則のため、こういう大きなポイントの州はきちんと取っておかないといけません。つまり、上の蜂の巣みたいな図は、大きければ大きいほど今回の選挙でたくさんのポイントが入る州だということ。
あ、”270towin.com”から各州の選挙人数が入った地図も参照しておきましょう。(激戦州が上の図とちょびっと違ったりするのは使っているデータなどの違いです。)
といっても、日本の都道府県と大きく違うのは、アメリカは連邦制の国であって、州はもはや一つの国というほど、法律も異なれば、文化も、住んでいる人種の割合すら違います。したがって、選挙がいつ来ようと民主党が勝ってしまう州や共和党が勝つことになる州が存在しまして、そこはもう両陣営とも固定州として計算にいれているんですね。
激戦州と安定州
そんなわけで、下のような図を作ってみました。これは1990年以降、過去5回ないし6回の大統領選挙で民主党/共和党が勝った州の選挙人の数を並べたものです。最新版で丹精込めて作りましたよ^^
少し文字が小さくてすみません。なんとか大事な数字と文字は太字にして見えるようにしたのでご了承ください。
この表は、1990年以降に行われた6回の選挙で各党が5回あるいは6回とも勝利している州及びその選挙人数を書き出したものです。つまり、「おそらく今回も相当な確率でそれぞれの政党候補者が手にするであろうポイント」がこちらです。これだけみると、圧倒的に民主党のヒラリー・クリントン氏が有利だとわかりますよね。だって6回勝利州でいうと140ポイントもスタート地点で差があるわけで、5回勝利州でも100ポイントほどの差があるわけです。
実際、ヒラリーさん相当有利な選挙なんです。別の記事で詳しく書こうと思いますが、人口動態的にこれだけ多様化してきたアメリカでは、マイノリティへの政策や再分配に気を遣う民主党の支持層が増えていくわけです。
そして残った州が激戦州と言われるところでした。
ほぼ確実に固定州として242ポイントは得られると思われたヒラリー陣営の作戦は、過半数である270ポイントの作り方として、フロリダ州(29p)だけ落としても勝てますし、オハイオ州(18p)+コロラド州(9p)だけでもいいという勝ち戦に見えました。
ところが!候補者にドナルド・トランプ氏が選ばれるような異例の選挙、実は支持層が大幅に変化したことにより、この単純な構図が今回は当てはまらないことがわかりました。激戦州と固定州が変わってきたのです。
激戦州が変わった!増えた!!
FiveThirtyEightや270towinが出しているUp-to-dateの情報をみると、激戦州が実は変わっていることに気づきます。
最新では、上記の紫色の州までもが激戦州になりました。その結果、トランプさんとヒラリーさんの現時点での確保ポイントの差は大幅に縮まることに。
健康問題やトランプ支持者への「哀れ」発言など、ヒラリーさんが予想以上に不甲斐ない一面が現れ、逆にトランプさんが発言や政策を修正し始め、しかも経済政策として雇用創出や減税を唱えた結果(なおできるとは誰も言っていないがそんなことはどうでもいいのです)、ブルーカラー労働者の多い鉄鋼業地域などで特にトランプさんが急速に支持率を伸ばしはじめ、人口動態的にヒラリーさんが勝つと見込まれていた州をも激戦州となっていったのです。
各激戦州の現状は…
FiveThirtyEightというのは本当に偉大なメディアでして(これはまた別稿で書きます)、激戦州のNowを毎日更新してくれているんですね。そして、下記の統計グラフが現在の激戦州の情勢を表しています。棒グラフがながければ長いほど、支持率の変動の可能性があることを意味し、ドットがセンターラインに近ければ近いほど接戦になっていることを表しています。
そして、次のグラフが「どこの激戦州がより重要か」を表したものです。激戦州はどこも大切なのですが、そのなかでも特にTipping-point chance(その州が大統領を決定づける確率)が高い州が左側に、Voter power index(一人の有権者が結果を左右する可能性の高い州)が右側に出ています。
左側をみると、どうやらフロリダ州、ペンシルバニア州、オハイオ州の3つが今回の大統領選挙の勝者を決定づける可能性が高いということがわかります。
右側を見ると、ニューハンプシャー州やネバダ州、コロラド州は有権者の一票に相当な重みがあることがわかります。きっとこのあたりの州は投票率が相当高くなります。(なるほどこうやって可視化することで、局地的に投票率をあげられる方法もあるんだなと大変勉強になりました。)
さて、実は今日あたりからそろそろ連邦議会(上院と下院)についての報道もチラチラ出始めています。11月8日は大統領選挙のみならず、上院の3分の1と下院の選挙があるんですよね。そのあたりも含め、ここ数日はロビーイストや政治学者、州上院議員スタッフにヒアリングをしてきましたので、近日中に内容をシェアしようと思います。
以上、激戦州の楽しみ方についてでした!
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